第68話:面談はわかっていても緊張する
第68話になります!
今回もよろしくお願いしますm(_ _)m
やっとひと息つけるー!と、油断したのが悪かったのか、部屋に案内されてからダラダラも出来ずにそのままルドルフさんに連行され、着いたは大叔父様―――アヴァロン魔導王の執務室。
…え?冗談でしょ??普通、重要書類や機密情報ある場所に他国の身内を入れるか?!ユルすぎんのにも程があるべよ!!
アワアワと焦る私にルドルフさんはにこやかに「大丈夫ですよ。我が君の指示ですので」と言ってのけた。
あ〜…アヴァロンだもんな。ここが一番セキュリティが固ぇか。精霊もいるし、情報パクろうもんなら速攻でバレるわな。ハハッ。
コンコンコン、とリズミカルなノックの後に執務室の扉が開き「入っておいで」と大叔父様から声がかかる。
「失礼致します」
そう言ってルドルフさんと入室すると「我が君、アルラ様をお連れ致しました」と姿勢を正す。
「さ、アルラ。そこのソファへお座り。少しお茶でも飲まないかい?」
裏表の無さそうな、無邪気にも思える破壊力抜群の笑顔をこちらに向けて着席を求められる。もちろん私に拒否権は無い。
「では、こちらに座らせていただきますわね」
細工の見事な猫脚のソファは座り心地も抜群で、このまま寝そべりたくなる一級品…いや、特急品とも言えるシロモノだったが何とか耐えて背筋を伸ばす。一脚いくらするんだか想像すると座るのすらおっかねぇわ。
執事?側近?と思わしきこれまたワイルド系イケメンが手際良く紅茶とプティフールを給仕してゆく。何だろう、ピエール・エ○メ青山店のイートインスペースを思い出すわ。テーブル周りに広がる紅茶の芳香とプティフールの放つ、甘やかな果実とクリーム、焼けた生地の香りが疲れた身体に少しの刺激をもたらす。
…確実に美味しいやつやん。食べる前からわかるわ、コレ。
不覚にもスイーツに釘付けになっている私に苦笑しながら魔導王は「晩餐前だけど、軽くつまむ程度なら大丈夫」と仰ってくださったので、遠慮なくいただく事にしよう。
紅茶の香りを堪能し、先ずはひとくち口に含むとコクがありながらも甘さを感じる赤い茶が鼻孔と舌を楽しませる。オータムナルとアッサムのイイとこ取りをしたような味と喉越しだなぁ。あっちに持って帰りたい。いや、ブレンドすれば良いのか?
しげしげと鮮やかな赤の水色を見ながら紅茶を味わう私に、にこにこと笑みを絶やさない魔導王は「気に入ったかい?」と問うてきたので「はい。向こうには無い、私にとっては極上の茶ですね」とにこやかに返答。
「君の為に用意した紅茶がそんなに喜んでもらえるとは僥倖だ。
さて、アルラ。いや…異世界の精神よ。君をここに呼んだ訳はわかっているね?」
…デスヨネー。
うん、わかってた。姐さんからも報告いってるだろうし。
「はい。姐さ…伯爵夫人からの報告やルドルフさん、精霊達からも恐らく聞き及んでおられると思いますが、私は異世界の精神でございます。」
ティーカップをソーサーに戻し、姿勢をただした私はそう言って魔導王に向き直る。
精霊に嘘は通用しない。看破されているだろうし。
「うん、報告は受けているよ。その上で君の目的を問いたい」
「姐さ…伯爵夫人含め、アンブロジア伯爵家は使用人含め全員、カンバネリス公爵家の皆様、レオーネ・コルネイユ嬢は私の事情を全て把握しております。
この物語のキーマンはガブリエラ公女です。だから私は、いや、アルラも絶対に彼女を死なせたくない。」
「ヒトの国のイザコザだよ?何故それに進んで首を突っ込もうとするのかな?特に君は全く関係無いじゃない」
確かにそうなんだけどもさぁ。対岸の火事なら勝手にやっとれや!って話で済むんだろうけども…。この王様は友達とか大事なモンが無いんかい!!まあ、身内として心配してるって事もあるんだろうが、これは星に対しての意思確認じゃなかろうか。
「それがアルラの、強い願いだからですよ。その願いを叶える為に私が呼ばれた。
元は物語の話かも知れませんが、この目の前にあるものは現実です。現実ならば変えられる、私の役目はまるっとハッピーエンドに導く事だと、そう理解しております」
これだけは譲れない。
それが崩れればアルラは戻れなくなるだろうし、あの馬鹿共が高笑いするような未来なんざ御免蒙る。
私は言葉を続ける。
「全て片付けなければ本当の意味でアルラと再び入れ替わり、アンブロジア伯爵家にお返しする事が出来ませんからね。
私のやるべき事はアルラの願いを叶え、皆様にお返しする事、それだけです」
「君は…むこうに帰るつもりでいるのかい?死んでいるかも知れないのに?物語の神に弓引く事になるのに?」
意外そうな顔をして魔導王が私に問う。
まだ死んじゃいねぇわコンニャロウが!勝手にヒトを殺してんじゃねぇぞ、と思わず目が座ってしまう。
「死んでいようがいまいが、アルラの身体や持ち物全てはアルラのモノですよ?私が好き勝手して良いものでは無いでしょう。
私もね、もういい加減美味い酒飲みたいしシガーも吸いたいし、こんな俗っぽさ丸出しのド平民な私に貴族令嬢が務まる訳無いでしょう。そしてクソ馬鹿野郎な物語の神にも報復します!」
うん、後半本音がブチ撒かれてしまったが後悔はしない!
流石に酒はまだセーフだとしても、シガーはアウトだろう。アルラの身体にヤニを覚えさせる訳にはいかん。
それを聞いた魔導王は手を叩いて爆笑する。
「…アッハッハ!ブリジットやルドルフの報告通りの子だねぇ、君は。激しい嵐や焔の様な気性で周りを巻き込むくせに、アルラやガブリエラ嬢を守る為には自分が傷付く事も厭わない。いや、非常に面白い!」
うっすら目尻に涙を滲ませ、爆笑する魔導王をルドルフさんが窘めるも、まだ笑いは収まらず。
うむ、天上人の価値観はさっぱり理解出来ねぇな!
まだちょっとひくつきながらも魔導王は「あの御方が気になさるのもわかるね」とぼそりと呟く。
「異世界の精神よ、改めてそなたの名を問いたい。私はアヴァロン魔導国国王グリフィス・ミラ・バシレウス・アヴァロンと言う」
私に真正面から向き直り、魔導王は自ら名乗る。
これは認めてもらえたの、か、な?
「では改めまして。異世界の魂でございます『星』と申します。よろしくお願い申し上げます」
そう言って、私は深々と頭を下げる。
何とか協力してもらえそうなのと認められたかな?という気持ちと感触に少しだけ安堵する。
それから暫し、私と魔導王は情報の共有とすり合わせと対策について話し合い、可能性は激低だが警備体制についても強化する方向で話を終わらせる。
あ、もちろんレオーネの事情も話した。これ大事。
「へぇ、そんな面白い事になっているのか、彼は」
ニヤニヤしながら魔導王が言うも、まぁ仕方ない。姐さんや公爵様もだが何かしらレオーネの情報は掴んでるんだろう。
…私が知らないだけでな!!
「人の恋路を邪魔すると馬に蹴られるので、知らないフリをしていただけると助かります。精霊達にも通達してくださるとバレるリスクが減りますのでお願いします」
私もニヤニヤしながら魔導王とルドルフさんにお願いをする。そんな私と魔導王を見て「…何でそんなに楽しそうなんですか」とルドルフさんがしかめっ面で言うも私達は声を揃えて
「「面白そうだから!」」
と、満面の笑みで言うともの凄いガッカリしながらデカいため息を吐かれた。
えー、コイバナ楽しいじゃん?
台風15号の被害、都心目黒川氾濫の危険と聞いてビックリしておりますし、中部と静岡、その他線状降水帯の地域に該当した皆様、ご無事でしょうか?
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