第11話 初めての依頼
長年遠くから眺めていた人々の生活風景に、自分が入り込んでる現実に不安な気持ちを抱えながらも、目を輝かせるコウはリタの横を歩く。
「お金の稼ぎ方は分かったけど、どの様な手順を踏めば良いんだ?」
「仕事はギルドで依頼されてる物から選んで、依頼内容通りに事を進める感じだね、私のしてる手伝いは民間依頼で、自分でするのが面倒くさい事をお金を払って済ませる依頼」
「仕事はギルドで探すって事か•••」
「ギルドは広いので、どのような依頼にするかを決めてから行かないと見つからないからね」
「ギルドに着くまでに考えとくよ」
リタがこれほど喋るとは想像していなかったコウは、言葉が通じる喜びを噛み締めたがある程度の知識が無いと会話を膨らませるのが困難だと感じ、寝る前に古得から知識を得ようと決めた。
「ここがギルドだよ」
リタは大きく立派な建物の前で止まり、右手を建物の方向な向ける、その建物は同じ大きさの石が綺麗に積み重なって建てられた様に見える物だった、どの様な技術で建てられたかは今のコウには理解できなかったが、街中の建物の中でも立派な部類に属してる事はわかった。
「大きくて立派な建物だなぁ、そこまで遠く無いので気楽にこれそうだ」
「そうね、色々な施設も増築されてるので、ここで生活してる人も居るくらいだからね」
「見学だけでも楽しめそうだ」
些細な感想を告げながら大きな扉を押して中に入る、そこには大勢の人が各々の目的の為に集まっていた。
「コウはどんな依頼をするか決めたの?」
「初日なので、リタと同じ依頼を受けようかと」
「それなら2人でできる依頼探そうか」
リタは慣れた足取りで民間依頼受付に向かったが、他の受付には人が並んでるの中民間受付には1人も人が並んで居なかった。
「ここに人が並んで居ないのはなぜ?」
「依頼の報酬も少なく、お金で他人に任せる様な内容だからね、子供くらいしかやらないのよ」
「人が居ないなら色んな依頼を見て選べるね」
その様な会話をしていたら、受付の奥から栗色の長い髪の毛を後ろで束ねた綺麗な女性が歩いてコウ達の所にやってきた。
「リタちゃんおはよう」
「キールスさんおはようございます」
受付の女性はキールスというらしい、依頼を受ける人が少ないからなのかリタの名前を覚えて居た。
「リタちゃん、そちらの男の子は?」
キールスさんの問いかけに、リタとコウの関係をどの様に説明するかを考えてなかったリタは無表情のまま返事をする気配が無かった。
「私はコウと言います、リタの家に住み着いてます」
リタが困ってる様なので、咄嗟にコウが返事をするとキールスは困惑した表情をしていた。
「住み着く?」
全く状況のわからない返答にキールスは、コウの発言の意味を探ろうとする。
「コウの両親は戦争に巻き込まれて亡くなったらしく、困ってたの一緒に住む事にしたの」
リタがその場凌ぎの返答をして、会話がこれ以上複雑にならない様に発言をした。
「まぁリタちゃんはしっかりしてるし、困ってないなら大丈夫よね」
「何かあれば相談させて貰いますね」
日頃から真面目に依頼をしている姿を知っているからだろうか、キールスはリタを信用してる様に伺えた。
「コウはギルドに来るの初めてなので、ギルドの登録をお願いします」
「はーい、ちょっと待ってねー」
リタがキールスに登録の話をすると、親しい間柄の様な返事をして微笑み、後ろの棚から書類を取り出す。
「こちらの項目通りに書いてね、まだ12歳にはなってない様なので、技能の項目は書かなくても良いからね」
「技能の項目を書かない事で何か不都合があるのか?」
「技能項目は、討伐依頼などの命の危険がある依頼を受ける際に基準とする項目よ、ギルドでも技能審査は出来るけども、基本は魔法軍人学校で測った技能を記載するので12歳以下は書かなくても大丈夫なの、12歳以下で討伐依頼受ける子も居ないからね」
コウは、キールスの説明でこのままでは討伐依頼を受ける事が出来ない事を知る、討伐依頼をお金を稼ぎリタとの時間を作ろうとしたコウは一瞬残念そうな表情を浮かべるが、ギルドでも技能審査できるとの発言でここで審査してもらおうと考える。
「でしたら•••ここで技能審査してください」
「えっ?」
キールスは予想外の返事に驚き言葉が溢れる。
「討伐の依頼を受けたい?」
「受けたいです」
「12歳以下で審査を受ける子なんて初めてだから、ギルドマスターに相談しとくね•••まぁ取り敢えず技能項目以外の所を書いて今日は他の依頼受けたら?リタちゃんも待ってる事だし」
コウは隣に居たリタの顔を見て「今日は他の依頼を受けることにする」と答える。
書類には、名前・年齢・技能項目しか書くところは無いので、コウ11歳と記載する。
「書けた」
キールスに書類を返すとキールスが受け取る。
「ではギルドカードを作るので、その間に受ける依頼を探してね」
そういうと、キールスが依頼書の束をコウ達の前に置いて受付の奥に入って行った。
「では探しましょうか」
リタが依頼書の束に手をつけてて、2人で出来そうな依頼を探す。
依頼書の上から順番に目を通していると、リタの手が止まり1枚の依頼書を手に取る。
「これが良いかな」
手に取った依頼書をコウに見せる。
「これは民間の依頼?」
「民間依頼の中には、たまにだけど国からの雑用依頼もくるのよ、人件費を安く済ませる為にね」
「そんな事もあるんだ」
「比較的に報酬も高いので、民間依頼の中では当たりの依頼よ」
「では、これを受けよう」
コウ達が依頼を決めた頃に、キールスが戻ってきた。
「依頼が決まったみたいね、コウくんこれがギルドカードよ」
「ありがとう」
キールスから渡されたギルドカードを眺める、そこには本を開いた様な刻印が刻まれその上から名前をが記載されていた。
「軽く説明するね、ギルドカードはこの国の身分証も兼ねてるから大切にしてね、カードに刻印がされてるマークがこの国ウィズダムのシンボルマークね、技能項目を記載して申請したカードとしてないカードでは、少し違うけども審査するまではそれで我慢してね」
「綺麗な刻印だ、大切にする」
「では、受ける依頼書はどれかなぁー」
キールスに受けたい依頼書を渡す。
「魔法軍人学校からの依頼ね、来年入学するし見学も兼ねるのも良いかもね、依頼内容も優しい内容だし大丈夫そうだし」
そう言うと、キールスは手続きを始める。
「では、この受諾書を魔法軍人学校の門前の役人に渡してね、依頼内容は門の掃除なのでそのまま役人さんにやり方教われば大丈夫よ」
「ありがとうございます、では早速行ってきます」
リタが受諾書を受け取り、受付を後にする。