第30話:ヒトの心と謎現象はひと言で語れない
第30話になります!
今回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
そんな私達の様子が微笑ましかったのか、皆の雰囲気や視線が生温かく、ほんわかしたものに変化し、姐さんや奥方様に「あらあら、三人はとても仲良しなのね♪」と言われてしまった。
彼方此方から「尊い」やら「天使3人組マジ推せる」やら「いや、ウチのお嬢様は女神だろ」なんて聞こえてくるが、ガブリエラが女神っつーのには同意するわ。
んで、誰だ「ハァハァ…カプどころか3Pもイケる」とか言うた奴。伯爵家に引き続き、新たな扉を開けんじゃねーよ。
危ねー奴も世界共通なん?
そんなほんわカオスな雰囲気に包まれていた玄関ポーチだが、公爵様のステッキを打ち鳴らす音で再度静寂が支配する。
「皆、今見てもらった映像が全てだ。
ガブリエラは不当に貶められたのであり、責任は第一王子とマリラ男爵令嬢、そして側近達にある。しかし本日、王は我等に謝罪し厳正な罰を下された!」
おおっ!と声が上がる。
「マリラ男爵令嬢については聖国の大聖女からの返答待ちになる。
ただ、こちらについては不穏な話もあり、再度ガブリエラに命の危険が起きる可能性が出てきた為、こちらにいるアルラ・エールー・アンブロジア伯爵令嬢とレオーネ・コルネイユ伯爵令嬢の力を借りて撃退したいと思う。」
私はもちゃもちゃになった髪のままカーテシーを、レオーネは騎士の礼を取り挨拶をする。
ちくしょう、カッコつかねーなぁ。
私達の挨拶を受けて公爵家の騎士団のひとりが声を上げた。
「割り込んで申し訳無い。私は公爵家騎士団副長のノックスと申す。
アルラ嬢、先程の戦い見事でございました。が、私は未だに信じられない。その小柄で細身の貴女様があのような戦いをしたとは…。
なので貴女様にここで手合わせを願いたい!」
辺りがまたざわりとざわめく。
うん、わからんでも無いけどね。
実際見てみないと信用出来ないってのは何処の業界でもあるし、ウチの業界でも新規のクライアントだと実地テストあるしな。
宗家の大切なお嬢様を任せるに値するのか、私の実力を試したいって気持ちは理解できる。
そして相手はガチの騎士だ。ヘッポコ見た目だけ騎士(候補)の脳筋とは違う。
うおぉ、マジ怖ぇぇぇい!!
けども…アントンも言ってるじゃないか。
「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」
私は若干アゴをしゃくらせながらそう言ってのける。
戦国時代に生まれた「常在戦場」と言う言葉にも通じる。それを私も今から身に、心に染み込ませないと悔しい思いどころか命を失う。
静かに、静かに。気取られない程度に気持ちを燃やす。
ゆっくりとガブリエラとレオーネに頷いてみせ、私は階段を降りてノックスと対峙する。戦いの場は騎士により囲まれ、周りに被害が出ないよう配置されていた。公爵家、騎士も優秀かよ。そしてランバージャックデスマッチっぽさが緊迫感をブチ上げる。
ペコリと礼をして構えをとる。
「アルラ・エールー・アンブロジア、参る」
来な、グリーンボーイ。教育マッチをしようじゃないか。
アントンの伝説の試合、異種格闘技戦だぜぇ?
「ご令嬢、素手で良いのか?」
ノックスが問いかけるも、西洋剣の振り方なんか知らねぇっての。日本刀があるなら是非使うけど、無ぇから素手でやるしか無ぇじゃん?!
分かっていて言ってんだろ、ド畜生め!!
「お気になさらず。手加減は不要ですので、思いっきりどうぞ?」
あのド変態のバカタレがドレスに鼻血を付けてくれやがったせいで、ガブリエラのデイドレスを寸法直して貸してもらった&こっちのがセミフォーマルなドレスより動きやすいからな。
また何処からか「カァーン!」とゴングが高らかに鳴り響いた。なんそれ!?
木剣を構え、ジリジリと間合いを詰めるノックス。
剣と素手じゃ間合い違うからねぇ。やり辛いっしょ?
とりあえず様子見で、ちょっと仕掛けますかっ!
身体強化を発動し、突撃と同時に右方向へフェイントを掛けながら故・橋本○也の水面蹴りを仕掛ける。
「ガンッ!」と音がして弁慶の泣き所に激痛が走った。
痛ってぇぇぇぇぇ!!コイツ、何でズボンの下にグリーブ装備してんだよ!反則だべ!?
私の反応を見て、うっすらニヤリと笑いやがったな、テメェこの野郎。
即座に体を回転させ、「ふっ!」と強めに身体強化を掛けながら亡きアンディ・フグの後ろ回し蹴りで踵を狙い、蹴る。重心が掛かっていた足元がグラつき体勢を崩すのを見て更に身体を捻り、膝裏にトゥーキックを叩き込む。
「ぐうっ!」と呻きながら木剣を振り下ろして来るも、そこから超低姿勢からのキ○ノンスパイクで横腹を蹴り上げ、間合いから離脱する。
こんにゃろ〜、グリーブ装備してるって事はガントレットも隠してやがんな、コイツ。ボディにも何仕込んでんだかわかんねぇし、とりま打撃は効かないのと遠慮は要らねぇって事は理解した。
「おおおおっ!」気合と共に斬り掛かって来るノックス。木剣だからか剣速が早ぇっ!
ひたすら回避回避回避っ!たまに捌くっ!
迫りくる連撃を紙一重でただただ躱し続ける。これ、実剣だったら風圧で小キズ出来てんじゃね?ウッホ、マジ怖ぇ!!
連撃の繋がりの無駄が無ぇんだよ。めっちゃ早ぇ。木剣だからってのもあるだろうが、ちゃんと修練してきた奴のソレだ。型はあるんだろうけども、実戦踏んで昇華させてないとここまでの斬る軌道は描けない。
両手使わないと捌けねーとかドコの剣豪だ?!パリィも受け流しも出来ないとかマジ糞ゲーなんだけどっ!
しかしながら…いいねぇ!このヒリヒリする感じ!!久々に味わう感覚だが堪らん。ムカついてたんだけども楽しくなってきたっ☆
これなら、アレやってもいいよね♪
バックステップで距離を取り、そのままノックスへ突撃する。と見せかけて横をすり抜けつつ「そこの騎士っ!両掌を組んで前へ出せっ!」と叫ぶ。
「は、はいっ!」と何人かの騎士が掌を組んで前へ差し出す。刹那、その掌に足をかけ、私は宙へと舞い上がる。
「断罪の天使…」
何処からか声がしたが、別に断罪しないよ?ボマイェはするけどね☆
舞い上がった体勢から、デイドレスと髪の毛を軽やかに翻し「うらぁぁぁっ!」と気合を込めた、これまた亡きハヤブ○をリスペクトしたフライングニールキックをお見舞いするも上手い事剣の腹も使われてガードされる。
すかさず反対側へ突撃し、同じく騎士に掌を組んで出させ、また宙へ舞い上がるとリコシ○のダブルローテーションムーンサルトプレスの変形版を仕掛ける。
本家の技は抱え込み二回宙返りを繰り出すので破壊力抜群な技だが、発動するまでの時間がおっそろしくかかるので結構な確率で防がれちゃうんだけど、これならタイムロス無しでイケるもんね♪
異世界ブラーヴォ!
やってみたかったんだよ、ルチャ・リブレのファイトスタイル。今はそれの真似事だけども、いやぁマジ楽し~い♪
ノックスも即座に対応し、上空への突きを繰り出してきたがそれを蹴って弾き、そのまま落下しながら鳩尾をトゥーキックで蹴って体勢を崩してから左腕で首を抱え、右腕でノックスの左腕をロックし重心を低くしてギロチンチョークを極める。
ホントは両足で胴体も締めながら極めたいんだけどスカートだから無理!&破廉恥だと大説教を食らう事確実なので今回はナシ。今だって下乳当たってノックスの肩に乗っかってんだからバレたらヤベェんだよ。
「がっ…ごオッ…!」と呻き声が聞こえるが、これ苦しいよね〜。令嬢の細腕がスルリと首に巻き付いてピンポイントに頸動脈締めるからキくんだわ。
私はギロチンチョークを極めながら、鳩尾にドスッ!ドスッ!と膝蹴りも叩き込む。「うわぁ…」とか「エゲツなっ!」やら聞こえるが知ったこっちゃない。こっちゃあ不利なハンデ戦やってんだボケェ!
やがてノックスの身体から力が抜け、だらりと脱力する。
うん、オチたな。
ロックを外すとノックスの身体は床にドシャリと沈んだ。
同時にまたもや「カンカンカンカンカンカン!」と試合終了のゴングが鳴り響き、周りがざわつく。
ついつい棚橋のように片腕を上げて人差し指を天に向けると銀テープが下から発射され、キラキラと宙を舞う。
…いや、マジ法則がわからん。
コレの演出法則はどうなってんの??
歓声と驚愕、動揺の声が行き交う中、ノックスを座らせ、「ふんっ!」と背後から柔道で習わされた気付けを行って意識を戻す。
「…ハッ!」お、意識戻ったか。久々にやったからちょっと心配だったのよネー。これで戻んなかったら色々考えてたけどさ。
「俺は、負けた…のか?」少し朦朧としながら問いかけてきたので「気絶によるTKOで負けですね」と答える。
「ははっ…そうか…」とガックリするノックスだったが、こちらに向き直り、両拳を床につけると語気を強めながら言う。
「頼む…っ!ウチのお嬢様を、ガブリエラ様をお守りしてくれっ!!貴女の力なら…任せられる…っ!」
その言葉に使用人達と騎士達が一斉に頭を垂れる。
むっちゃくちゃ愛されてんじゃん、ガブリエラ。お互いに良い使用人に恵まれたね♪
ガブリエラは感極まったのかほろほろと涙を流し、レオーネはそんなガブリエラの頭を撫でて「素敵な人達に囲まれていますね」と気持ちを落ち着けている。ちょ、今すぐそこ変われやレオーネ。
オイシイとこばっか攫ってくなぁ、お前ぇぇぇ!
「頭をお上げ下さいな」そう言うとノックスは頭を上げ、私を見上げる。
「私とレオーネさんだけでは、とても守り切れません。守り切れない、この公爵家の事は貴方がたカンバネリス公爵家の使用人、騎士の皆様にお願いしたく思います。
私達だけでなく、皆様もガブリエラ様の剣であり盾、お守りする同志なのですよ?」
言い切ってニコリと微笑むと、ハッとしたように使用人達や騎士達の顔が変わる。
ようやく思い至ったか。
そうなのだ。
ぶっちゃけ四六時中守るのは無理な話である。一応、私やレオーネにも貴族令嬢としての生活もあるし、周りの貴族派閥の目もある。面倒臭い事に。
警備の面に関しては勝手知ったる公爵家の面々にお任せした方が効率が良いし、問題も起きないので私達が表立って立ち回る必要が無い。勿論、警備に対して陰ながら支援はするけどな。
一番重要なのは「公爵家の使用人、騎士としての責務を果たさせる」、これなのよ。
この手合わせは私の実力を見る為に仕組まれたモンであろう。ただ、実力見たから「ハイ、そうですか」とはいかないのがヒトの気持ちである。
使用人としての、騎士としての矜持や尊厳を傷付けない為にも、今の私の発言は必要だったのだ。
かな〜りオブラートで包みまくってみたが、私等に任せっきりにすんな!手前等の縄張りの中では手前等がキッチリ守れ!仕事せぇや!!って事を気付かせる事こそが本当の目的だったんじゃね?
ぬぅ、上手く使われた気がしないでもないわぁ〜。
釈然としないまま、ノックスを始め公爵家の使用人達や騎士達に次々挨拶や激励をこれでもか!と受けた私は、生まれて初めて表情筋が攣る事態に見舞われたのだった。
プロレス用語☆
●グリーンボーイ→初心者、デビューしたての新人の事。
●教育マッチ→試合の何たるかを教える為の試合。
キャノンスパ○クは某格闘ゲームの技ですが、中々使えるんじゃないかと思っています。
そして!とうとう30話ですっ(≧▽≦)
本人が一番驚いておりますが、完結までプロットが出来上がっておりますので、どうぞお付き合いいただけますと幸いです♪
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今回もお読みくださいましてありがとうございましたm(_ _)m




