第19話:その頃の犬軍団〜その1
第19話になります!
犬軍団の話を挟んでみました。
よろしくお願い致しますm(_ _)m
品高き馬鹿side
うっ…ここは…。
痛みと冷たさを感じて目覚めると、自室のベッドに寝ているのだと暫く経ってから気付く。
私は…何故寝ているのだ?
部屋は薄暗く、サイドテーブルにある灯りだけが心許なく控え目に辺りを照らしているのみ。
枕元から滑り落ちた、冷たさの元が指先に触れ、感覚がゆっくりとではあるが戻ってくる。
こ、れは、氷嚢か?
私は…熱でも出したのか?
いや、そこまで無理をしなくとも、執務も学園の自治会も忙しくはなかった筈だ。
…何、が…あったのだ…?
頭が…熱い。
ズキズキ痛んで仕方無い。
思わず額に手を当てるも…熱は、無い。
頭だけではない。
首も、肩も、熱を持ち、パンパンに張っているかのように痛む。
何だ…?
痛みの発生元は、頭頂部??
何故、そんな場所が…。
張りと痛みで上がらない腕を、堪えながら頭頂部に手を当てる。
その、瞬間。
指に触れたのは…ブヨブヨと生き物のように脈打つ、熱を持った特大の“たんこぶ”。
「いっだあぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!?」
あまりの痛みと、たんこぶの衝撃に私はまた意識を失った。
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駆け付けた侍女side
今日の私は運悪く、寝ずの番担当を命ぜられた。
何故なら、意識を失った第一王子殿下の容態の観察と目覚めた時のお世話があるからだ。
って言うか、何で意識を失ったのだろう?
寝ずの番は基本、護衛騎士と侍女、メイドのトリオで行われる。何故かと言えば、何か『間違い』があっては困るし、連絡役が一人いなければならない為だ。
でも、それは国王陛下夫妻の為だけのシフトなんだけども…今回は何やら訳アリなんだそう。
本日は第2王子殿下の側付きだったので、私は全くその事情を知らないのよね。
一緒に待機していた護衛騎士のガイルとメイドのアナに聞いてみた。
二人は顔を見合わせ、「ププッ」と軽く噴き出すと、「それは…残念だった、な…プッ…あれは見ものだったぞ?…ククッ」
ガイルが口元を抑え、笑いを堪えながら言う。
アナも「ホントよね~!アレを見れなかっただなんて滅茶苦茶後悔するわよ?間違い無く伝説になるわ!」を顔をニヨニヨさせながら言う。
だーかーらー、その中身を教えなさいっての!
笑いを堪えつつ話してくれた内容は…衝撃的としか言いようのない事だった。
まさか公衆の面前で、婚約破棄?!
しかもよく連れて来ていた、ピンク令嬢と婚約?
王妃にする??
え、馬鹿なの?阿呆なの?
王太子でもないのに王妃にする発言は国家反逆罪レベルよ?やっぱり馬鹿なのね。
殿下なのに知らない…訳ないもの。
木っ端貴族の私だって知ってる事を、よりによってデビュタントボールでやらかす?
他国の来賓もいらしてるのに、恥晒しも甚だしい。
こりゃ殿下、終わったわね。
いや、でも、それだけって言っては失礼だけど、婚約破棄だけでこの二人が笑う??
婚約破棄って葬儀と同様に笑えないわよね?
「いやー、それがさ、ガブリエラ様を守ろうと乱入してきた令嬢がいてな。その令嬢が一人で殿下と側近達を叩きのめしたんだよ。」
え?令嬢が一人で彼奴等を叩きのめした?
嘘でしょ??
耳詰まったかしら、私。
「ホントなんだよー!小さくて可愛らしい子だったんだけど、デビュタントの白いドレスのまま蹴ったり飛んだり、空中でクルクル〜って回転したり、すごく綺麗だったぁ~♪」
は?蹴った?飛んだ?ドレスで?!
ドレスってそんな動き出来るかしら。
「あのおかっぱ野郎の火魔法は、ウチらも巻き込まれるの確実な位の大きさで“ヤバい、死ぬ!”って思ったけど、あれを消しちゃったんですよ?!スゴくないですか?先輩っ」
死ぬほどの火魔法を出した馬鹿もいたの?
しかもそれを消した?!
あり得ない!!どんな高度な魔法制御技術を持っているのよ!賢者なの?!
「殿下がよく連れていた、あのピンク頭の令嬢も最後に叩きのめされてたけど…あれは凄かったな。結界を拳で連打して叩き壊してから顔面に膝蹴り食らわして…ブホッ、足掴んでグルグル振り回して…」
「ですよねー!スカートぜぇんぶ捲れ上がって、似合わない総レースのパンツ丸出しで…足おっ広げて座席に刺さってそのまんま…ヤバい、爆笑する…ウヒっ」
二人揃って必死に笑いを堪えている。
アナに至っては我慢しすぎてシャックリ起きてるじゃないの。
シュガーポットから一匙砂糖を掬い、アナの口へ放り込む。
何か、ついてけないわ…。
でも、殿下の自業自得でこの状況になったのだけは理解したわ。
陛下が中座した時を狙っての、筆頭公爵家令嬢との婚約破棄を独断でやらかすだけでも大事なのに、たったひとりのか弱いご令嬢に叩きのめされるなんて…婿の貰い手すら無いわ。
あ、あの男爵令嬢いるからいいのかしら。
寧ろ、ガブリエラ様は破棄されて良かったのではないかしらね。
あの殿下、根に持つタイプで面倒臭い気がするのよ。
私なら絶対ゴメンな地雷物件だから、リボンかけて贈られたら焼却炉に迷わず持っていくわ。
お手当が付くから臨時当番はオイシイけど、まさかこんな頭の痛い、愉快な出来事が起きていようとは。
まだ信じられないけれど、直に見てみたかったわ。
ガイルはその後、「戦利品、いや、記念品よ〜♪」と言ってアナに見せられたキラキラした紙とテープを見せられ、割と本気で悔しがっていた。
…だから何故。
テープに書かれてあったのは、丸い奇妙な紋様がふたつとアンブロジア伯爵家の家紋に“アルラ・エールー・アンブロジア”の名前。
成程、かの断罪令嬢はアルラ・エールー・アンブロジア様と仰るのね。
どんなご令嬢なのかしら。
少し、ほんの少しだけ芽生えた興味に気分が浮き立つ。
そんな事を考えていたら、殿下の寝室から
「いっだあぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁ!?」
気品もへったくれもない、だっさい絶叫が響き渡った。
見てくれだけは麗しい、ウ○コ漏らしの殿下に出来た、特大のタンコブ姿を思い出してニヤニヤしながらアナと寝室へ入った。
タンコブ、グッジョブ!
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脳筋side
何故だ…何故こうなった!?
予定通り、他国の重鎮や教会関係者も集まるデビュタントボールで愛しのロレッタを国一番幸せにするべく、あの性悪女のガブリエラを断罪し、婚約破棄させた筈が…
俺のほうが牢に入れられているだと?
婚約破棄までは上手くいっていた。
だが、アイツ…アイツが乱入してくるとは思わねえだろ!?
同じ学園生で、成績上位者らしいが正直印象が無い。
俺達の前に飛び出してきたと思ったら、親父もかくやと思う程の一喝で俺達を罵倒してきやがった。
小さく可憐な見た目とは全く異なる、覇気と怒気に満ちた視線とその姿を侮った。
俺は頭に血が昇って、持ち込んでいた剣を抜いて斬り掛かったらアイツは
「正当防衛ィィィ!」
って叫びやがった。
馬鹿なのか?
何が正当防衛だ。
これは正義の下に行われる罰だ!!
振り下ろした剣を素手で弾かれ、そのまま手首を掴まれた俺の腹にアイツは容赦無く蹴りを放った。
か弱い女の蹴りだと思っていた。
それがどうだ!
鍛えるのが難しい、下腹部をピンポイントで狙ってきやがったんだ!!
重い、重い蹴りにヒールが刺さって威力を増す。
モロに食らった俺はぶっ飛ばされ、床に転がる。
立ちたかった。でも、立てなかった。
蹴りを食らった下腹部だけじゃない、腰も!背中も!○○も!激痛が走って下半身に力が入らない。
そして…あり得ない事に少し、漏らした…。
痛みに呻きながら回復を待っていると、広間が騒がしくなったが、あの性悪女とアイツ、それに帝国の女騎士がにこやかに笑っていた!
何故笑ってる?!テメエは婚約破棄された惨めな女だろうが!!
何故周りから称賛されてんだよっ!!
おかしいだろうが!
憎々しげに奴等が去るのを見ているしか出来なかった。
ロレッタ、ロレッタは無事なんだろうか?
カツコツと重々しい靴音が近付き、顔を上げると顔を真っ赤にし、憤怒の表情をした親父が側に立って俺を睨む。そして徐ろに胸元を掴み俺を立たせると「この…恥晒しがっ!!」と渾身の拳を見舞う。
脳が揺さぶられ、まともに立てず再び床に転がる俺をチラッと見てから騎士達に「逃げぬよう、ギリギリに縛って牢に入れておけ。」と言って去る。
俺は恥晒しなんて事はしていない!
恥晒しはあの性悪女だ!
俺は正義を成しただけだ!
惚れた女一人幸せに出来なくて、何が騎士だ!!
牢へ放りこまれ、そう叫ぶも誰も来やしない。
俺達を邪魔したアイツ等も牢へ入れられるだろうと思っても、来る気配はない。
くそっ!くそっ、くそっ!!
ここぞとばかりに公爵家の権力を使いやがって!
ロレッタ…無事でいてくれ…っ!
品高き馬鹿は脳天打ってます&人生初のタンコブ発生で頭ぼんやり状態になっています(^_^;)
タンコブ、痛いですよね…。あの脈動する感じは本当にヘコみます。
脳筋は全く反省してないですネー。
だ っ て 脳 筋 だ も の☆
間に合えばもう1本投稿出来る…かも。
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