第10話 リタとコウの朝
コウが寝ていると、腹部に重い衝撃を感じ思わず「グホッ」と声が噴き出る。
「あら•••ごめんなさい」
痛みを感じて目を覚ましたコウの視線には、ベッドから立とうとしているリタの姿があった。
寝る前に突然人の姿になったコウが、リタの生活空間居る事に慣れてない為、確認する事なくベッドから降りたから仕方ない事だ。
「リタおはよう、コウモリの姿だと絨毯になる所だったよ」と挨拶で会話を終わらさない為に、咄嗟に言葉を返す。
「夢かと思ったのだけど、コウが人の姿をしてるのは違和感ね」
コウを踏んだ足を引き、再度ベッドを上に戻ってリタはコウを見下ろしながら呟く。
「まだ自分でも慣れてないからなぁ、人と会話してる事も不思議な感じだ」
「コウモリが人間になる方法は後ほど説明して貰いますね」
リタがそう言うと、コウを跨いでベッドから離れ手伝いの準備を始める。
コウも床から立ち上がり、リタに人として生きる手段を教わる為、リタの後をついていく。
「リタ、人として生きるに必要な事を教えて欲しいけど、最初は何をしたらいいのかな?」
「私の生活が人間らしい生活と言えるかは疑問だけども、1日の食べ物代を稼いで食べて寝るしかしてないもの」
「それなら、取り敢えずその食べ物代を稼ぐ方法を教えて貰いたいけど、いきなりでも大丈夫なものなのかな?」
コウは、リタがどの様に稼いでるかも日頃から観察してた為、知ってはいたがシステムまではわからないし何も知らない立場の方が、会話の回数も増えると考え無知な振る舞いをする。
「稼ぐ為には何個かの方法があるのだけども、私は街中の雑務手伝ってお金を貰うやり方をしてるは、私はやった事ないけども賞金首を捕まえたり、魔物討伐売却など力に自信のある人がやる方法があるね」
リタはまだ子供で力を振るう方法を避け、安全な方法で稼いでいた。
「賞金首や魔物討伐は、危険な分お金は多く貰えるのかな?」
「そうね、私のしてる雑務は1日を生きるのに必要な程度しか稼げないけども、依頼次第で一年は食べるに困らない程稼げたりするよ」
コウは実戦した事はないが、【種族統合】で手に入れた力を使えば容易いだろう、リタとの時間を増やす為にコウが稼ごうと考える。
「今日を生きる為に稼ぎに行きましょう」
家から出るついでに発せられた言葉は、背を向け表情を伺う事が出来なかったが、いつも抑揚の無い話し方をするリタだったがその言葉に関しては、声の質が高く感じた。