第70話:酒場探○記
第70話になります!
今回もよろしくお願いしますm(_ _)m
先に魔導王と話をつけに行った後で、ガブリエラやレオーネ、そして魔導王の側近達や各種族の長達を交えての晩餐会が開かれた。
もちろん精霊達にはレオーネについての一切の事情は秘密にする事も通達済み。バレたら面白…ゲフン、彼奴の沽券にかかわるしな!
私も荷物から姐さんがねじ込んだドレスを引っ張り出し、あり得ない速度で着替えたよ。アヴァロン風デザインのドレスはコルセット一体型なので着用が楽で助かるが…令嬢、いや、貴族って大変。上位貴族で一日に最低五回は着替えるって何なん?
そして何とか間に合った晩餐会で、私達はそれぞれ魔導王陛下直々に紹介され、挨拶を交わしてから乾杯する。
魔導国の晩餐会はあっちの歴史学で学んだ、これぞ中世ヨーロッパ!な正当の晩餐会スタイルだった。
要するに、テーブルのど真ん中に料理が並び、各自取り分けて食べるスタイルね。食器こそ陶磁器だったけど、固い黒パンやライ麦っぽいパンを皿替わりに置いてあったり、フィンガーボウルがあるのをみてもそうなんじゃないかな~と。
実は憧れだったので、私めっちゃワクテカしてる。流石にこのスタイルはあっちの世界じゃ出来無いしレストランにも無いからね!
ガブリエラやレオーネはかなり驚いていたけれど、小声で指示すると私に倣い、食べ始める。
「星、この食事スタイルにすごく馴染んでいるけれど、食べた事があるの?」
ガブリエラがひそひそと聞いてくる。
「アヴァロンに来るのは初めてだから、アルラも知らなかったみたい。この食事スタイルは今から三〜四百年前の正当な晩餐かなぁ?姐さんも特に言ってなかったけど…」
「けど?」
「これがこの国の食事スタイルなら踏襲すんのが正式だね。『郷に入っては郷に従え』って諺が私の国にはあるんだけども、世界の風習を識る第一歩だよ?」
「!そうね、今私達は誰も来たことの無いアヴァロンにいるのだもの、馴染まないのは勿体無いわよね!」
何かに気付いたガブリエラは見様見真似ながら食事を楽しむ方向にシフトし、会話を聞いていたレオーネもモリモリと食べ進めている。騎士科は野営もするから、こんなんでまごついてたらやってけないわな。
今回は高級食材?のワイバーンのローストがメインなので、もの凄い勢いで消費されていく。流石にオーガやドワーフ、意外なところでは吸血鬼族などは大食漢らしく、塊で取り分けて食ってるし。
あぁ〜、ワイバーンの肉マジ美味い!!
焼く前の肉を見たかったけど、赤身っぽい肉は生だとかなり細かくサシが入ってるんじゃなかろうか。熟成とかどうしてるんだろ?味は和牛にこれまた特上豚が混じったような味で「肉食ってるぜー!」と五感で感じる事が出来る。それに加えて赤ワイン!いやマジで最高!!ハーブの使い方も絶妙過ぎて一緒にグリルされた野菜も、ワイバーンの脂が更に味に旨味を加えるから食欲増進が止まらん。
「アルラ、ワイバーンの肉はどうだい?」
ふと、魔導王に話を振られたので「味わい深いお肉ですね。狩ってきて良かったですわ、大叔父様」とにっこり笑って返事をするとドワーフの長がビックリしてこちらを向いた。
「は…?あの、陛下の姪子様が…狩った、の、で?」
「そうだよ?中々お転婆でね、こちらへ来る途中で力試しに狩ったそうだよ、ね?アルラ」
「はい、友人達と一緒に初めて討伐いたしましたが、楽しかったですわ♪魔法や魔術には敵いませんが、力技でも何とか手数で押せるものなのですね」
そう言って私は微笑を浮かべる。
その言葉に嘘偽りは無く、精霊達に話を聞ける族長などは椅子からひっくり返ったり、肉を喉に詰まらせたり、ワインを噴き出したり爆笑したりとリアクションが様々だ。
いや、ド○フのコントかよ(笑)
こっちゃあブロディのように、あっちのプロレスの神様の力?チート?でごん太のチェーンをぶん回してシバき倒してただけだしな。
とりあえず約150キロのチェーンでシバき倒せる相手で良かったとしか。
まぁ、そんなん振り回してワイバーン狩るとかワイバーンを知る者からしたら想像だに出来んし、完全なる想定外だろう。
こちとら武器が無いからねっ!?
何処の喧嘩バ○一代だ。
ヤンキーですら特殊警棒や鉄パイプ、メリケンサック…はどうだか知らんが得物使うしな。バス停やビールケースはアレだけど。
そういや昔はカミソリや自転車のチェーンが主流だったわネー。
とりあえず最低でもモン○ンでクック先生を倒せるくらいの武器防具は欲しい。
実はどんな武器にするか考えあぐねているって言うのが理由なんだけどもさ。
そんな事を考えながらも上品に肉を頬張り、ワインを飲んで胃の腑へと流し込んでいると魔導王がドワーフ族の族長に私達の武器防具を、獣人族の族長には別な依頼をしていた。早っ!
晩餐会も恙無く終了し、さて解散というあたりで私は「皆様にお土産がありますので受け取って下さいまし♪」と呼び止め、姐さんから持たされた収納ポーチから金属製の酒樽をどんどん取り出し、一種族に三樽ずつ配る。
伯爵家で作ってきた黒ビールとラガー、シードルである。
木の酒樽でも良かったんだけど炭酸で栓が抜けそうだったし、何しろ衛生的な問題があったのでアルミに近い謎金属を加工して作ってみたのだ。
アルミなら陽極電化処理でアルマイトをコーティング出来るのだが、流石に鉱物組成が不明だったのでなぁ。
「こちら、私が作りました黒ビールとラガー、そしてシードル…林檎のシードルになります。
こちらの蛇口を捻りますと中身が出てきますのでグラスかジョッキに注いでお召し上がりください。あ、冷やすと更に美味しくなりますよ♪」
魔導王と各種族長はポカーンとしているが、いの一番にドワーフ族の族長が再起動し、ニッコニコしながら礼を言われ早速収納して去っていった。
おう、流石ドワーフ。酒好きはブレねぇんだな。
それから他の種族長達も次々礼を言い、収納し去っていく。
「…アルラ、いや星、君は何でこんな事をしているのかな?」
まだ若干呆けた魔導王が疑問を投げかけてくる。
「私の世界では初対面であっても、世話になるのが分かっていたらお持たせや手土産は必須ですので…すみません、そこは私の常識を持ち出してしまいました」
ぺこりと頭を下げると魔導王はふうっと息を吐き出しながら「まぁ仕方ないか。こちらには無い習慣だけども、皆喜んでいたし問題は無いよ?」と頭を撫でながら容認してくれた。
こっちにはそういう文化ってか習慣は無いのか~。日本だけの習慣なんだろうか?と考えていると「星」と名前を呼ばれた。
「さっきの黒ビール?ラガー?だっけ?私には無いのかな?」
おねだりされました…。
や、やだなぁ、勿論ありますよ?!
追加で酒樽を出すとルドルフさんがそれを冷やし、私が持ち込んだガラスのジョッキに注いで魔導王に給仕し、私とガブリエラ、レオーネは自作のサングリアとアテを用意し、改めて今後の方針を話し合うのだった。
歴史を専攻していた時に思ったんですが、食文化は欠かせない項目ですよね~(^_^;)
あれも一種の飯テロだと思います!!
例えば天皇家や皇族は明治になるまで肉食しなかったとか、花魁は体臭に反映されるような匂いの強いモノは食べなかったとか、戦国時代の武士は肉食していたので当時の人々より体格も身長も大きかったとか知るだけでワクワクしませんか?
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今回もお読みくださいましてありがとうございましたm(_ _)m
 




