第65話:血は水よりも濃いとは言うが
第65話になります!
今回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
光景に言葉を失うよりも戸惑っている私達。
いやぁ、そらそうもなるやろ。こんな事一生に一度も無いぞ?!あっちでの人生にも無いもの、こんな事。
困惑した表情でガブリエラとレオーネが私を見るから何か言わんと収集つかんのだろうなぁと思い、とりあえず腹を括って挨拶を。
「皆様のお出迎え、有り難く存じます。しかしながら私達は見ての通り殻の取れたひよっ子の身です。魔導国アヴァロンにて研鑽を積み、然るべき時に備えて骨身を惜しまず自らを高めたく思いますので、どうぞ皆様ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。
改めまして―――――ただいま、アヴァロン!!」
そう言って私達は揃ってカーテシーをすると頭を垂れていた皆がにこやかな顔になる。
良かったぁぁぁぁぁ!めっさ緊張したぜぇオイ?!クソ上司のムチャ振りに慣れておいて良かったけどうっすらムカつくわ!!ガッデェム!
ほっと安堵の息を吐き、私達はそれぞれ笑みを交わしていたその時。
「おかえり、可愛い可愛い末っ子よ」
聞こえた声はよく通り、心地良い響きで耳にするりと入った。
声が放たれた場所に目を向けると―――――
うっすらと光を纏い、精霊達に囲まれた神々しいまでの美丈夫が姿を現すと同時に人垣が割れ、道が出来た。
あれが
あの方が、魔導国アヴァロンの王
エルフを超える美形って人って枠を越えるんだな…。十人いたら十人全員が「美形だ!」って即答するだろう。
地球の概念だと、顔の形やパーツのバランスが取れていれば美形の条件を満たすんだけど吹けば飛ぶようなそんな条件なんぞカケラの興味も関心も無いと言うような、圧倒的な美。
悪魔が堕落させる美とも、天上の美ともつかないが、確かにその造形は人の心を抉り出し、引き千切り、焼き付かせる程の力がある。
あれだ、AIがたまに作り出す創作の三次元人物画。あれがエルフ達だとすると更にそこにプラスαに5次元以上の進化を遂げたような存在。存在感やオーラ、正体不明なものも全部ひっくるめての貫禄。
私達も自然と頭が下がり、カーテシーの姿勢で魔導王がこちらに来るのを待つ。
他国の所属なので、片膝ついて恭順の姿勢は取れないのよね。それやっちゃうとアルラは良いがガブリエラとレオーネは高位貴族だから問題になりかねん。せめてもの礼がカーテシーなのだ。それもかなり姿勢低くしてるから最敬礼一本手前くらいにはなるんだけどもね。
カツンコツンとゆっくり響く靴音にシュルシュルと衣擦れの音が耳に届く。
ふわり、と温かな手で頭を撫でられる感触と共に「頭を上げなさい、可愛い末っ子。そしてその友よ」と声が掛けられ、ゆっくりと姿勢を戻す。
「よく来てくれたね、アルラ。赤子の君も可愛らしかったけど、こんなに早く成長するなんて…私はヒトというものの生態に驚くばかりだ」
そう言って魔導王は必殺武器のような威力の笑みを浮かべる。
目、目がっ…目がァァァァァァ!!
いや、その前に末っ子?末っ子って言ったか?え、ちょっと待って。大叔父っつーのはもしかして…はぁぁぁぁぁぁ?!
「陛下、ヒトと陛下を同じにしてはなりません。魔力と寿命が違います故」
「でもブリジットもエルフだよ?」
「彼の方はエルフ族から外れられております」
「アルラにも遺伝していると思うよ?こんなに魔力量が大きいし、エルフ達より多いくらいだよ」
ちょっと待って。
姐さん、元エルフかよぉぉぉぉ?!
初めて聞いたぞその事実!アルラの成長がちょーっとだけ控え目なのもそのせいか?アルラの記憶にも無いんですけどぉぉぉぉぉ!!
バレないように魔導王をちらりと見ると
…うん、テンプレな長いとんがりお耳がついていらっしゃる。
そして私はもはや情報過多でシナプスが焼き切れそうよ(泣)それよりも汁袋でも破ったかのように汗が止まらん。中のブラウスはビッチョビチョになってるんじゃなかろうか。イヤァァァァァ、はずかしー!誰かシーブ○ーズプリーズ!!
いや、落ち着け私ヒッヒッフー。ここで思考放棄したらガブリエラ達がヤバい事になる。何てったってアルラがいてこそのアヴァロン入国だ。そして倒れようものならルドルフさんに影響が及んでしまう。ふんばりどころだよぉぉぉ!ド畜生!!
「魔導王陛下、お久しゅうございます。変わらず輝かんばかりのお姿に私、懐かしさがこみ上げて…大変嬉しく思います」
「ブリジットとの連絡で幻像をたまに送っていたからね。アルラ、大叔父様とは呼んでくれないのかい?
それに、中々面白い事になっているそうじゃないか。」
そう言った魔導王は興味津々という感情をダダ漏れにしながらにこにこと笑っている。
「後ろにいる友人達も疲れているだろうし、途中ワイバーンも狩ったのだろう?今日はゆっくり休んで明日、王城の皆に紹介するとしよう。
ルドルフ、アルラ達を部屋へ案内してくれるかな?」
ルドルフさんは「かしこまりました。ではアルラ様、ガブリエラ様、レオーネ様、お部屋にご案内させていただきます」と歩き出そうとしたので、私は急いでストップをかけた。
「そういえば、先程討伐したワイバーンと飛竜ですが、今こちらで出したほうが良いでしょうか?ずっと収納したままよりは解体してバラしたほうが素材の処理も同時に行えるかと」
と言うとルドルフさんよりも先に反応した魔導王がワクワクとした表情で発言する。
「アルラが狩ったのかい?それはすごいね!ここは汚すと怒られるから、先ずは鍛錬場へ行こうか。そこなら解体する人手もいるし、おおっぴらに汚しても構わないよ」
何故か私の頭を撫でくりながら上機嫌で仰る魔導王。
「陛下…汚しても片付けるのは騎士達ですよ?構わない訳ではありません」
「だって鍛錬場、いつも汗臭いじゃない。いい機会だよ。ザバーッ!と洗っちゃえばいいじゃない♪」
眉間を揉みながらため息を吐く側近?のイケメンと一石三鳥くらいにいいアイディアを思いついたかのようにウッキウキの魔導王。
…何だコレ。
いや、権力のトップが良いならいいんだけどもさ。
っつか魔導王、いやさ大叔父様よ。何かノリ軽いな?!そして体育部にありがちな汗の臭いは次元を超えても共通なのか。そこはファンタジー感皆無なのな(笑)
オッケェェェ!私が丸洗いしてやろうじゃないか。手入れは騎士や従騎士、小姓がやるだろうしな。
アリエルから飛竜を括り付けていたフックを外し、魔力を込めながらポーチへ無理やり押し込んでから鍛錬場まで移動する。首を半分ぶった斬ったのと逆さに吊るしてきたので血抜きは多分上手くいっているハズ。それに高度を上げて飛行したので冷やされてもいるだろう。
近未来風のエレベーター的な乗り物に乗り、階下へ移動し『剣の館』と呼ばれる騎士を含めた戦闘職の勤めるエリアへ到着すると魔導王が一緒だったせいかやたらビビられた&慌てふためかれたが、すんなりパスし、鍛錬場へようやく到着。
そして場所によってはかなりヤバい男臭と汗臭が漂っている。
…うん、これはファブ○ーズ案件だな。
従騎士、小姓は仕事をしてないのか?!
例えるなら剣道の小手、アレを毎日使い続けて三年間全く洗いもしなかったあの臭い!アレに似ている。速攻でゲェ吐ける、あの臭いな?もはや呪物だよあんなん。
燃やせ!焚きあげろ!呪われるわ!!
「ね?丸洗いしたくなるでしょ?」
「…左様でございますわね、大叔父様。解体作業の後で丸洗いいたしましょうね♪」
私と魔導王はお互いに笑みを浮かべると背後からデカいため息が二つ聞こえたけどキニシナーイ。
そして私とレオーネは鍛錬場の中央へ歩くと『排出』と唱え、収納からワイバーンと飛竜を取り出す。
ちょっとこんもりした小山になったが、レオーネが12匹、私が飛竜込みで18匹討伐していた。うん、なかなかの成果じゃなかろうか?わからんけど。
「これで全部ですね」
私とレオーネは後ろを振り返ると魔導王はしげしげとワイバーンや飛竜の死体を見聞し、「これは…首が無いのはレオーネ嬢の仕留めたもののようなのはわかるけど…アルラ、君、武器持ってないよね?どうやって仕留めたの?」と聞いてきたので、飛竜から外したフック付きチェーンを持ちながらずいっと差し出す。
「こちらのチェーンを武器代わりに使いましてシバき倒しましたが?」
魔導王を始め、側近のイケメンと解体作業に呼ばれた騎士達もポカーンとこっちを見ている。
「えぇ〜っと…詳しくはルドルフさんに報告を聞いていただければ助かります…わ?」
ご令嬢らしく小首を傾げながら可愛く誤魔化してみる。
さっ、数あるんだからちゃっちゃと解体しよ、解体っ!
「まぁ、後で話を聞くとして、コレを解体しようか。
騎士達よ、手の空いている者は手伝うように!早く出来たら食堂にも提供しよう」
オオォー!と野太い声があちこちから響き、屈強なゴリマッチョ野郎から細マッチョまで色んなマッチョ…騎士達がテキパキと足場を組み、ワイバーンをつるし上げ、サクサクと解体してゆく。
あぁ…美味しいお肉…♪たっぷり堪能できるねぇ。姐さん達にもお土産にしたいなぁ。
飛竜は皮膚?鱗?が硬いようでミスリルソードを使って解体している。解体担当者が「致命傷が無い?…どうやって仕留めたんだ?」と首を捻りながら解体しているが、そんなん後や。血抜きもしてるから早よ解体してー!
暫くして日が暮れたあたりで解体は無事に終了し、翌日の騎士達の食事にはワイバーンの串焼きがたんまり提供され、朝から野太い野郎共の歓声が王城まで響き渡った。
台風三つとか正気か?な感じですよねぇ…。
災害対策グッズを確認せねば。
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