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あなたの側で人となる  作者: 野鳩
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第14話 黒い瞳の笑顔

 リタと共にギルド館に向かう。

 「学校広かった」

 「国が1番力を入れてる施設だから、中も凄いらしいよ」

 「国を守る為にそれだけ必死って事か」

 「軍人も戦争の度に減ってしまうから•••」

 リタの言葉の最後が少し小声になり、少し俯く。

 「大切な人だけでも守れる強さを身につけないとだな」

 コウの言葉にリタは小さく頷くとギルド館に着くまで会話は無かった。


 空が茜色に染まる頃、2人はギルド館に到着しリタはいつも通りしっかり前を見ていた。


 「受付に完了報告してご飯食べましょう」

 「この依頼で報酬どのくらい貰えるんだ、確認しないで働いてた」

 「この依頼の報酬は銀貨3枚よ」

 「物の価値は早めに把握しないとだなぁ」

 「使ってるうちに覚えるから大丈夫よ」


 話していると受付に到着し、受付にはキールスが待機していた。

 「お帰りなさい、依頼は無事に終わった?」

 「無事に終わりました、こちら完了証明です」

 リタがキールスに完了証明を渡すとキールスが笑顔で「お疲れ様」と一言添えた。

 「そうそう、コウくん技能審査の件だけどね、ギルドマスターから許可が出たから明日予定がない時おいで」

 「ありがとう、また明日伺います」

 「そしてこれが今回の報酬ね」

 リタが報酬を受け取り、コウの方を向く。

 「報酬の半分はコウのだけど、使い方分からなかったら管理しておこうか?」

 「お願いするよ、お金なくても生きていけるからリタが管理してくれ」

 「必要になったら言ってね」

 そう言うとリタは銀貨を布の様な物に銀貨を仕まう。

 「ご飯食べようか」

 「そうだなご飯楽しみだ」

 ギルド館の奥にある大きな扉に向かってリタが向かうのでコウもついて行く。

 「ギルド館の隣に食堂と入浴場もあるから移動が少なくて便利でしょ」

 「迷子にならなくて済むから助かる」

 食堂にはまだ食事時には早いのか、食事をしてる人は3人しか居なかった。

 空いてる席に向かい合って座ると、定員さんがやってきた。


 「ご注文はどうされますか?」

 そう2人に伺うとリタが定員さんに向かって慣れた様に返事をする。

 「肉サンドセット2個お願いします」

 注文をすると定員さんは元気良く返事をしてその場を去る。

 「今日はいつもより贅沢してコウのお祝いよ」

 「ありがとう、これからリタの迷惑にならない様に頑張るよ」

 「技能審査をするって事は、討伐などの依頼を受けるつもりなの?」

 「そのつもりだ、魔法も使えるしそっちの方が稼げると思って」

 「無茶しない程度にしてね」

 「無理はしないし問題ない」

 「お待たせしましたー」

 定員さん元気良く机の横に立ち、料理を前に置く。


 「ありがとうございます、お会計を」

 リタは料理が運ばれるタイミングで銀貨を1枚渡す。

 「はーい、2人分丁度頂戴しましたー」

 そう言うと定員さんは厨房に向かって行く。

 「ではいただきましょう」

 リタは両手を合わせて「いただきます」と呟く姿を見て、コウも真似して「いただきます」と呟き料理に手を伸ばす。

 料理は、細長いパンを横に切りその間に肉と野菜を挟んだ物と野菜の入ったスープと水。

 コウは調理された食事をするのは初めてだ、生肉から果物まで色んなものを食べて生活していたから、人間の食事を目の前にして緊張していた。

 コウモリの姿をしてる時は、ギルド館の外でリタが出るのを待っていた為中で何をしてるかは確認できなかったのだ。

 緊張しながらもコウは肉サンドを両手で掴み、大きく口を開け一口かぶりつく。

 「美味しい•••」

 コウは今まで感じた事のない衝撃に襲われた、長年生きる為だけに空腹を満たし味などどうでも良かったからだ、街中の出店なので調理された食べ物は見た事があるが、遠くから眺めるだけだった。

 「美味しいものを食べる為に頑張れそうだ」

 「気に入ってくれたようね」

 「食べる喜びを初めて感じたよ」

 「これから色んなもの食べましょうね」

 コウは肉サンドを食べながら、リタに返事をする為リタの顔を見ると、普段大きな黒い瞳は瞬きする時以外は、形を変える事のないと思っていたが、その時のリタは黒い瞳を細めて口角を上、見惚れる様な可愛い笑顔がそこにはあった。

 リタの笑顔を見たコウは全ての動きを止めリタから目を離す事が出来なかった。


 「コウどうしたの?」

 「あっいやっリタの笑顔が•••」

 コウはまさかの笑顔で最後まで言葉が出なかった。

 「笑顔?私笑ってた?」

 リタがそう言うといつも通りの無表情に戻った。

 「私久々に笑えてたのね、コウのおかげだね」


 リタはそのまま食事を続け、コウは高鳴る鼓動を感じながら肉サンドを食べる。

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