第13話 掃除開始
コウ達が鎧姿の役人に近寄ると、兜の隙間から覗く鋭い眼光がコウ達を睨み付ける。
「こちらギルドから渡された受諾書です、掃除の依頼で来ました」
リタがそのように役人に伝えると。
「おお、掃除の依頼で来てくれたのかぁ助かるよ」
役人は第一印象とは全く異なる明るさで受諾書を受け取ると。
「君達が来てくれなかったら、休みの日に掃除させられる所だったよ、ありがとうな」
兜で表情まではわからないが、声でその喜びは伝わった。
「喜んでもらえてよかったで」
リタは礼儀正しくお辞儀をし、周りを見渡した後に役人に問いかける。
「どこの掃除すればいいのでしょうか?」
「掃除してもらうのはこの学校の周囲だな」
「学校の周囲ですか?」
「そうなんだ、学校には荷馬車などが毎日出入りするから、木箱の破片などが良くこぼれ落ちるんだ、入学してくる子供たちに気持ちよく来てもらうため掃除してほしいんだよ」
「わかりました・・・範囲も広いのですぐに始めます」
壮大な敷地の周囲を掃除と聞くとリタはすぐにでも掃除を開始しようとする。
「ごみはこの布袋にまもめてくれればいいから」
役人は10枚の布袋を持ってきた。
「10枚が無くなるか一周掃除し終わるかで良いのでお願いする」
「わかりました」
リタが袋を受け取り、コウに半分の5枚を手渡すと。
「私はこっちからゴミを拾っていくので、コウは反対側からお願いね」
「わかった」
コウが袋を受け取るとリタは周りを確認しながら歩いて行った。
コウも同じように周りを見ながらゴミを探し始める
「どれだけでかいんだこの学校は・・・」
コウは学校の敷地の広さに驚きながらも道に転がってる物を拾い進んだ。
大きな木箱の破片も何個か見つかり、思ってたよりも早く一つ目の袋がいっぱいになった、袋は紐を引っ張れば入口が閉まるようになっているので、中身が落ちないように入口を締めて先を進む。
コウは半周する前に5枚の袋にゴミを詰め終わり、反対方向からゴミを拾ってるリタに会うため袋を両手に持ちながら歩く。
長らく歩くと遠くの方でリタが袋を縛ってる姿が見え駆け寄る。
「リタも5枚の袋すべていっぱいになったんだ」
「思ってた以上に木箱の破片が落ちてたから、半周する前にいっぱいになっちゃった」
「まぁこれで依頼は達成したし、門の所まで戻ろうか」
「そうね、時間も結構掛かったし戻りましょうか」
二人は両手に袋を持ち、学校の塀沿いを歩いて門の所まで戻る。
リタがゴミ拾いし綺麗になった道を歩くとリタの仕事の丁寧さが分かり、リタの人間性が感じられた。
役人が二人の姿を確認すると、右手を大きく振って出迎えてくれた。
「お疲れさま、袋を使い切るほど掃除してくれたんだね、ありがとう」
役人は優しい声でお礼を言う。
「半周する前にいっぱいになってしまいました、すみません」
「問題ないさ、学校の裏なんて誰も見ないと思うからね」
役人がそう告げると、リタの手からゴミが詰まった袋を取り門の横に置く。
「袋はここにおいてくれたら良いから、依頼完了証明持ってくるからそこで待っててくれ」
そう言うと門の横にある小さな扉を開け中に入る、一瞬開いた扉から中は休憩所の様に見えた。
「無事に初仕事が終わった、すべてのゴミを拾う事は出来なかったけど依頼内容は達成だ」
「家に着く頃には疲労感が出てくると思うから、ギルドに戻ったらご飯食べてお風呂に入りましょうか」
「お風呂?お風呂とはなんだ?」
「お風呂は身体の汚れを洗う所よ」
「リタは毎日洗ってるのか?」
「毎日洗ってるよ、毎日洗わない人も居るけども臭いが気になるので、ギルドで依頼完了報告の後にギルド館内のお風呂に入るようにしてるは」
「ギルド館にそんな所があるのか」
そのような話しをしてると、扉が開き役人が歩いてきた。
「ご苦労さん、これが依頼完了証明だ」
「ありがとうございます」
役人から依頼完了証明を受け取ると、リタはお辞儀をしながらお礼を告げる。
「気を付けて帰るんだぞ」
役人はギルドに帰ろうとする二人にそのように告げ見送った。