第56話:【閑話】人を呪わば穴は呪った分だけ
第56話になります!
時系列としては、星が王宮の浄化をした日の前日である第44話の性女視点と行動になります。
それでは今回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
性女side
閉じ込められていた牢屋から脱出し、ナサニエル様と再会してから王宮を抜け出した私達は、アイザックとザカリー、ジェイデンを迎えに行った。
もちろん、逃げる前にお金や宝石なんかを持ち出したわよ。神から行けって言われた場所はこの国じゃないみたいだし、貧乏暮らしはしたくないしね。流石に宝物庫には行けなかったし鍵の外し方がわかんなかったから、持ち出せたのはナサニエルの所有物だけだったけど。
迎えに行くと、皆、部屋で監禁されたり牢に入れられたりしていて、見張りがつけられていたけど神から新しく与えられた力の前には無力よね♪そのまま倒れちゃった。モブのくせに邪魔すんじゃないわよ、ホントうざい。
アイザックとザカリー、ジェイデンにもお金や宝石を持ち出させ、最後にハーレイを迎えに商業ギルドに向かう。ハーレイは商業ギルド内によく寝泊まりしている事は前に聞いていたし、旅する為に必要な道具や通行証?とか馬車の手配もしてもらわなくちゃ!
商業ギルドに到着したはいいけれど、あの子がどこにいるのかわからないから、たまたま出てきたオッサンを捕まえてアタシの可愛いさを少ぉし発揮しながら「ねぇ、オジサマ?ハーレイ君はギルドにいらっしゃいますか」って聞いてみたのよ。
「ハーレイ?…ああ、ギルド長の子息か。あの子はギルドを除名されてここから去ったと聞いたが…君はあの騒ぎを聞いてないのかな?」
「あの騒ぎって、何の事よ」
「儂等にも聞こえてきているぞ。デビュタントボールで第一王子達がカンバネリス公爵家のご令嬢を独断で婚約破棄したってな」
チッ。庶民にまでもう伝わってんの?
「そして、公爵家のご令嬢とあのアンブロジア伯爵家のご令嬢にコテンパンにのめされたそうじゃないか!第一王子達も馬鹿な真似をしたもんだと皆話しているよ。いやぁ、是非見てみたかったもんだ」
夜だからか、小声で笑うオッサンに私は思わずキレた。
「うるせぇんだよオッサン!死ねよ!!」
そう言うとアタシは至近距離からオッサンに向けて力を使うとオッサンは白目を向いて崩れ落ちる。
「ロレッタ!声が大きい!ハーレイがいないなら馬車を奪っていかないと騎士達が追ってくる」
ナサニエルが後ろから抱きしめるように私を包み、口を手で塞ぐ。
このクソモブにもムカつくけど、ハーレイがもう追い出された事は完全に予想外よ!ちくしょう…公子様とのトゥルーエンドが迎えられないじゃない!!あのクソガキ…どこ行ったのよ。カネとコネしか能が無いくせに…っ!
アタシ達はギルドの裏手に回り、馬二頭と幌馬車を盗み出して荷物を積み込み、服も人数分パクってから静かに王都から抜け出した。
「やっぱギルドの馬使って正解だな。貴族の馬じゃ見た目も違うから捕まる所だったぜ」
ジェイデンの言う通り、王宮や屋敷の馬車は目立つし馬も立派だからバレやすいかも知れない。捕まったらまたあの暗くて汚い牢屋に入れられるとかまっぴらごめんよ。
幌付きの安くさいボロい馬車にガタゴトと揺られながら王都を離れる。
ナサニエル達に代わる代わる抱っこされたり支えられながら、私達は順調に進む。うふふ、ちゃあんと魅了もかけ直しておくのも忘れなかったわ?神の新たな力でかけたから、バッチリよ♪
昼近くになり、休憩を取る為に街道脇にあった湧き水や果物が生えている場所に立ち寄る。バキバキに固まった身体をぐっと伸ばし、顔を洗おうと湧き水に近寄ろうと歩き出したその時。
「ロレッタ、危ない!」
アイザックの叫び声にアタシは振り向くと、物凄い勢いで空から飛んできた黒いモノがアタシに命中する。
「…っく!うあああぁぁあぁぁぁぁ!!痛いっ!身体があっ…千切れるよぉぉぉぉ!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
何なのこれ!?何なのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
ハッハッと息を荒くし身体を丸く縮め、脂汗と涎を流し、必死に痛みに耐えながらもアタシには訳がわからなかった。
な、にが…起きた、の…?!
アイザックは顔を真っ青にしながら「こんな…こんな魔法は聞いた事も…見た事も無い…」とブツブツ言いながらつっ立っている。ナサニエルとザカリー、ジェイデンは「ロレッタ!ロレッタ!」とアタシの名前を呼びながら必死に身体を擦っているけど痛みは取れない。
ホント…役立たずよねぇ…っ、アンタ達は!
「なぁ、今のって…あの女の『呪い』じゃねえのか?」
ジェイデンがポツリとそんな言葉を零した。
「あの女とは…ガブリエラか!」
激昂したザカリーが叫ぶもアイザックが「いや、ガブリエラは優秀ではあるがこれは使えないだろう」と補足する。
「あの女の闇魔法は、教科書通りしか使えないはずだ。嫡男の方ならいざ知らず、な」
「では誰だと言うのだ!こんな真似をロレッタに仕出かすなど、殺してくれるわ!」
「可能性があるとするならば――――――
私達を力技で不意打ちした、アンブロジア伯爵家のあの令嬢だろう。」
「はぁ?!あの地味メガネブスが?」
ジェイデンの素っ頓狂な大声が鼓膜に、身体に響く。ホントうるさい…しゃべんなよお前。
「あの地味メガネ、そんなに成績良かったか?」
「アンブロジア家は魔法に優れているからな…使えたとしても不思議は無いし、あそこの奥方が魔導にも造詣が深いと聞く」
「血筋しか取り柄の無い醜女の分際で…ロレッタを苦しめるなど、万死に値するわ!!今すぐ殺してやる!」
「おい!落ち着けよ、ザカリー!今戻ったら俺達捕まっちまうし、ロレッタだってまだ苦しんでんだぞ?!」
ギャンギャンと騒ぐ駄犬達。
身体を引き裂くような痛みはやがて焼け付く様な、針で引っ掻かれる様な痛みへと変わり、背中を集中的に苛む。
あぁあぁぁぁ〜!痛いィィィィ!!
「魔導…に詳しいならば、この『呪い』にも説明はつかないか?」
ナサニエルはロレッタの手を握り締めながら、ハッとしたように言う。
「魔導はほぼ知られていませんし、あの家ならば可能かも知れません」
「ならば、王都に戻り次第アンブロジア伯爵家も一族皆処刑してやるか!伯爵家の分際で弁えもせず出しゃばりおって!」
「そんなアブネェ技術は無くしちまったほうが世の為だ!こんな人を苦しめるような真似は許さねぇ」
「ならば決まり、だな。ロレッタの遣いが終わり次第王都に戻り、カンバネリス公爵家とアンブロジア伯爵家は一族処刑し、財産は没収だ。」
「「「おう!」」」
汗まみれになり、苦痛に呻く私をナサニエルが馬車へ乗せ、神が指し示した西へと再び向かう。
それから小一時間程で痛みは嘘のように治まった。一体何だったのよ…。
途中、騎士達が巡回時に使う休憩小屋があったので鍵を壊して侵入し、そこでお風呂に入り、着替えて食料や武器などを根こそぎ奪い、また馬車に揺られる。
ふぅ…。
さっきの激痛はシャレになんない痛みだったわ。思い返してもムカついて仕方無い!身体もくまなくチェックして、異常が無かったから安心したけどあのモブス…っ、アンタはガブリエラ以上に惨めで悲惨な目に遭わせてやる!!
チクリ
っ…痛ったぁ!
何よ、今度は胸?おっぱいは痛くなかったから成長痛みたいなもんじゃないのが残念だけど、もう!何なのよ!!
「?ロレッタ、どうしたんだい?」
「ううん、何でもないよっ♪」
「さっきまで『呪い』で苦しめられたんだ、今は私の膝枕ですまないが休んだ方が良い」
「ありがとう…ナサニエル様。じゃ、少しだけ休むね?
あ、でも皆に何かあったら嫌だから、変な事あったらすぐ起こしてね?」
私はそう言って人好きのする笑顔でにぱっと笑う。
それを見た皆は「わかったよ、ロレッタ」と言ってだらしなく蕩けたような顔を見せる。
ホント、コイツ等ってばバカでチョロいわね♪
私達は静かに、着々と西の地へ向かって進む。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロレッタは知らない。
背中の痛みは『あちらの神』の力を借り、こちらの古代言語を使い古き神々の力を借りて齎された『永劫の罪咎人』の入れ墨を施された事を。
星によって追跡の仕込みが為された事を。
それは、ロレッタの『神』とは違う高次元の神の御力。
そして。己の『呪いの力』は全て自らへ反る事を。
ロレッタの神は知らない。
ロレッタが自分達の思惑と違い、闇堕ちした事を。
本当の神々と星が、自分達の愛し子に与えた『印』と『罰』を。
今はまだ、知らずとも。知る事も無い事であろうとも。
運命の糸は糸巻きから放たれ、紡がれてゆく。手繰られゆく先は果たして。
犬軍団はデビュタントボールで星から受けたダメージがデカ過ぎて、美少女のアルラの印象がトんでます(笑)
ロレッタが食らった黒いモノは、星がやった『呪い返し』です。生霊や妬み嫉みもちょっとした事で貰っちゃったり送っちゃったりしてしまうモノなので、こういうのは会社勤めの人より経営者の方のほうが敏感になったりしますね。
流石にリアルの呪いでは入れ墨は入りませんが、アザだったり黄疸だったり割とわかりやすく身体に出る事もあります。
以上、余談でした(*´ω`*)
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今回もお読みくださいましてありがとうございましたm(_ _)m
 




