第15話 古得の痕跡
リタの笑顔を初めて見たコウは、リタの事を全くわかっていなかった事を理解した、笑えないのではなく笑う必要が無かっただけなのだと、関わりが無く遠くから見てるだけではその一面を見る事が出来なかった現状に。
「リタの笑顔を今後も見ていたい」
「余裕のある生活していたら笑う機会はあると思うよ、1人で生きるのは不安しかないからね」
「これからは安心できる様に頑張るよ」
「無茶の無い様に頑張りましょ」
今できる事はリタの生活に余裕を作る事だとわかったコウは、リタの為に自分の力を全力で使おうと決めた。
「コウは明日の技能審査為に疲れを残さない様にしないとだし、身体を洗って帰りましょうか」
「何をするか聞いてなかったから、気を引き締めて行かないとだな、身体の汚れを全部落とす」
「お風呂の使用は無料だから気楽に入れるからね」
食事を終わらせてて軽く会話をした2人は、入浴場に向かう、男女が分かれていてここでリタと別行動する。
「私時間掛かるから、終わった後は入り口で待っててね」
「わかった、初めてだからこちらも時間掛かると思うけど、ゆっくりする事にする」
入浴場に入るとすぐにタオルや石鹸などの貸し出し場があった、入浴時に持って行くと説明が書かれていて親切でわかりやすかった。
コウは脱衣所で服を脱ぎ身体を洗う、壁には綺麗に洗う方法が記載されていたので、説明を読みながら洗い進める。
「初めて使用する人にも親切だな」
親切さについ独り言が溢れる、洗い終わり湯船に向かうとまたしても壁に何か書かれていた。
湯船から見えるその説明は、お風呂が作られた経緯だった、そこには遥か昔この国を作った1人の男の話が書かれていた、コウはその内容を読んでるとそれが古得の事だとわかった、ユウの作りたかった世界の痕跡が長年残っていた。
古得が作った世界が現在戦争を頻繁にしてる事は、古得の理想の世界の結果では無いのだろう、神の友達で代理である古得がこの世界を、どの様にしたかったのかを知らなければならないと感じた、古得を吸収してしまった者としてそれがこの世界を良くするものなら、リタの為にも引き継がなければならないと。
コウは今後の事を考えさせられた後に風呂から出る、入り口にはまだリタの姿は無かったので近くにあった椅子に座る事にした。
「コウくんじゃない、リタちゃん待ってるのかな?」
リタを待っているとキーリスが話しかけて来た、キールスは先程までの仕事用のしっかりした服装では無く、真っ白なワンピース姿だった。
「風呂から出てくるの待ってます」
「女の子はお風呂長いからね」
気さくに話かけてくれるキーリスは笑顔で隣に座ると話を続ける。
「明日技能審査だけども、討伐許可が出たとしてもリタちゃんを悲しませない様にね」
「その件に関しては問題ない」
討伐依頼がどれほど危険なのかはわからない状況だが、コウは絶対的な自信がある為不安になる事は何一つとして無かった。
「コウお待たせ、キールスさんもお疲れ様です」
「リタちゃん今日もお疲れ様、コウくんとの親睦を深めようとここ見てたらけども、1日ではまだ何もわからないわね」
そう言うとキールスは入浴場に入って行った。
「お待たせ、帰りましょうか」
「帰ろう」
コウは風呂上がりのリタから落ち着く香りに気がつき、普段よりも目を奪われた。
2人がギルド館から外に出ると、風呂上がりというのもあって少し肌寒さを感じた。