第61話:いい日旅立ち1
第61話になります!
今回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
アヴァロンへ向かう当日。
いつも通り修練に加え、しばらく帰ってこれない事を想定していたので弛まず修練に励むよう茶帯以上の騎士達を相手に組手を行い、全員を滅多打ちにしつつも褒める言葉を伝え、気を引き締めさせる。
うん、油断大敵、油断禁物はマジであり得るし慢心は油断を生むからな。私如きに一本取れない分際で油断なんぞ絶許だ。
馬車へ荷物を積み込み、使用人全員に挨拶をしてから王都の城壁より出て半刻程の草原へと向かう。デカい転移陣でも使うのかと思いきや、姐さん曰く「叔父様の悪いクセでね?掃除も兼ねるそうよ」と言われたがサッパリ訳がわからん。マ神様を見てみると、こちらも首を振っている。マ神様も把握してはおらんのか。
やがて馬車は待ち合わせの場所へと到着し、其々の馬車からカンバネリス公爵家の方々やレオーネと侍女さんが草原に降り立つ。もちろんアンブロジア伯爵家も。使用人達は馬車に積んである荷物を下ろしたりと忙しないが、私達は中間に集まり挨拶を交わす。
「アンブロジア伯爵、旅立ちにはうってつけの良き天候になったね」
「左様にございますな、公爵様。
……ただ、何事も無ければ、の話ですが」
「王との約定を破れば、彼の家も連座で処罰されるのだ。流石にそこまで狂っているとは思いたくないのだがなぁ」
ちょっと待って。内容が物騒じゃないすか?
笑みを絶やさず穏やかな表情の公爵様に、眉間のシワが深いマ神様。
っつかそれをフラグと人は言うのだよ?しれっと立てるの止めてもらっていいっすかね。
「星、おはようっ!」
「おはよう、星…お前、何て顔しているんだ」
ドムス!と音がする程の威力で挨拶のハグをしてきたガブリエラを受け止めて「おはよう」と挨拶を返す。
軽く身体強化しないとアルラの身体だと飛ばされるんだよねぇ。まぁバレてないからこその衝撃なんだけども。そしてガブリエラの努力はこの引き締まりつつも適度に柔らかいボディにも現れている。教えた鍛錬法を忠実に行った結果だ。
そんなガブリエラが可愛過ぎて尊くて、思わず肩口に額をぐりぐりと擦りつける。
「あら、星どうしたの?昨日は眠れなかった?」
「ううん、違う…ガブリエラがこんなに努力してくれたのが嬉しくてさ。とっても可愛いって思ったの」
「星…」
ポッと顔を赤らめたガブリエラはギュウギュウと私を抱きしめる。
その様子に周囲からは「尊みが過ぎる…」「あの二人ならイケる…」「禁断の恋?!でも、イイ…」やら色んな呟きが聞こえてくる。オイ、赤面しながら鼻血流してる奴がチラホラいてるけど違うからな?!
どっちかって言うと、ガブリエラは末っ子長女で割と妹属性が強いんで、私からしてみれば本当可愛みが過ぎて猫可愛がり状態になってるだけだから!
んでレオーネ!オメーはハンカチをギリギリ噛みそうな勢いで羨ましがってんじゃねぇよ!ざまぁ無ぇなオイ!!
「はいはい、貴女達?迎えが来たからお巫山戯もそれくらいにしなさいね」
姐さんのカットインとレオーネによる引き剥がしでガブリエラと離される。
だーかーらー!襟首持って後ろに引っ張るなと何度言えばわかるんだお前は。ゲ○吐くぞ?
まあ、時間だし迎えが来る約束だしそこは理解してるけどさぁ。何処にいるのやら。
「姐さん、アヴァロンの迎えはどちらにいらっしゃるのですか?私には見えないのですが……」
皆、同じようにあちこち見ているが、それらしきモノは見当たらない。
「ほら、彼処にいるわよ?」
姐さんがすいっと扇子を指した、その先。
キラキラと陽光を反射し、色とりどりの布をはためかせながら空を優雅に飛ぶ――――――
飛空船んんんんん?!
はぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ?!
明らかにオーバーテクノロジィィィィ!
あんなモン、あっちの世界にも無ぇぞ?!あっても某国の政府秘密機関がモドキを作ったっつー話がちらほら聞こえるくらいで。
よく見ると、あのセイルや布…オーブが沢山の光の玉で煌めいてる。もしかして…
「せい、れい……」
「あら、星。よくわかったわね」
私の呟きに姐さんが答える。
精霊だけじゃない、光の帯まで見える。あの飛行船が祝福を受けた船、聖域のよう。
ド肝を抜かれた私の顔を見て、姐さんはコロコロと笑う。
「あれがアヴァロンの船のひとつ『アリエル』よ」
……優美なフォルムの船?なんだけど、名前はどっかのお転婆人魚姫じゃね?
ひとつ、って事はまだあるって事よね。一匹いたら三十匹はいると思え、的な?
いやいやいや…あんなもん一隻でもパワーブレイカーになるぞ?よくそんなんを送迎サービスに出したな?!アヴァロンの魔導王はそんだけマジ、重要視してるっつー事っすか。
飛行船は翼のセイルを収納し、着陸態勢に入るとバラストと思わしき部品を地面に向けて射出する。
ザシュッと音を立てて独鈷に似た形状のブツは草原へと突き刺さり、飛行船アリエルと馬車を囲うように結界を発動させる。
へぇ、バラストとアンカーも兼ねてる結界魔道具なのか。発想が面白い。
姐さん以外皆呆気に取られている中、しげしげと地面すれすれに下降した飛行船を眺めていると、船底部分が開き、タラップから出てきたのは…それはそれは見目麗しいエルフ達。
ちょ、コレ、ファンタジー種族キタぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!っしゃぁぁぁ!
しかも目ぇ潰れるくらいのバ○ス系美形なのもお約束かよ!
いやぁ、国宝級じゃね?こりゃ攫われるのも納得の美しさやもん。
ハッ!いかんいかん。仮にも貴族令嬢でありアヴァロン出身の姐さんを母に持つアルラの評価を下げてはいけない。
私は表情を引き締め、姿勢を正し使者のエルフ達を待つ。
エルフ達はパンツァーカイルの隊列になり、一斉に片膝をつき礼の姿勢を取ると先頭のエルフが口を開く。
「ブリジット様におかれましてはご健勝のことお慶び申し上げます」
姐さんは先頭のエルフの前へと歩み出ると「お久しぶりね、ルドルフ。今回は私の娘と叔父様から許可をいただいた娘の友人達の迎えですからそんなに畏まる必要は無くてよ?」と微笑みながらたしなめる。
先頭のエルフ、ルドルフは「承知致しました」と一言言うとスッと立ち上がり、私を見ると「アルラ様でございますね?姿絵よりも随分とご成長なさいましたな…そしてブリジット様に、祖母のグウィネス様によく似ておられる」と少し目を細めながら好意的な感じを滲ませている。
「はじめまして…と言って良いものかどうかはわかりませんが、アルラ・エールー・アンブロジアと申します。道中、そしてアヴァロンではお世話になりますが、よろしくお願い申し上げます」
いや、マジわかんねぇもん。アルラの記憶にも無いし。赤ん坊の頃に会ってるとしてもそんな記憶はあって無きが如しじゃい。
それよりもだ、祖母の存在!これをすっかり失念しておったわ。姐さんの母親やろ?いや、知らん知らん!これどうしろっつーの?!あっち行ったら絶対会わざるを得ねぇパターンのやつやん?っつーかそもそも姐さんの詳しい事情を聞いてなかったわ。今更過ぎるけど。
「そして、今回許可をいただきまして同行いたします私の友人達にございます」
続けて私はガブリエラとレオーネに挨拶を促す。
「お初にお目にかかります。エクサルファ国カンバネリス公爵家が一女、ガブリエラ・カンバネリスと申します。これからお世話になりますが、よろしくお願い申し上げます」
「同じく、アルラ嬢の学友であり親しくさせていただいております、帝国コルネイユ伯爵家が一女、レオーネ・コルネイユにございます。お手数をお掛けいたしますがよろしくお願い致します」
二人は綺麗なカーテシーで挨拶をする。
「ブリジット様の推薦とアルラ様のご友人、それに『先読視』様と王の許可があります故、貴女方を歓迎いたします。ガブリエラ様、レオーネ様」
ルドルフさんはそう言うとにこやかに微笑み、ボウアンドスクレープで礼をする。
ちくしょう、いちいち様になるカッコ良さだなオイ!
ルドルフさんはそのまま、後ろの部下エルフを呼び付けて宝石箱っぽいモノを持ってこさせるとそれを開け、中から石の付いたバングルを三つ取り出し、私達に差し出す。
「こちらをアルラ様、ガブリエラ様、レオーネ様に受け取っていただきたく。受け取りましたら利き腕とは反対の手首に装着をお願い致します」
繊細な彫金のバングルを左手首に着けるとバングルは自動的に手首のサイズにフィットするように装着され、石から魔法陣が浮かび上がり一瞬キラリと輝く。
「こちら、通信と収納が出来るバングルになります。『収納』と唱えながら物に触れると収納されますので、手荷物はバングルに収納していただけますとよろしいかと」
ほうほう。やっぱ収納魔法と言うか魔術はあるんだな。これは是非とも覚えないと!
「ご丁寧にありがとうございます。では、早速収納させていただきます」
私は礼を言い、非常にワクワクしながら各々『収納!』と言い荷物をバングルに仕舞う。
ガブリエラは荷物があるから、嬉しそうに収納している。
その間、公爵様一家とマ神様達が姐さんと一緒にルドルフさんに挨拶をし、くれぐれもよろしくと伝えているが…多分大丈夫っすよ?そもそも、転移かこの飛行船でしか入れない場所ですから。
っつーか、このバングルに守護の魔法の気配もあるんだよ。使っている石の意味があっちと同じなら、きっとそう。
私は挨拶を交わしている大人組を横目にエル兄の元へダッシュで向かい、隣にいたジェシーを撫でくり回しながら祖母の事を聞いてみる。エル兄は嫡男なので、私が生まれた時にうっすら会った記憶がある模様。四歳の頃の記憶かぁぁぁ〜!それでも薄らぼんやり覚えているだけでも御の字かも知れない。
そして予想は確信へと変わった事がもう一つ。
これは今、答え合わせしている暇がないので後々やろうと思っているけども。
そうしていると、大人達の挨拶も終わりいよいよ出立の時間になる。
私とガブリエラ、レオーネは其々家族と挨拶を交わし、最後に姐さんが私達に歩み出て一人ひとりと抱擁をし「貴女達が成すべき事を成しなさい。決して甘くはないけれど、貴女達なら出来ると信じているわ」と言うと優雅に微笑んだ。
「任しといて下さい。必ずや果たしてみせます」
そう言って私はサッカー選手がよくやるように右の拳を左胸に当てる。
「向こうに通信機があるから、何かあれば連絡しなさいね、星」
「了解です」
私達はエルフ達と共にタラップを登り、飛行船へ乗り込むと甲板部分から手を振り、三人で叫ぶ。
「行ってきます!!」
その時
ッドゴオォォォ――――――――ン!!
王都の貴族街から大規模な爆発音が響き、黒煙が派手に上がった。
体調不良から回復しました!
が!コロナの第7波がヤバすぎてクライアントもスタッフもてんやわんやで仕事どんだけマルチタスクなんだとキレかけております(;´Д`)
撮影まで担当とか…。
休みはもぎ取ったので明日も投稿します。
さて、ようやくアヴァロンに向けて出立ですが、星の荷物については書きませんでしたが相当揉めました。
調理道具と新作の下着セット、鍛錬着を持っていくのを知った姐さんがドレスを五着ほどねじ込みました。
庶民の星、そこには思い至らず。
そして飛行船アリエルは認識阻害魔術を使って途中まで姿と駆動音を消していました。
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今回もお読みくださいましてありがとうございましたm(_ _)m




