第2話 少女との接近
小柄なコウモリは少女の自宅に入り込み、生活を観察する事にした。
生活感の無い家の中には、少女が1人しか居なかった、他の家族がいるようには伺えなかった。
少女は灯りをつける事なく、人が横になるまでベッドだと分からないほどにボロボロな有様の所で就寝しようとしていた。
その姿は、第一印象の生きる事に絶望を抱いてる印象を残しつつも、何処となく完全に諦めて無いようにも思えた。
「あと2年耐えれば•••魔法軍人学校に入学できる•••それまで耐える」
少女の印象から発声られたとは思えない、寝言に聞こえる程のか細い声が聞こえた。
数日、彼女の生活を観察して分かった事は、1人で生活をしていて、街の掃除や荷物運びの雑務をして食べ物を手に入れてるようだった。
そして少女の名前はリタというらしい、名前がわかると急に身近な存在に感じてしまう、一方的であり声が届く事は無いが、コウモリの中で数多の人間からリタという特別な存在に変わったのである。
次の日から、コウモリはリタの為に少しでも意識されるようにアピールする事にした。
日が暮れた頃、リタが街のゴミ拾いから帰宅すると、普段なら灯りを付けない家の中が明るく照らされていた。
「なんで明るいの?」
リタは不思議と思い光のする方に目を向けると、発光してるコウモリの姿があった。
「何あれ?コウモリが光ってる?」
コウモリは魔力操作で身につけた、魔力を使って身体を発光させる技術で部屋を照らしていた。
リタは、光るコウモリなんて存在する訳が無いと思いながらも、気だるそうにコウモリに告げた。
「住み着くのは良いけども、寝てる時は光らないでね」
疲れてるのか気になる素振りを少し見せつつも、ベッドに入る。
コウモリはリタがベッドに入ったのを確認すると、発光を止めベッドの近くにある机の上に溜まり共に就寝する。
「おはよう」
リタが声を掛けてきたのである、家の所々から朝日が入りコウモリの姿を観察してる。
コウモリは、翼を広げて全身を見てもらおうとアピールする。
リタはコウモリを触る事はしなかったが、ずっと1人で暮らしてきた家に他の生き物が居るのが新鮮なのか、無表情ながらも受け入れられた様な感じである。
「今後住み着くかわからないけども、コウモリだからコウって呼ぶね」
死にたいと呟いてたリタとは思えない、生き物を大切にしたいと感じる温かい言葉を聞いたコウであった。
この時、産まれてから名前の無かったコウモリに初めて、自分を認めてもらえる為の名を貰った。
コウモリと少女が接近した事で、表現する幅が増えそうです。