第6話:ブックは破かれた
第6話です!
よろしくお願い致しますm(_ _)m
ぶわり、と覇気と闘気が再度私を包む。
と、斜め後ろから「くう、うっ…。」と可愛らしい声が聞こえる。
あ。
ガブリエラ、覇気に当てられた!?
ヤバいヤバいヤバい!声めっちゃ可愛い!これが尊み、と言うものか…
じゃなくて!!落ち着け私、ヒッヒッフー!
内心、私が慌てていると、後ろの人垣を割って背の高い、同級生の黒髪ロングの姫カットポニテの…うーんと、誰だっけ、が、ガブリエラへと走り寄ってきた。
姫カットポニテの同級生は私に
「アルラ様、私が貴女の覇気を打ち消しますから、ガブリエラ様の事はお任せ下さい。」
跪き、騎士の礼を取りながら告げる。
確か…貴族科と騎士科を並行で履修してる女性騎士の…レオーネ!そう、レオーネ・コルネイユさん!
騎士服が凛々しいな、宝塚系美人は。ちくせう。
この人は留学生だったハズなので、この国で何かあってもマズイ事にはならない…かな?
「すみません、私の実力不足でガブリエラ様に影響を及ぼしてしまいました。お手数をお掛け致しますが、ガブリエラ様をお守り下さいませ。」
私はそうレオーネさんにお願いすると、レオーネさんは、とーーーーってもイイ笑顔で
「お任せを。アルラ様は為すべき事をなさいませ。完膚無きまでに、ね。」
にっこり笑いながら、親指を立てた拳をクリンっと下に翻した。
…あー。
地味にムカついてたんすね、レオーネさんも。立場が立場なだけに表立てなかったけど。
その悔しさもまるごと抱えて、あの馬鹿二人に食らわしてやりますよ!勿論じゃないですか。
「承知しました。レオーネ様の悔しさも一緒にブチかましてやりますね♪」
私も返すように微笑み、とりあえず聖女へと向かい、ゆっくりと、優雅に歩を進める。
とりあえず聖女は数歩後退りながら私を睨むと
「な、何よ、私を殴る気なの?!」
「今更過ぎね?私さぁ、フェミニストだけどやり過ぎた馬鹿と、言っても解らない馬鹿は同じ女でも躊躇しないよ?」
「暴力なんて野蛮ね!聖女を殴るとか世界が許さないわよ?!」
「暴力より酷い事をした手前が何寝ぼけた事言ってんだ、馬鹿。そしてひとつ訂正しとこうか。
これは暴力ではない。
肉・体・言・語、だ!」
間合いに入った所で踏み込もうとしたタイミングで
「させるか!」
と、第一王子が割り込みをかけてきた。
そういや、途中から空気だったけどコイツも元凶だったな。
とりあえず聖女の魅了で馬鹿にブーストが掛かっているが、目を覚ませやド阿呆が。
身長差があるのと間合いが近すぎるので、ちょいちょい使うシグネチャームーブを食らわして体勢崩しておかんとな。
サッサッと左足を軸に前屈立の構えから、溜め無しで軽く飛び上がりつつ上半身の捻りを加え、右周りにぐいん!と体を回しつつ右脚を斜め上に蹴り出す!
初代タイガーマスクお手本の、フォームと打点の高さが芸術的なローリングソバットぉぉぉ!!
鳩尾にソバットを喰らい、「げほっ!!」と前屈みになった第一王子の首を右腕でガッチリとホールドし、上着を捲り上げサッシュベルトとスラックスのウエストバンドを摑み、私は全身に身体強化を巡らせゆっくりと息を細く吐きながら第一王子を持ち上げつつ、足を軽く蹴り上げて直立姿勢を取らせた。
「行くぞぉぉぉぉ!!」
盛り上がれ、広間の貴族達!
「フウッ!!」と肺に残った酸素を一気に吐き出す。
破壊王、故・橋本○也に捧ぐ!
我に闘魂を伝承し給え…
必っっ殺!吊車式垂直落下DDTィィィィィィ!!
ドゴオッ!とイイ音と共に、直立したまま床にめり込む第一王子。
うぅ〜ん、気持ちよくキマった♪
首と腰のロックを外し第一王子から数歩距離をとると、頭をめり込ませたまま下半身からゆっくりと崩れ、尻を突き出した形でTKO。
恥ずかし固めならぬ、恥ずかしノックアウトポーズ、爆☆誕!
そして…何かじわじわスラックスに染みてきてんだけど…。
え、ちょっ!
マジで名目も実質もクソ王子、もとい、う○こ王子じゃん!!
各国の要人もここにいてるのに、やっちまったなぁ!
超爆速に、背ビレ尾ヒレがついて面白おかしく伝わるぞw
ひとり、うんうんと満足気に頷き、最後の元凶であるとりあえず聖女へと体を向け、少し顎を上げて見下ろす視線を送る。
こうして近付いてみると…臭いんだよね、とりあえず聖女。
風呂に入ってない臭さじゃなく、魂レベルで腐ってる人間から漂う匂いって言うのかな?友人曰く「霊臭」って言うらしいけど、臭いのは例外無く良くないんだって。
コイツから出ている臭さは正にソレに当たる。
「おい、とりあえず聖女。お前、臭うなァ…ドブ以下の臭いがプンプンするぜぇ?」
犬歯を剥き出しに凶悪な笑みを浮かべながら言うと、
「ひっ!」
と小さく悲鳴を上げたとりあえず聖女は、小賢しくも結界を展開しやがった。
が、関係あるかボケェェェェ!
手前だけはド派手にやったんかんな?
突進の勢いそのままに、拳を更に身体強化プラス抗魔法陣を拳に対して発動。思っていたより小さかった結界を中和しつつバリッバリに破壊したらぁ!
敬愛する、在りし日のドン・フ○イの名試合である高山善○との殴り合いの如く、ひたすらに結界を殴る。
殴る。
左手は結界を鷲掴み、とりあえず聖女を逃さないようホールド。
ガッ!
ガッ!
ガツッ!
ゴッ!
ガスッ!
「ちょ…何なのよ…アンタ、頭と情緒おかしいんじゃないの…?!」
ガッ!
「五月蠅えな、頭おかしい手前に言われたないわ。んで、さっさと結界解除しやがれ。」
ガッ!
「解除したら止めてくれんの?」
ドゴッ!
「え?トドメ刺すから無理だけど?」
ガッ!
「バカなの?イヤよ!!」
ゴッ!
ぬぅ、腐っても性魔法…間違った、聖魔法ってか?中々壊れないもんだ。
しかしっ!お前がっ!倒れるまでっ!殴るのをっ!止めないっっ!!
ガッ!
ゴッ!
ガッ!
…ミシミシ…ッ
ガッ!
ガッ!
…ミシッ…ミシミシ…
ガッ!
ガッ!
ゴッ!
ピシッ!!
ガゴッ!
ピ……ピシッ、ピシピシピシッ!!
ガッ!
バキィィィ…ン!
長っ!堅っ!!
やーっと割れたぁぁぁぁ!
ホールド状態の左手でとりあえず聖女の髪の毛をむんず、と鷲掴み、逃げられないように確保。
痛いだの何だのギャンギャン騒いでいるが、優しくしてやる義理は無ぇ。
引き千切らないだけ、優しいと思えや。
ジタバタ暴れるとりあえず聖女の首元にある、臭くて嫌な気をバチバチと撒き散らしているネックレスを右手で掴み、ブチッと引きちぎる。
「ちょっと!それは神様からもらったネックレスなのよ!返して!!」
こんな禍々しいネックレスくれる神様って何だよ。
零感商法の壺のほうがまだマシだわw
タダより怪しいモンは無いって、教わらなかったんか?意地汚いな。
アルラの記憶にあった封呪結界を四重発動して「命名:性女のネックレス」を問答無用で封印。
邪魔なのでレオーネさんに投げ渡しておく。
っつーか、邪魔なドレスだな!
デビュタントのドレスはイブニングドレスを基本とした形だろうが!
こんなヒラッヒラばいーん!とした、うっかり座ろうもんなら椅子から転げ落ちそうなドレスと違うんじゃい。
若干イライラしながら、空いたもう片方の右手でも髪の毛を根本から鷲掴んで頭をがっつりホールド!
ここから繰り出すフィニッシュムーブはアレで決まり!!
ドン・フ○イと死闘を繰り広げた、高○善廣のぉぉぉぉぉ
地獄のニーリフトォォォォォォォォ!!
血反吐吐きやがれっ、オラァァァ!
ドスッ!!と、鈍い音を響かせて土手っ腹にめり込む右膝…はヒラッヒラばいーん!なボリュームのドレスのせいで、とりあえず聖女の顔面をクリティカルヒット!
間髪入れずにそのまま仰向けに倒れたとりあえず聖女の両足を自分の両脇に抱え込むとすっくと立ち上がり、フィニッシュムーブのおかわり追加ぁ!!
東女の渡辺○詩選手並みのおぉぉぉぉ!
高速ジャイアントスイングぅぅぅぅぅぅ!!
ブオンブオンとスピードを増し回るジャイアントスイングの遠心力で、とりあえず聖女の身体は床と水平になる位まで浮き上がり、重装備のクソダサく趣味の悪いデザインのドレスはスカート部分が完全に捲れ上がり、下着丸出しの昭和の便所リ○チのような姿になっている。
そしてバッチリ見えてしまっているのは…時代に合わない、総レースの紐パンチュにガーターベルトって…え、何、ここはR-18設定なん?
股開きドロワーズじゃなくて心底良かったけどさぁ。っつーか、幼児体型に総レースの紐パンチュはアウトやろ。
手前には股開きドロワーズがお似合いじゃ、ボケ。
…やべっ、また笑い上戸スイッチ入りそうw
と思った瞬間、力が抜けたのかとりあえず聖女の両足が脇からすっぽ抜けて宙を舞い、教会関係者がいる席へと突き刺さっていった。
その姿はまるで八○墓村のスケ○ヨよりも酷く、勝負下着丸出しの姿を周囲に晒す。
ちょ、待って。ヒロイン補正何処行った?
どう考えても、乙女ゲームの神よりお笑いの、いや、リアクション芸の神に好かれているとしか思えねぇwww
うおぉ…誰かこのシナリオ知ってる転生者とかいてないかな?!謎が多過ぎる!
まぁ、でも…ここまでヒロインであるとりあえず聖女?性女?が進行上有り得ない状態になってるって事はさぁ
よくある【物語の強制力】って無くなったんじゃね?
良くも悪くも“私”という異分子がこの世界に介入した。
相手方にとってはまさかの事故試合になり、私からすればシナリオで決まり切った流れをぶった斬った【ブック破り】を決行。
いやぁ、これってブッカーや運営が乗り込んで来そうな流れじゃね??
渕みたいなポリスマンが来たら泣いちゃうよ?私。
現実世界(日本)の人がマジで乗り込んできたらビックリするけどな(笑)寧ろ連れて帰ってくれ。
カンカンカンカンカンカン!!!
思考をぶった斬るように、また何処からか高らかに、熱を込めた試合終了のゴングが鳴り響いた。
ふむ。
一応ではあるが、ゴングが鳴ったって事は試合終了したんだな。逆断罪は成った様子だし勝ち鬨でもあげるか。
しっかし、謎なゴングだな。
デウスエクスマキナ的な存在でもいてるんかね?
本来なら入場ポーズなんだけど、デウスエクスマキナ的な存在がマジでいてるなら、この演出もキマるはず!
くるりと広間を振り返り、私は両手を広げ天を仰ぐと
高い、高い広間の天井から降り注ぐたくさんのスポットライトと金色のドル紙幣、そして噴き上がる銀テープがライトを受けて眩く輝く。
そしてレインメーカーのテーマ曲が爆音で流れ、広間中が「わあぁぁぁぁ!!」と大歓声に包まれて揺れる。
「ア・ル・ラ!」
「ア・ル・ラ!」
のコールが上がる。
…今ならこれが『夢でした♪』って言われても信じるわ、私。
自分でやっといて何だが、有り得なくね?
そして貴族の皆様も何でノッてんだよ。知らないっしょ、プロレス。誰だ、腕カチ上げてノリノリでコールしてる奴ぁ。
ついでに警備してる騎士達よ、足踏みしながらリズム刻んでんじゃねぇ。仕事せえよ。
考えると意識が飛びそうになりながらも私はガブリエラの元へと歩き、にこりと笑いかけながら改めて報告する。
「ガブリエラ様、お待たせしました。今、逆断罪が終わりましたよ。さぁ、帰りましょう?」
「アルラ…私、胸が熱くて…私の代わりにこんな無理をさせてしまったけど…ありがとう…っ!」
目を潤ませ、泣くまいと少しだけ表情を歪ませながらもガブリエラは気持ちが高ぶったのか私を引き寄せて抱きついた。
うおぉ!女神の抱擁ぅぅぅ!!
柔らかい!良い香り!
尊みが過ぎる!!
イエス、ガブリエラ!ノータッチ!
ありがとうございます!!ご褒美です!
…そしてレオーネさんの視線がチクチク刺さるのは何故ですか?
同担?同担拒否なの?!
とりあえず騒ぎになる前に会場を去ろうとしたが、ガブリエラは腰が抜けて歩けないのでレオーネさんにお姫様抱っこをお願いし、3人で退場する事に。
私達が歩く先はざあっ!と人垣が割れ、まるで入退場の花道のようになっていて、両端の人々がワクワクした、少年のような顔つきで声援を叫ぶ。
未だ広間のボルテージは下がらず、「アルラコール」がまだ続いている。
もう止めて!何かがゴリゴリ削られるから!
広間の大扉に辿り着くと、興奮しながらも係の人が恭しく扉を開いてくれた。
私達は広間を振り返り、淑女らしくカーテシーで挨拶しながら馬鹿馬鹿しくも熱気に溢れた茶番劇の幕を閉じる。
「それでは皆様、御機嫌よう。」
ドン・フライと高山の壮絶なあの試合は未だ忘れられない試合です。
私の中で胸アツベスト3に入ってます( •̀ㅁ•́;)
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