第4話:○○、アウトー!
脳筋を沈めたから残りは5人か。
アルラの記憶によれば、色合いが地味な第一王子と脳筋の隣にいる粘着質っぽいオカッパがグラント宰相子息、反対側のナルシストっぽさに加え、そこはかとなくアホの子臭がするのがキャンベル公爵子息、隣のあざと小動物系腹黒M(推定)野郎…ゲフンゲフン、ちみっこが商業ギルド長子息ね。
…これが『乙女ゲーム』や『悪役令嬢モノ』と仮定しても、売れる気がしないのは何故かしらね。
お?ようやく脳内処理が終わったらしい犬軍団が、何か顔真っ赤にしてキャンキャン吠えていらっしゃる。どうでもいいけど。
「よくもジェイデンをやってくれたな!
アルラとやら、お前もそこの悪女と共に同じ罰を与えてやるっ!!」
そう言うやいなや、両側にいた宰相子息のアイザックと商業ギルド長子息ハーレイが杖を取り出し呪文の詠唱を始め、キャンベル公爵子息ザカリーが剣を抜き、こちらに向かってくる。
とりあえず、ザカリーからいっちょ殺りますか。
腰を更に落とし、掛けっぱなしの部分身体強化で足腰の筋肉をバネにして突進からの勢いを利用し、両足で踏み込んでからジャンプ!
ザカリーの頭上まで飛び上がってのぉぉぉ
ジム・ブラ○ゼルをお手本にした、芸術的ドロップキックを食らいやがれぇぇ!!
顔面に狙い通り突き刺さり、足裏から「メシャッ!」とひしゃげる感触が伝わる。
うん、鼻骨イッたな♪
「ぶげぇあぁぁぁ!」
大量の鼻血を撒き散らしながらザカリーは、悲鳴と共にそのまま魔法を放とうとしていたハーレイにぶつかり、巻き込みながら「ぎゃあぁぁぁ!」との悲鳴と共に後方へぶっ飛んでった。
ドロップキックを食らわせてから、武藤のように半身をひねってひらりと着地しつつ、横目でそれを確認する。
杖持ってるからさー、ハリ○タみたいに短詠唱で魔法ブッパしてくるのかと思ったらあんな長詠唱すんのね。
真言の大呪・中呪・小呪を思い出すわ。
そんな事を考えつつ、動揺しながらも発動を終えたアイザックが明らかにサイズ感おかしい火球をこっちに向けてきやがった!
いやいやいや、普通牽制程度だろうよ?アタマおかしいんか?!
周りからも
「きゃああぁぁ!」
「王宮で攻撃魔法など、馬鹿なのか?!」
「あれは不味い!食らったら我々まで死ぬぞ!!」
「逃げろ!」
悲鳴で広間が一瞬にして阿鼻叫喚に陥る。
ですよねー!
現地人が言うならそうなんだよねー!ガッデェェェム!!
マジ頭おかしいって。
全滅狙いなの!?
あんなん食らった日には私一人「上手に焼○ました~!」どころで済むかぁぁぁ!!
どう見積もっても「全の滅」か「虐の殺」やないか。
ガブリエラにも被害が及んでしまうのは、非っっっ常〜に不味い。
アルラ同様、絶対傷つけたくないし、未婚のご令嬢は傷やアザひとつが本人の瑕疵になりえるらしいから余計に。
何か無いかとアルラの記憶を魔法や魔術限定で手繰ると…
おん?あるじゃん。
勝ち確の決定打が。
「ア、アルラ、逃げなさい!貴女まで死んでしまうわ!!」
ガブリエラが私に向かって叫ぶ。
ありがとね。やっぱアルラの見立て通り、貴女は良い人だ。
大丈夫。貴女の友人を信じなさい、ガブリエラ。
ちっとも弱くなんかないよ、貴女の友人は。
貴女を守る、知識でいっぱいだ!
迫る火球に思わずニイッ、と犬歯が剥き出しになる程の凶悪な笑みが漏れる。
私はそのまま両手を差し出し、火球を受け止める。
『陣同時展開発動:抗魔法陣・飄風反結界』
ぬおおぉおぉぉあ?!
東京タ○ーのエレベーターを一気に下ったかのような感覚で、身体から何かがガッツリ抜けてく!
魔力操作、何となくでやっちゃダメかー。
とりあえず風の結界で閉じ込めた火球を真空とアンチマジックで消去!
科学常識だと、火は酸素を断ち切れば消えると知ってはいるが、魔法だとそれが適用されないと思ったので二段構えで対処してみたけど、正解だった模様。っしゃゴルァ!
周囲を見回し、ケガ人がいないか目視で確認。
よっし!誰もケガしてないな?
「アル、ラ…貴女…無事なのね?」
ガブリエラがビックリ眼でこっち見てるけど、腰が抜けたか安心したかで床にへたり込んでいる。
「はい、見ての通り無事にございます。ガブリエラ様。」
片膝をつき、目線を合わせながらにっこりと笑みを浮かべ、私はガブリエラを安心させる。
事実、私はダメージを負ってないし、火球を受け止めた絹のロンググローブも焦げや汚れ、変色ひとつ無い。
「あ、な…馬鹿な…」
アイザックが全身から汗を噴き出させ、信じられないものを見たかのように小刻みに震えながら、こちらを凝視している。
ん?何で?一般的なものじゃないのん?知らんけど。
手前さぁ…マジ殺す気でやりやがったな、この野郎。
今、ご希望通り処してやるからなぁぁぁぁ!
ドカンと噴き出した怒気や殺気を感じたのか、再度アイザックが詠唱を始めるが、遅ぇ!
詠唱を始めて直ぐにアイザックへと突進し、上空へと飛び上がる。
ザカリー《ナルシスト》へ食らわしたドロップキックを警戒したのか、頭を屈めて顔をガードしているが、同じ技をやるわけないじゃん。
「ひいぃぃぃ!!」
なんて叫んでるけど、叫ぶ暇があるなら避けるなりすればいいのにね。
「遅過ぎて欠伸が出るわ。」
おっと、心の声がつるりと出てしまったわ。
くるりと一回転しつつ右脚を伸ばし、アイザックの後頭部を狙いつつブチかますは
三○光晴をお手本にした、前方回転式カカト落としぃぃぃぃぃ!逝っとけやぁぁ、このボケェェェェ!!
ビチャッと頭頂の汗が飛び散ったと同時にガツッ!と響く鈍い音。
「がっ、は…!」とアイザックの声が聞こえたが知ったこっちゃない。
そのままカカトを振り抜き、アイザックの頭をゴツッ!と床に叩きつける。
衝撃で杖が折れたみたいなので、これで攻撃手段は無くなったな。罪状も山盛り稼いだし、よきよき。
返す刀で、鼻血塗れで気絶したままのザカリーをようやく押し退けたハーレイを処す為に、アイザックの後頭部を踏み台にして助走をつけてからのぉぉぉ
武藤○司の代名詞、シャイニングウィザード!!おらぁぁぁぁぁぁ!
体重が軽いので、代わりにスピードをプラスした上に捻りを加え、部分身体強化した膝でこめかみと耳の中間をバキャンッ!と打ち抜いた。
キメポーズはこれまた武藤のラブ♡ポーズまでちゃんとセットでやらなきゃコレは締まらない。
ラブ♡ポーズを決め、ご満悦な私を見て
「「「「「「……(ポカーン)……」」」」」」
会場中の静まり返りっぷりと、人生初の尋常じゃないダダ滑りに心臓と鼓膜が痛い。
あ、すんません、調子コキました。
ねぇ、ハーレイ。脳みそ揺れて、最っ高に気持ち悪いでしょ?暫くは思考能力もバランス感覚も機能しないから動けないよ?
傍らに落ちていた杖から魔石を抜いて、指弾で何処かへ飛ばしておこう。
反撃されたら堪らないしね。
さぁて。
手下共は片付けたぞ?
コキコキと首を鳴らしながら前方へと歩き、王子のいる方へ視線を合わせたら…
あれを産まれたての仔鹿っていうのかね?
こちらをガン見しながら、めっちゃくちゃガタガタ震えてた。
クラ○が立った、立ったわ~!
「なっ…学園でも上位成績者、だぞ、あの4人は…それを瞬殺するとは…」
え、マジで?あの程度でか。
学園って忖度天国だったっけ?それとも偏差値底辺なの?逆に興味湧くわ。
「な、ナサニエル様ぁ…あれ、アレはヤバいです…聖女の結界で防げませぇん…!」
でしょうね!
覇気や殺気、威圧を防ぐ方法なんて私も知らんし。いいとこ同じくぶつけて相殺しか出来ないでしょ。
何とか崇高な真実の愛(笑)は恐怖に飲まれていなかったのか、隣に居るゆるふわピンク頭を守ろうとはしていたけども。
このゆるふわピンクを上から下まで面接官のように、しっかりと認識した私は、ある事に気付いて顔を俯かせ、ふるふると震える。
別に強者の匂いを感じた訳では『決して』無い。
寧ろこのとりあえず聖女はクソ雑魚の部類だ。
実は、笑いを堪えるのに必死だったりする。
本当ならば、口の中も噛みつつ両太腿も抓り上げて堪えたい所だけど、流石にアルラの身体をそんな至極どうでもいい、くっだらない事で傷つけたくない。
故に己の腹筋と臀部をギュギュッと引き絞り、呼吸を浅くしながらこのシリアスなシチュエーションをぶち壊さないように「ひとり笑ってはいけ○い」という苦行モードに突入してしまっただけなのだ。
「…ん、ぶふっ…
ぐふっ…ぶくくくっ…ひひっ…」
あ、やっべ。
やっぱ笑い上戸には我慢、無理でした。
一度決壊した我慢はリカバリーできない。
罰で尻を吹き矢で狙われようが、バットでシバかれようが、腰振りオバチャンにキスされまくろうが、チ○コマッシーンで股間を打たれようが甘んじて受けよう!もう無理っす!!
我慢を捨てた私は、その場で大爆笑した。
閲覧下さり、誠にありがとうございますm(_ _)m
人生初のブックマークががが!Σ(゜Д゜)
ベタですが、眼鏡拭いてガン見、目薬挿してからガン見、頬にビンタしてからガン見、と三度見してしまいました…。
ビックリすると、ヒトってベタな事やるんですね(汗)
そっと手を合わせ、あなたに感謝をお伝えいたします。
ありがとうございます(T_T)
ちなみにドロップキックにするか、山崎選手のカミソリシュートにするか、最後まで悩みました(;´Д`)