第7話:囲み取材と言う名の事情聴取その1
第7話になります。
よろしくお願い致しますm(_ _)m
そして、乳ビンタという言葉があるように、乳は凶器になると思います…( •̀ㅁ•́;)
私達3人が広間から出ると、大扉はまた静かに閉じられ、辺りは静寂と大扉を隔て音量が緩和された騒ぎ声が少し聞こえるだけになっていた。
馬車乗り場まで続く、庭園に挟まれた渡り廊下は今咲きの白薔薇とマグノリア、クチナシやその他の花の香りで爽やかながらも甘い香りに満ちている。
さっきまでの荒ぶる気持ちが、花々の香りで更に癒やされていた私に、レオーネさんが耳触りの良いアルトボイスで話かけてきた。
「アルラ様、つかぬことをお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
あー、うん。
多分そんな感じはしてました。
たんまりありそうですよねー!
逃げ出した猫をとっ捕まえ、再び被り直して、と。
「はい、何でしょう?レオーネ様。」
「その…アルラ様は大人しい方だと思っていましたが、ガブリエラ様をお救いする為とは言え、このような実力行使に出るとは、と些か思う所がありまして…」
まさかのそっちか!
斜め上からの切り口にビックリしたよ、レオーネさん!
てっきりプロレス技やその他を聞かれるかと思って、クッソ構えてたわ。
まぁ確かに、アルラは学園でもめっちゃ大人しいほぼボッチだったから当然の疑問っちゃ疑問だわな。
私でも驚くもの。
よく『大人しい人がキレたら怖い』って言うけど、アルラの場合は大人しいだけでなくて臆病もプラスされてるから、キレるってのはもうホント生きるか死ぬかくらいの瀬戸際にならないと出ない。いや、もしかしたら死んでも出ない気がする。
しかし、何の因果か中身が某世紀末覇者系メスゴリラやら鬼神などと言われた私にひょっこり入れ替わってしまったから、周りからすれば大混乱だわな〜。
麦茶だと思って飲んだら、蕎麦つゆだった的なアレよね。うん。
私は久し振りにハイスペックな身体で大暴れ…ゲフンゴフン、アルラの願いを汲んでガブリエラを助けられたから良かったけども。
うぅ〜む。先ずは、当たり障りのない答えから言ってみるか。
「仰る通り、学園でも引っ込み思案で一人でいた私をガブリエラ様が気にかけていただき、恐れ多くも友人になって下さいました…あのように理不尽な振る舞いをされ、黙って見過ごしていたら…私は…自分を許せなかったでしょう。」
半分程目を伏せ、少し俯きながらアルラの臆病さを演出してみる。
「アルラ…」
お姫様抱っこされているガブリエラが、まだちょっと泣きそうな顔で私を見ながら手を伸ばしてきたので、私はその手をそっ、と取りつつ
「望む、解決では無かったかも知れませんが…今は、こうして無事な事を喜びましょう?」
ガブリエラと視線を合わせながら二人、微笑む。
あー、マジ女神!
公爵家のDNAにバンザイ!!
…レオーネさん、何でうっすら耳赤いんすか?
女神をお姫様抱っことか、心底代わってほしい…身長差、ガッデム!
カツコツと歩くヒールの靴音が、花々に囲まれた渡り廊下に響く。
話は戻るが、発端と動機はマジ本当の事だからね?
アルラの願いが無ければ、私は出てこなかった訳だし、アルラがどれだけガブリエラに感謝していたか。
下手したら崇拝に近い思いを持ってたよ、この子。
暫しの沈黙の後でレオーネさんはまた問うてくる。
「然様でしたか。しかし、あの豹変ぶりは只事で無いと思ったもので…。か弱く、可憐なアルラ様が、まるで歴戦の猛者、強者の雰囲気を漂わせておられた。あれは」
やべっ。
これ、何か気付いてるよな、絶対。
儚げ演技に騙されちゃくれなかったかー。
アルラへの表現に喜んでる場合じゃない!!
余計なツッコミ食らう前に、食い気味に答える。
「レオーネ様…人には我慢の限界点、というものがございます。私はその限界点を突破してキレ散らかした。どうしても許せなかった。
そして元凶を蹴散らす力を私が持っていた、それだけですよ?」
困ったように微笑み、これ以上喋んなよ?と言うニュアンスを含ませるも納得してくれなかったのか、レオーネさんが再度口を開こうとしたその時。
……カツカツ
…カツカツカツ!
「おぉーい!待てぇぇ、待つんだぁぁぁ!!」
「アリィィィィィ!」
んん~?何だぁ??
胡乱げに後ろを振り返ると…
げえっ!!
アルラのご家族ご一行様?!
白目剥いて泡吹いてた親父さん、再起動したんか?
っつーか、足早っ!!
お母上も遅れずについてきてるし!
お貴族様、淑女って優雅に歩くもんじゃなかったっけ?!
これ…下手に逃げたら問答無用に捕縛されるやつだ…(汗)
そうだわ…アルラってば、家族や使用人、領民に至るまでめっちゃ愛されてんだよなぁ。
そりゃ愛娘を放ったらかしておくわけ無いもんねー!!すっかりすっぽり失念してたわ、ガッデム!
若干、顔を引き攣らせつつどうしたもんかと悩んだ私に
「アリィィィ!この子は本当に…心配したのよっ!!」
ドムッ!!
お母上の強烈な乳圧と抱擁に、背骨がミシミシと悲鳴を上げ、頸椎がグキッ!とヤバい音を響かせる。「ぐふぅ!」と身体から変な声出たわ。
皆、乳は凶器になるぞ…ゲフッ!
いや、お母上よ………貴女、強くね?!アルラの記憶には無かったよ、そんな情報!!
更に追いついたアルラの家族達の突進と、圧の強い抱擁を受け、耐えられずに遂に地面にべちゃりと倒れた私。
いや、とりあえず謝るから退いて下さい。素のアルラはか弱いのだよ。
何かに似てるよ、このシチュエーション…。
あ、あれだ!
実家の大型犬数匹に、よって集ってもみくちゃにされて顔面ベロっベロに舐められて何でか起き上がれなくなるやつ!
何とか起き上がり、体勢を立て直すも家族からの事情聴取と言う名の囲み取材が始まってしまった。
ぬぅおぉぉぉ〜!!それ、今ここでやる事とちゃいますよ?!
囲み取材より、トンズラが先!オーケー?
事件現場に長居したら、更なる厄介事が起こるってお約束なんだよぉぉぉぉ!
ちょ、アルラのご家族ご一行様よ、ガブリエラとレオーネさんの表情見て?
呆気に取られてるから。この場だけは空気読もう?な?
苦悶の表情を浮かべた私の耳に、別の、これまた複数の靴音が聞こえてきた。
「取り込み中、すまない。
少しよろしいか、アンブロジア伯爵?」
そう声をかけてきたイケオジ…いや、グッドルッキングガイ?は、もしかして…
「あぁ、名乗るのが遅れたね。
私はハリー・メーソン・カンバネリス公爵だ。
アンブロジア伯爵、昨年の狩猟会以来だな?」
やっぱガブリエラのお父様ー!!
若っ!いや、渋っ!
イケてる要素達が奇跡のフュージョンしてるわぁぁ!流石ガブリエラのお父様。納得の遺伝子です。ありがとうございます!
明らかに取り乱していた伯爵は咄嗟に取り繕いながら
「失礼いたしました、カンバネリス公爵。
暫く振りの再会で、このような醜態をお見せしてしまい、申し訳ございません。」
筆頭公爵家当主へ簡略な礼をしながら伯爵が挨拶をする。
家族バカの親父さんだけど、貴族らしいそのリカバリーっぷりに感心するわ。
公爵様は伯爵の肩に手を置くと
「この場で礼は不要だ、アンブロジア伯爵。寧ろ_____
礼を言わねばならないのは私の方だ。」
そう言ってから私の方を向き、自らの左手を腹部に当て、右手を背中側へ回すと礼の姿勢をとり
「アルラ・エールー嬢、我が娘ガブリエラを救っていただき、感謝申し上げる。
あの、公開処刑とも言える状況で、君がただ一人、娘を救ってくれた。
殿下達に申し開きも出来ない罪状を付け加えて、ね?」
おおぅ、イケオジは声もイケてんのかよ。
耳だけじゃなく、脳みそにも心地良いのが堪らん…。
犬軍団は煽り耐性無かったし、殆ど自爆に近いから結果的にああなっただけなんですよ、公爵様。
狙ってやらかしたのもあるけどさ。
「いいえ、公爵様…私の方が、ガブリエラ様には大変な恩義がございます。此度は…その一部に報いただけ。
そして、こちらにいるレオーネ様がいらっしゃらなければ、望む終わり方にはなりませんでした。」
と言いながら私はレオーネさんを仰ぎ見る。
ここまで割り込んできたからには、最後まで祭りに付き合ってもらおうじゃねぇの。
逃さねぇからな?
公爵様はレオーネさんを見て暫し黙考していたが思い当たる事があったらしく
「其方は…確かアグノエル帝国の。」
「お初にお目にかかります。
アグノエル帝国からの留学生にございます、コルネイユ伯爵家がニ女、レオーネ・コルネイユと申します。
事情がございまして、大切なご息女を抱えたままにございますが、公爵閣下には何卒ご容赦を。」
レオーネさんは公爵様に足だけカーテシーを取りながら挨拶を。
腰が抜けたガブリエラを抱えたままだから仕方無いとは言え…スゲェ体幹と筋力だな?!
身体強化無しでそれかよ!
公爵閣下に伯爵、私、レオーネさんと其々に思う所はあるだろうけど、そろそろ撤収しませんか?
広間方向が騒がしくなってきたので、これ以上の騒ぎになる前に逃げたいんですが。
確 実 に 囲 ま れ る ぞ!?
私もいい加減お腹空いたし、酒…もしくはがっつり濃いエスプレッソ飲みたいし、着替えたいし。
そんな私の焦燥を見抜いたのか、はたまた空気を読んだのか、大扉の騒ぎに気が付いたのか、公爵様はひと言「ふむ。」とつぶやくと、続けて
「どうやら広間から他の貴族達がこちらへ向かい始めている。このままここへいてはアルラ・エールー嬢にも、うちのガブリエラにもよろしいとは言えないし、恐らく陛下からの呼び出しもあるだろう。
アンブロジア伯爵、レオーネ嬢、もし良ければ明日、我が屋敷へ家族と共に来てはいただけないだろうか?」
ですよね。
情報共有、大事。各々がバラバラだと、言っていい事悪い事でカオスが発生するわ。
国のトップである国王陛下の聴取となれば尚更にな。
伯爵も頷き、
「わかりました。明日公爵邸へ伺わせていただきます。」
レオーネさんは
「私は寮生活ですので、侍女ひとりのみの同伴になりますが、よろしいでしょうか?」
と了解を取っていた。
あー、留学生だから、家族は帝国か。
呼ぶにしても時間かかり過ぎるもんね。
飛行機や新幹線もないから、基本馬車移動だし、こればっかりはどうしようもない。
公爵様は頷くと、
「では、明日昼食を取りながら話の擦り合せと陛下への報告をまとめよう。すまないが、よろしく頼む。」
そう言って軽く頭を下げた。
こういう所が人格者っぽいよね。
こんな公爵様に育てられたガブリエラがつまんねぇ虐めとかするわけないじゃん。
寧ろ筆頭公爵家の権力で、マリラ男爵家ごとプチッとやる位、簡単でしょ。
其々、公爵様の言葉に深く頭を下げ、了解の意を示す。
公爵家の家紋入り馬車が乗り場へと到着し、レオーネさんはガブリエラを抱えて馬車に乗せてから、ひとり学生寮へ帰っていった。
公爵家の馬車を見送った私達は…
いや、私は何故か兄に俵抱きにされ、荷物のように抱えられながら伯爵家の家紋入り馬車に押し込まれ、野次馬に飲み込まれる寸前でようやく帰途につけたのだった。
前回のおかわりフィニッシュムーブであるジャイアントスイングですが、馳○にしようかアジャコ○グにするか、はたまた爆裂お父○んにしようか小一時間ほど悩みました(^_^;)→筆頭候補は爆裂お○さんだった。
あれこれ悩んで、対戦相手のコスチュームが捲れ上がる威力とスピードの、東女の渡辺○詩選手のジャイアントスイングが一番イメージに近かったので、脳内変換して読んでいただけますと幸いです。
そして!
何と!!
ブックマークといいね!が微量ながら増えましたぁぁぁぁ!!
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