表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

サンシンとの対面

「え、あれが?」

 シマダは半ば強引に、ジンをサンシンに引き合わせた。

「そうそう。だいたい見た目、人間と同じなんだよ」

 鎖で繋がれていたサンシンは、ジンよりも幼そうなただの少女にしか見えなかった。

 体中の無数のあざと、刃物で切られたような切り傷が痛々しい。生きてるのか死んでるのか分からなかった。

 少女は顔をあげ、二人を睨んだ。ジンは、そんな目を初めて見た。この世の全てを恨んでいるような目だった。


「何してんだ」

振り返ると、タツキについているヒグマだ。

「ああ、ちょっと…見学に」

シマダが誤魔化す。ヒグマは、ちらりとジンを見た。

「見るだけならいいが、余計なことすんじゃねぇぞ」

コトン。ししおどしの音がした。池の鯉が跳ねる。三人は目を合わせたまま。

「ええ、見てるだけです。な、ジン。サンシンなんて滅多に見れるもんじゃないでしょう」

シマダが笑って答えたので、ジンもヘラヘラして頷いた。

「シマダ、出世したいなら、味方につける人間を考えろよ。ヤマダじゃねぇんだから」

「どういう意味です?」

前のめりになったシマダの肩を、ジンが掴んだ。

「いいから」

ジンは、笑顔でシマダを制した。シマダは何か言いかけて、やめた。ヒグマは少し目をそらした。


ヒグマが立ち去って、二人は無言だった。

「そろそろ風呂入って寝るよ」

「あ、ああ。そうだな」

「おやすみ」

 ジンは自覚していた。

 自分が組長の息子として、扱われていない、組員よりも下の存在として扱われていること。

 なにか自分がしでかせば、この生活でさえ壊されてしまうこと。

 ジンは、風呂場の鏡を見た。ヘラヘラと笑っている。いつも通り、愛想のいい美少年がいた。

 少女の、あの瞳を思い出した。真似したかったが、やり方が分からなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ