第18話:何度目かのやり取りと第一次伯爵家○○会の始まり
第18話になります!
今回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
伯爵家では、使用人達はどうしても外せない当番の者以外は主人の晩餐前に自分達の夕食を終えている。
なので、当番の者の食事が終了するのを待って使用人、騎士全員に招集をかけた。
ホンット〜〜に申し訳ない。
エガちゃんの如く、土下寝で平謝りしたい気持ちを抑え、ホールへと向かった。
ホールは既に全員集まっていて、騒ぐ事も無く私達を待っていた。
私達は2階から1階に繋がる階段の踊り場まで進むと、伯爵かホールに響き渡る声で話し始めた。
「皆、突然の招集すまない。もう知っている者もいるかと思うが昨日、王宮でのデビュタントボールにて、第一王子殿下がカンバネリス公爵家令嬢へと婚約破棄を叩きつけた。」
やはり、と言う声と馬鹿な、と言う声、様々な声があちらこちらから上がる。
「それで、だ。その一部始終を皆に見て貰いたいと思っている。
…ブリジット、映像を。」
「はい、旦那様。」
そう言って姐さんは、さっきまで琥珀糖を食べていた精霊を掌に乗るサイズのキューブへと入れ、魔法陣を展開させると…
目の前に、半透過スクリーンのようなものが出現し、もうひとつのキューブからは風魔法で拡声された音声が流れる。
映像と音声は別々の仕様なのか。初めて知ったわ。
皆は真剣に画面を見ている。
端々に「何て事を…」や「正気か?」など聞こえてくるし、「馬鹿なのか?」とか言った奴、ちょっと友達になりたいわ。
騎士達は直立不動のまま、拳を握りしめて震えている。
んで、ここからが問題。
私の乱入&大乱闘のシーンな。
先ずは私の一喝からどうぞ。
「何してくれてんだ、この、○○○○野郎共がっっっ!!!」
「「「「「「「「は(え)??」」」」」」」」
おぉ〜、スゲぃな!全員の声がハモったぜ(笑)
そしてチラリと写ってしまった、泡吹いた伯爵のカットが。
あの家令ですら、めっちゃポカーンとしとるわ。
そっか、話は聞いたけど映像や音声としては見てなかったんだな。
ドレスを翻しながら、犬軍団を次々と闘魂丸出しにプロレス技で駆逐していく私の姿に、いたたまれない位の沈黙がホール全体を支配している。
何人かは「やっちまえ!お嬢様ぁぁぁ!」と歓声が飛んでいる。
おっ、わかる?良い感性してんな、そこのグループ。
さっきまで怒りに震えていた騎士達も、今は放心状態からちょっと気色ばんだ興奮状態っぽい感じになって、映像をガン見している。
品高き馬鹿をDDTで沈めた後のウ○コ垂れ恥ずかしポーズ後の、性女戦が一番盛り上がる。
淡々と、ドン・フ○イのように結界を殴り
つけ、粉々に破壊した後でニーリフトで顔面破壊からのジャイアントスイングでパンツ丸出しの大股開きスケ○ヨポーズで失神には、まさかの大爆笑がホールを支配した。
ノリの良い、あのグループは酸欠寸前まで爆笑しているし。
…一緒に酒飲みてぇ連中だな、マジで。
映像の最後、レオーネさんにお姫様抱っこされたガブリエラと共に割れた人垣を静々と歩き、ふり返ってカーテシーをして扉が閉まるシーンでは…意味不明な大歓声が起きたよ…。
「お嬢様、カッケェェェェ!」
「いつものお嬢様と違うお嬢様が混在していてギャップに痺れますぅぅぅ!」
「素敵っ…尊いわぁ…」
「あの場にいて、一緒にコールしたかった…っ!」
「血湧き肉躍る戦いでしたな…無手でも立ち向かい、縦横無尽に動き回りつつ的確に仕留めに行くなど、やはりアンブロジア伯爵家のご令嬢だ」
何か…色々感想があちこちで交わされてるな、うん。そして誰だ、新しい扉を開けそうになってる奴ぁ。
まあ、それほど犬軍団と性女がやらかした事に憤ってたって事ね。
…伯爵と家令が同じ様な表情で無になってんだが。
ひとしきり、ホールが沸いた所で何とか意識が戻ってきた伯爵と家令はパンパンと手を打つと、「皆、静粛に。今見てもらったのが昨日の婚約破棄騒動の顛末だ。で、だ。」
ゴホン、と咳払いをひとつ。
「ガブリエラ様を救おうと、ひとり奮闘したのがここにいる我が天使、アルラである。が、実は問題が発生した。
ここにいるアルラは…精神が入れ替わっている。」
…
……
はあぁぁあぁぁぁあぁ!?
ホール中に全員の絶叫が建物を揺らすほど響いた。
イヤー、ざわり、どころでは無くまさか絶叫とはねー。
鼓膜痛い。ライヴのスピーカー側にいる時みたいな感じね。
少し頭がくわんくわんするが、大丈夫。
認めてもらえるかわからんけれど、説明責任はしっかり果たさねば。
私は、前に二歩ほど歩み出てカーテシーで礼をする。
「皆様、伯爵様の仰った事は真実にございます。私は―――――――――
ガブリエラ様が、断罪されるのを阻止しようとアルラが立ち塞がった時に、アルラの願いを叶える為に入れ替わった…異世界の精神で、名を星と申します。」
打って変わって、静まりかえるホールにただ私の声だけが響く。
「先程の映像を見ていただいて、お分かりになった方が殆どだと思います。
皆様が知る、アルラとは全くかけ離れている、と。
本来ならば…私は、ガブリエラ様への断罪を阻止した後で、またアルラと入れ替わる予定でした。しかし、それは成されなかった。
何故か?それはまだガブリエラ様の危機が去っていない事の証明でもあります。」
誰かの喉が、ゴクリ、と鳴った。
「此度の騒動は、欲をかいた聖女候補のロレッタ・マリラ男爵令嬢が企んだ事ですが、彼女の目的のひとつが“ガブリエラ様の公衆の面前での処刑か惨めな死”です。
ガブリエラ様を敬愛し、友人としても仲の良いアルラはそれがどうしても許せなかった。
私との入れ替わりが起きなかった、と言う事はロレッタ・マリラ男爵令嬢は目的を諦めていないと言う事でもあります。」
どこからか「おいたわしや…」やら「あの穏やかなお嬢様がそこまで…」、「マジで聖女なのか?その男爵令嬢は」とか言いながら、グスッとすすり泣く声もしてきたな。
「ガブリエラ様を本当の意味でお救いし、ロレッタ・マリラ男爵令嬢の野望を木っ端微塵に粉砕し、塵も残さず葬り去る為にアルラと私は手を組みました。
彼女は今も、この身体に宿り…願いが叶うのを待っています。私は彼女と入れ替わり、ご家族に…貴方方にお返しする為にも…少しだけ、ほんの少しだけでいい、手を貸していただきたい。」
そう言って、私は深々と頭を下げる。
長い、長い沈黙。
「星、様、よろしいでしょうか?」
沈黙を破り、掛けられた声に私は頭を上げて声のしたほうを見てみると、先程大爆笑していたグループからだった。
「私の事は星、とお呼びくださいませ。
何をお聞きになりたいのでしょうか?」
「今、ここで私共に知らせた、と言う事はお館様方もご存知なんですよね?」
「そうです。一番先に知らせねばならないご家族ですから。やはり皆様と同じ様な反応でしたが納得していただけました。…まぁ、奥方様には即見破られましたが。」
苦笑いしながら私は答える。
「ならば、私共もお館様のご意思に従うまでです。貴女がお嬢様の願いを叶える事を約束されたのなら、我々使用人一同、協力させていただきます。」
「我等、アンブロジア伯爵家の騎士達も忘れるなよ?トーマス。」
ガシャン!と鞘の腹を叩きながら、騎士達がニヤリと笑う。
あいつはトーマスって言うのか。
「あの近接技は見たことが無かったし、是非教えを請いたいな。あれが異世界の技であるなら、我等はもっと強くなる」
ウチの騎士達よ、バトルジャンキーなん?
「それに、見栄えがするからか実際はエゲツない技を食らわせてるんだが、それを感じさせない…芸術性?あー、何て言うんだろうな、とにかく目を奪われる。」
「だよな!ムカつく殿下達が一発で沈んでいく姿、めっちゃくちゃスッキリしたよな〜!」
うん。不敬罪!とか言われても敬う所が塵ほども無いよね!
寧ろ、ダッセェwってプークスクスされるわ。
「公爵家の方々も煮えくり返っている気持ちも少しはスッとしたのではないかしら?
あの男爵令嬢の姿…ククッ、全く聖女らしくなくて…あの姿を会場の皆様が見ていらしたんですよね…あれで公女様に張り合おうとしたとか…ブフッ、有り得ませんよね。」
最初っから毛ほども敵うところなんか無いっすよ、性女には。
異世界チートもやってないからなー。
あぁ。この屋敷の使用人達と騎士達の懐と関係性は深いなぁ。
アルラを大事に思ってるのが沁みるほど伝わってくる。
主の愛娘ってだけじゃない、築いてきた信頼関係もあるんだ。
だからこそ、私は早く返さなければ。
アルラを無事に返す事で、私も受けた恩の一部を返せるだろう。
「ありがとう…ありがとう、ございますっ!
必ずや、無事に…早く貴方方にアルラをお返しすると、お約束致します。」
再度、私はさっきよりも深々と頭を下げる。
頭を下げ続ける私に、伯爵やエルネスト兄、姐さんとジェシーが寄り添い、肩や背中に手を置く。
「星、頭をお上げなさいな。皆、貴方に協力してくれるそうよ?」
姐さんに促され、頭を上げると…片膝をつき、綺麗に臣下の礼を取る使用人達と騎士達が。
「さぁ、皆、お立ちなさい。この星が異世界からの精神である事、アルラと入れ替わっている事を知るのはカンバネリス公爵家の皆様と私達しかおりません。
他言は無用に願います。」
「「「「「「「「御意に!」」」」」」」」
うおぅ、何か壮観だなぁ…。
姐さんスゲェ。
改めてこの最悪な夢物語は終わらせないと駄目だわ。
姐さんは続けざまにパンパンと手を叩き「さ、次は星が作った異世界の菓子があるわよ〜!シエナ、準備を。」
切り換え早ぁ!!
シエナは小走りに近い速さで移動し、カラカラとカートを押して戻ってきた。
カートに山盛りになった串刺しのビッグマシュマロにこれまた大量のアイシングクッキーもどきとラッピング済みの琥珀糖。
「星、どんどん配りなさいな。」
姐さんに背中を押され、階下まで降りた私は串刺しのマシュマロを手に取り、火魔法でいい塩梅に焼いていく。
焼けたものをシエナがクッキーもどきでサンドし、琥珀糖と共に手渡していく。
一様に困惑した顔をした使用人達だったが、「そのままパクッと食べるのよ?」と姐さんからのひと言で次々と食べ始めた。
「んっ!アチアチっ!!あ、でももっちり甘くてウマっ!」
「ギモーヴより歯応えがあって、手軽に食べられるのが良いわね、これ。デコレーションも可愛いわ!」
「甘過ぎない菓子もいいな。これはコーヒーと一緒に楽しみたい」
「こっちの包み紙のお菓子、宝石みたい…食べるのが勿体無いわ…」
「噛んだら口の中で溶けて消えてくなんて…上品な味と見た目の菓子は初めて!」
概ね、高評価で安心したわ。
隣にいるシエナや姐さんに「喜んでいただけたようで良かったです」と笑いかける。
菓子は定期的に作っても良いかも知れんな。
既存の菓子を料理長に聞く必要はあるけども、利益になると思うので出来ればやっておきたい。
心のメモにゴリゴリ書いていると、姐さんが突然私の顔を両手で挟み、グリン!と自分のほうへ向けた。
ギャアアアァァァアァァアァ!!
つ、攣るっ…首、攣るからぁぁ!
目を見開き、表情を引き攣らせた私の目を見て姐さんが言う。
「星…いえ、アルラかしら?貴女、瞳の色が混ざっているわ…」
はい?
今、何て??
使用人達は伯爵のことを「お館様」と呼んでいます。
旦那様呼びは家令や姐さんと被ってしまう、と言う理由です。
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