第39話:真実の片鱗は何をもたらすか
第39話になります!
今回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
翌日、朝練の場に向かうとにこやかに出迎えたのはジェシーだった。
「星、おはようございます。僕も今日から修練に参加するのでよろしくお願いしますね」
思わず団長の方を向くと、サッと視線を逸らされた。オイコラ、こっち向けや。あ"ぁ"ん?
一緒にいたエル兄が「どうやら覗いていたようでな…騎士達が楽しそうに鍛錬していたから、自分もやりたい、と言い出して」と気まずそうに言うも別にエル兄が悪い訳じゃないからね?
「エルネスト兄様が悪い訳ではありませんのでお気になさらず。ジェシー、この修練はキツイですが大丈夫かしら?」
「大丈夫です!いざと言う時に動けなければ後悔すると星も言っていたではないですか」
あら、思ったより立派な答えが返ってきたわ。んじゃあ仕方無い。一緒にやりますか!…もちろんエル兄も一緒な?と言うとこちらも少しはヤル気だったらしく「勿論だ!」と返事が。
騎士達も萎縮する事無く昨日の様に修練し
、屋敷に戻ると家令から「ガブリエラ公女様とレオーネ様より朝一番で先触れが届いております」と手紙を渡された。
…早くね?そんな緊急の要件では無かったよね??
頭を軽く悩ませながらもひとっ風呂浴びて朝食を済ませるとガブリエラとレオーネが公爵家の馬車でやってきたので姐さんと一緒にお出迎え。「朝早くからお仕掛けて申し訳ございません」とお詫びしながら「これは伯爵家の皆様へ、こちらは使用人の皆さんへどうぞ」とレオーネさんが大量のお持たせを渡してきたので、使用人達が手分けして運搬。シエナが興奮して小声で教えてくれたが王都でも有名なお菓子とショコラらしい。「流石公爵家ですね!」と仏恥義理で褒めていた。
自室へと二人を案内するとガブリエラが「星、久し振りね!」と抱きついてきた。ぐふっ!!つ、強いですガブリエラさん。腰いわしてしまいます。んで朝から柔らか良い香りっすね。思わず顔がふにゃりと蕩けそうになっちゃう。
「ハイハイ、そこまでですよガブリエラ様。星がグニャリと折れてしまいますから」慣れた様子でレオーネにベリッと剥がされる。ちょ、襟首掴むの止めろ。「ぐえっ」と変な声出たやんかー!
「ガブリエラ様、ではなくてガブリエラって呼んで頂戴な、レオーネ」ぷうっとちょっと膨れながら不満を口にするガブリエラ。…クッソ可愛過ぎるだろ!!レオーネを見ろ、耳真っ赤でプルプルしとるがな。
プークスクスと噴き出しながら「だ、そうだよ?観念しなよレオーネ」私がそう言うと、ぐっと詰まりながらも「わ、わかりました…ガブリエラ」と何とか絞り出しながら口にするとガブリエラはパアッと花が咲くような笑顔で喜ぶ。
何これ。尊みが過ぎね?プライベートのガブリエラが尊過ぎる程可愛らしいっ!!私の中のメスゴリラが荒ぶりそうよ。
ハッ!いかんいかん。意識を戻さねば!
コホン、と咳払いをし「昨日手紙でお伝えした事についてですが…」と切り出すと、二人もハッとしてこちらに向き直る。「レオーネのアヴァロン入国の許可が出ました。これでこの三人で一緒にアヴァロンへ行く事が出来ます」と改めて報告する。
その時
「貴女がたに伝え忘れていた事があります」
カチャリとドアを開け、ババーン!と効果音がしそうな登場をぶちかましたのは姐さんだった。
「はっ…伯爵夫人っ!」ガブリエラとレオーネはワタワタと慌てるが、姐さんはそれを制し「ブリジットとお呼び下さいな、お二方」とニコリと微笑む。そうしてからティーテーブルの空き席に座ると切り出した。
「貴女がたのアヴァロン行きが決まった事は出国まで極秘事項として扱います。そして何故三人なのか、これを伝えたくてこちらにお邪魔させていただきました」
あー、極秘事項にしないとド変態やら犬軍団やら邪魔しそうな連中が集ってくるからかな。アヴァロンに行くってだけでも注目度バカ高だしおこぼれに与ろうってボンクラ共が大挙して押し寄せるよなぁ。んで、騒がれるのが一番厄介か。
「彼の国には『未来視』という能力を持つ者がおり、アヴァロン入国に際して審査の一端を担っています。その者が“可”の裁定を下した。これは貴女がた三人がアヴァロンで成すべき事がある、と言う事に他なりません」
ごくり、と二人の喉が鳴る。
「何を成すべきかは行ってからわかりますが…本来ならばアルラ、星だけが行くはずだったものが貴女がた二人にも許可が出た。『未来視』は簡単には“可”を出しません。恐らく、貴女がたの未来に関わる事を視たのでしょう。それも、国ひとつで済むような事態ではない事が」
でしょうね。
確信したわ。これはきっと―――――――
「ガブリエラ様、レオーネ様共にアルラ、星と同じく役目があるのでしょう。それはこの子が背負ったものと同等に厳しく、辛い事かも知れません…私も詳しい事は教えられていませんが『未来視』は乗り越えられない試練とは判断しなかった。だからこそ叔父様…王も貴女がたを招いたのです」
は?!ちょ、叔父様って国王かよぉぉぉぉぉぉ!!いや、冷静に考えれば姐さんはアヴァロンの公爵家?のお嬢だ。だとすれば血縁関係があってもおかしくない。はなっから決まってたな、こりゃ。製作の意図を遥かに超えたブックが存在してるわ。っつーか、私の手からかなり余る事態のような気がするんだけどね!
表情がスンッと抜けた私を見て姐さんは「星が言いたい事もわかるわ」と苦笑する。
「とりあえず、今は貴女がたが成すべき事を成しなさい。試験に受からなくて行けないなんて事が無いように、ね?あと星は騎士達の鍛錬と魔法の訓練もよ?」
扇子を口元に当て、うふふと笑ってっけどさぁ…姐さん、私だけ無理ゲー過ぎやしませんかね?社畜にも法に従って休む権利はあると思いまーす!過労死待ったなしっすよ、そのスケジュール。
「騎士達の鍛錬?星、是非教えて下さい!」
レオーネが前のめりにグイグイ来るので、シエナに修練場まで案内させると同時にグレーシー夫人が出来上がった可変式の制服を持ってきたとの知らせが。
何の事かとガブリエラが小首を傾げるが、状況を説明する前にグレーシー夫人とお針子が殴り込んできやがったよ!落ち着けや!!んで「あら?ガブリエラお嬢様、どうしてこちらに?」とか言い出してるし。ガブリエラ曰く、グレーシー夫人は懇意にしてるデザイナー兼クチュリエなんだそうだ。まさかのお得意様かい!
出来上がった制服を広げてチェック。学園の制服はあまり原型を崩さなければカスタムしてもオッケーなので、そこを利用して周りからガタガタ言わせないようにしたのだよ。しかもアルラは成績優秀ではあるが今までひっそり過ごしてきたので、そうそう注目も浴びまいて。
まだパチクリとした顔のガブリエラにグレーシー夫人が説明する。
「こちらはアルラ様の戦闘服でございます。学園内にてガブリエラ様をお守りする為にはスカートでは動けませんからね」
その説明にガブリエラは納得するも少し申し訳無さそうな表情をしながら「せ、アルラ…」と言いかけたところで「どうしてもスカートだと動けませんからね。本当ならあの馬鹿共をもっとガブリエラの苦痛の分はドツキ回して顔面パンパンに腫らして再起不能にしてやりたかったのですが」とカットイン。「まぁ、アルラったら」ガブリエラはクスクスと笑いながら表情を変化させた。
うん、ガブリエラは笑顔が一番よ。アルラもそう望んでいるからね?
またもやお針子軍団にデイドレスをひん剥かれ、着換えさせられる。アンダーバストレザーベストもばっちり装備。見えないように幅広のリボンでカバー。
ふむ、良いんじゃね?スカートが長過ぎるのは淑女として当然らしいが、こっちの感覚としちゃあ昭和のゴリッゴリのスケ番なんだよなー。スケ番○事とかセーラー服反逆○盟とか特攻○拓とかな?プリーツスカートだし丈がくるぶしまでだから余計にそう思うんよな。平民はふくらはぎ丈なんだってさ。そっちの方が良くね?
そしてっ!片手でウエストのバックルを外しスカートを瞬時に脱ぐ。うん、これも良いんじゃないかな。プリーツの幅を広めにしてラップスカート状にしたんだけど正解だった。しかも脱いだスカートは広げて目隠しなどにも使えるしね。もうひとつのパッと見プリーツスカートだけど実はワイドパンツも中々動きやすくて良き♪
ロングブーツは編み上げじゃないやつにしてみた。よく考えたらジッパーが無いのにロングの編み上げブーツなんて履くのも脱ぐのも拷問じゃん?ジッパーの代わりに良い塩梅に伸縮性があって耐久性もある魔物の革があったので、内張りにシルクとレース貼って仕上げたら履きやすいし脱ぎやすい!感動すら覚えたね。
パンツスタイルになった私を見てガブリエラは顔を上気させながら「素晴らしいわ、グレーシー夫人!流石のセンスね」と褒め称えるもグレーシー夫人は「こちらはアンブロジア伯爵夫人とアルラ様のデザインなのですよ、ガブリエラ様」と伝えるとガブリエラをじいっと見つめてから私を見、またガブリエラを見る。
「…ガブリエラ様、アルラ様とお揃いで同じものを作りませんこと?アルラ様、デザインを仕上げていただければ私からプレゼントさせていただきたく思います」
マジか。どうしたグレーシー夫人?!
「アルラ様のデザイン画をいただき、実際のアルラ様に試着していただいてからというもの、うちの工房のお針子達もテンションが爆上がりでして、えぇ!ペンも針も止まらないのですよ。私もインスピレーションが溢れ出しておりまして。そのお礼ですわ」
えぇ…それ、何かイイ薬キメちゃってませんかね?寝ないと美容に悪いよ??っつーか、ちゃんとメシも食ってるか?!
「まぁ!そうなのですね?夫人、お金はお支払いいたしますから、せ…アルラとお揃いの服を数着作りたいですわ!」
ちょ、ガブリエラ物欲爆発してね?!ドレスよりは安いが、それでも一流クチュリエの服よ?
「かしこまりました、ガブリエラ様。騎士服は先程の女性騎士の方の分も一緒にお作りになりますか?」
「いいわね!三人でお揃いなんて素敵だわ!」
テンションがブチ上がりまくった二人の会話は止まる事無く続けられ、レオーネを強制連行してくるまで延々と続けられるのだった。
今日は殊更暑かったですね…。
ガリガリ君が美味すぎる温度帯…まだ6月なんだけどなぁ。
皆様も体調を崩されたりしておりませんでしょうか?
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今回もお読みくださいましてありがとうございましたm(_ _)m




