第48話:訂正のタイミングは幸運の女神の前髪と似ている
第48話になります!
今回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
塩を回収しながら王宮入口まで戻ると、そこには公爵様とマ神様が何やら話し込んでいた。二人は私を確認すると、先ずはマ神様が「アリィィィィィィィ!!」アルラの名前を呼びながら突進し、抱擁してきた。
「おぎゃ――――――――!!」
令嬢としてはあるまじき声を上げながら勢いを殺し切れず、隊長さん牢番さんを巻き込んでゴロゴロとマ神様と共に転がり倒れる。
私と隊長さん、牢番さんのHPはゼロに近いくらいゴリッゴリに削られたわ。
魂抜けかけた私を更にガックンガックンと揺さぶりながらマ神様は「何故、何故私等を待たなかった、アリィィィ!」何かを振り絞るように訴えかけるが…ちょ、ホント止めて?もっと有り得ないモノがこみ上げてきてるか…らぁぁぁぁ!!ヤベッ、もう…吐くっ!
「伯爵、その辺で。アルラ嬢が大変な事になるよ?」
こ、うしゃ、く…様…ナイスっ!!
上がってきた酸っぱいモノを何とかギリ押しとどめ、ポーチに仕込んでいたポーションを一気に煽る。ミント強めのモヒート味が口の中から胃まで爽やかに清めてくれる。巻き添えを喰らった隊長さんや牢番さんを抱え起こして順にポーションを口へ突っ込むと程なく「ハッ!?」と意識を取り戻した。良かったよぉぉぉぉ、生きてて!まさかこんなんで死んだら死にきれないよね!!マジごめん!
「お父様っ!ご自分の身体能力をお考えなさいませっ!危うく貴重な人材が二人っ!二人もいなくなる所でしたのよ?!」
大事な事なので、二回言いました。
ゴリマッチョなマ神様のタックルは間違いなく身体強化無しでも軽トラ並みであろう。鹿はもちろん、クマすら屠る威力である。
…私、よく生きてたな…。
シュンと悄気るマ神様をよそに、公爵様が「アルラ嬢、ちょっといいかい?」と滑り込んでくる。
「はい、公爵様。如何いたしましたでしょう?」
「べ…聖女候補の魔力感知だが、君はどう見るかな?」
あー、そうゆう。
私が王宮で浄化してんのも聞き及んでるだろうし、魔力感知して呪い喰らった連中からも事情聴取してるだろうに。まぁ、確たる証拠が欲しいんだろうなぁ。
いけずやわぁ、公爵様。
「その件ですが、魔力感知をした魔法使いと教会関係者に被害が出まして。私も魔力感知と魔力残滓を調べましたが…
あれは魔力変質による闇堕ちです」
「「!?」」
公爵様とマ神様は目を見開き、酷く驚いている。そらそうだろうな。闇堕ちとかあんま無いらしいだけで前例はあるっぽいぞ。詳しい事は知らんけど、普通に考えるなら、教会の教義に則って己を律し神の力を借りて聖魔法を行使しなきゃならんのにまだ光魔法しか使えんのに闇堕ちだからなー。
ヒロイン補正があるとは言え、こりゃリカバリー出来ねぇんじゃね?こっちの神様の寛容度にもよるけどさ。
何とか風魔法を維持し、集めた浄化塩を引き寄せ公爵様とマ神様に見せる。
「ご覧下さい。こちらは聖女候補の魔力残滓を浄化するのに使った塩ですが、焦げ茶色に変質したものが邪気を吸った塩です。
砂糖とは違い、塩は熱を加えても燃えませんし変色もしません。そちらにいらっしゃる隊長さんと牢番さんが変色する瞬間を見ています。」
隊長さんと牢番さんは姿勢を正すと「はっ!目の前で確認しております」と証言する。
公爵様は顎をさすり、マ神様は腕組みをしながら僅かに唸る。
「ふむ…。光魔法の変質の定義は何だったかな?」
「『憎悪・呪詛・悪性』になります。そこのハゲ…教会関係者は闇魔法がどうのと喚いておりましたが、全くの別物ですね」
ここぞとばかりに私はズルムケ野郎をビシッと指さす。馬鹿野郎、逃がさねぇぞ?
「確かに。闇魔法の定義は悪ではないからね。そちらの教会関係者は魔法の基礎理論も存じないのかな?」
急に話を振られたズルムケ野郎はその脳みそ同様にツルンツルンの頭から滝のような脂汗をダラダラ流しつつ「それはっ…動揺して…」とか、つまんねぇ言い訳をしている。
「寧ろ私に向かって食って掛かっていましたから、本当にわかっておられないと思いますよ?教会では習わないのでしょうか」
「いいや、教会だからこそ学ぶ事である。闇魔法への迫害を率先して行わない為にもね」
ですよねー。闇魔法は便利だもの。精神系の魔法があるもんで異端視されやすいけど、迫害はお門違いだわ。
もうね、白魔法と黒魔法ってシンプルな言い方のほうが誤解を招かなくて良いんじゃないかな?“光”だの“闇”って表現するからダメなんであってさ。今回は変更すんのに良いタイミングだと思うよ。
公爵様は従僕に何かを言いつけて遣いに出す。
「それはそうとアルラ嬢。この塩は聖女の闇落ちの証拠になる。陛下と聖国への提出用に渡してもらいたいのだが」
「承知しました。否やはございませんのでどうぞ」
外の荷車に積まれていたままの箱に集めた浄化塩を変色したものだけを入れ、収納すると隊長さんが「では、荷車の返却がてらにこちらの箱をお運びしましょう」と買って出てくれた。
「腰をいわすといけませんので、牢番さんも一緒に運搬をお願い出来ませんか?」
どう見ても人ひとり分の重量あるからなー。隊長さん一人では辛かろうよ。牢番さんは驚きながらも「はっ、喜んで!」と答えてくれたけど、それ、どっかの居酒屋の返事だからな?!
多分イイコトあるだろうから、よろしく頼んだよお二人さん♪
「さて…事情を説明しなければならないし、アルラ嬢、王宮内の私の執務室で詳しく話を聞きたいのだが良いかね?」
…それって拒否権無いっすよね?
「私一人だと説得力に欠けるので謁見時に教会関係者や王宮魔法使い達を同席させたいのですが、よろしいでしょうか?
実際、あの性女の呪詛や邪気を喰らった被害者の証言も必要かと思われますし」
「うん、それは構わないよ。そうだね、どのような状況でこうなったかの説明は必要だね」
そう言うと公爵様は王宮入口で警備をしていた兵士を呼び、謁見の申請をするために先触れを頼むと兵士は素早く奥へ消えていく。
公爵様とマ神様に続いて再び王宮内へと踏み込む私。後ろには箱を載せた台車をカラカラと押す隊長さんと牢番さん、そして顔色の冴えない教会関係者達と対象的にウキウキとした表情の王宮魔法使い達。
多分、コイツ等さぁ…ド変態の同類か部下なんじゃね?同じ魔法バカの臭いがプンプンしやがる。幸いにもあのド変態は謹慎処分中であるので、ほんのちょっぴり安心してはいる。流石に王命を無視はしないだろうよ。
思ったよりも人数が増えたので、ミーティングルーム的な小会議室に変更し、メイドに頼んでお茶や茶菓子を給仕してもらい謁見の許可が出るまで待機に。
私達三人は小会議室の隅へ移動し、打ち合わせに入るとマ神様が魔道具を起動させ、音や声をシャットアウトした。
「ほう、便利なものだね伯爵」
「持ってきておいて正解でした。流石に我々だけで打ち合わせないとマズい事もありましょう」
「そうだね。特に星が行った事は魔法界や教会にも衝撃を与えそうだからねぇ。
さて、星。最初から説明してもらえるかな?」
こちらを向き、にこやかに微笑む公爵様とパッと見肉食獣のような笑顔を見せるマ神様。
うっへぇぇぇぇぇ…面倒臭ぇよぉぉぉぉ。
思わず吐息が森進○っぽくなるのを止められず、ダダ漏れしかけた魂をズルズルと私は回収し、説明を始めるのだった。
毎度タイトルを考えるのに難儀しております(^_^;)
他の方々はどうやって考え出しておられるのか…尊敬度数スゴいです。
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今回もお読みくださいましてありがとうございましたm(_ _)m




