第17話:福利厚生は手厚いのがイイネ!
第17話になります!
今回もよろしくお願いしますm(_ _)m
またもや波乱のタネをブッ込んでしまったらしい私は、帰宅したらお説教が待っているようだ。
ご無体っ!!
…親切心がめっちゃ仇になりました(泣)
そもそも報告していれば済む問題だったんだけど、呪符書いたり何だりってのは日常だったし別に誰に言う必要も無く今まで来たもんだから…ねぇ。
ってか、私言ったよな?!私の世界の魔術的なモンがあるってよォ!10:0で私が悪いんか?!と言いたい所もあるんだが…
自分が保護対象だって事をきれーいサッパリ忘れてました☆
報連相、大事。
喜んでもらってるからええやん!では済まないですよね、ハイ。
でもなー、お説教食らってるのが惜しい程やらなきゃならん事が沢山で、フローチャート作ってこなして行かないと間に合わなさそうなんだよぉぉぉぉぉぉ!!
盗んだバイクで逃げ出したい…。盗まなくても愛機あるけどな。現実世界に(泣)
アヴァロン行ったら、もしかして作れたりしねぇかなぁ。
心の中で、ゴロゴロ転がりながら駄々こねてみた。
…実際にやったら、更に怒られるじゃん。
帰宅したら、うちの使用人達への説明もあったんだわ。やることいっぱいだなー、アハハハハ☆
せめて、使用人達に配る予定の菓子は作らせて欲しい。それで是非ストレス解消したいわ、切実に。
この世界には無いようなモノを作れば、証明にもなるやろし。
よし…夕方はそれをこなそう!
公爵様と伯爵の話も一段落し、纏まった様子なのと時間的にも晩餐に近くなったので、お暇する事に。
不審者についても後日報告をいただける事になった。
公爵家の玄関ホールを通り、車寄せへ到着すると見送りにいらした公爵家の皆様へと感謝の言葉を述べ、伯爵から馬車へ乗り込む。
姐さんとジェシーが乗り込んだ時に、「アルラ、いえ、星、少しよろしいかしら?」とガブリエラに呼び止められた。
「如何いたしました?ガブリエラ様。」
「あの、ね…不審者を倒してくれたでしょう?それで、貴女の手袋が汚れてしまったのではないかと思って…」
背後からススッと歩み出た、被弾仲間の侍女さんが銀のトレイに乗せられたショートグローブをガブリエラに差し出す。
ガブリエラは私の手袋を脱がすと手を取り、真新しいショートグローブを渡してきた。
うおぉあぁぁ!時間よ、止まれぇぇぇ!!
気遣い!気遣いの鬼か、ガブリエラ!
尊みレベルが天元突破してるぜ!!
「お礼、と言うには全然足りないけれど…受け取ってくれる?」
おずおずと言うのがまた可愛い辛い!
デレの部分がっ!ヤバ可愛よぅ~。
「っ!勿論です!ガブリエラ様から頂いた、このグローブ…大切にいたしますね。」
やっべぇ…感極まるわ、こんなん。
星って呼んでくれた事も、めっちゃ嬉しい…。アルラもこんな気持ちだったんだろうな。わかりみが過ぎる。
ついでに撫でくりたい。
そっとガブリエラの手を取り、きゅっと握るだけに留めておこう。
温かな体温がグローブ越しに伝わってくる。
「ガブリエラ、名残惜しいのはわかるけど、明日も会えるんだ。今日はこの辺で終わりにしないと謁見に差し支えるよ?」
公爵様のカットインが入り、私達は手を離し距離を取る。
「ガブリエラ様、グローブをありがとうございました…アルラも、私も大変嬉しゅうございます。
それでは、また明日に。」
グローブを持った右手を胸に当て、左手でスカートを摘む変則的なカーテシーで改めて礼をし、私は馬車へ乗り込む。
エルネスト兄も乗り込んだ所で、馬車は車寄せからゆるりと離れ、伯爵家へと戻っていった。
程なくして、伯爵家に無事到着。
疲れた。マジで疲れた…。メシ食ってそのまま寝たい位にはごっそり気力を使ったわ。
接待とはまた違うけど、格上のやり手でしかもお貴族様の話し合いにブッ込まれるのはマジで神経も気力も体力すらもすり減るね!
フラフラと馬車から降り、シエナに連れられて部屋へと戻り、デイドレスから部屋着に着替え、髪を解いて緩く結い、サイドに流すとようやくひと息吐いた。
「お嬢様、大分お疲れの様子ですね。公爵家ではそんなに緊張なさいました?」
シエナはくすりと微笑みながら、気遣うような事を言う。
「えぇ…緊張がもの凄かったわ。筆頭公爵家ですもの。失礼があってはいけないし。
あ、シエナ、少し確認を取ってほしいのだけど、いいかしら?」
「何でしょう?」
「厨房にね、確認をお願いしたいの。忙しいのは分かっているのだけど、厨房の隅を借りたいの。」
「…何故、とお聞きしても?」
「必要だから、としか言えないわ。邪魔も手も要りませんから、材料と道具だけお願いしたいと言付けてくれると助かるわ。」
微妙な顔をしたシエナに、お願いね?と微笑んで部屋から退出させる。
この世界、時代考証がしっちゃかめっちゃかで今までみっちり学んだ知識や雑学がほぼ役に立たないのだ。おのれ、クソ制作め。あんな色鮮やかで、ねっちり柔らかいバタークリームがサンドされてるマカロンなんか、20世紀にようやく開発されたんだぞ?
とりあえず見たことない菓子で、短時間で作れて手掴みで食べられるモンは…
ベイクドマロウ(焼きマシュマロサンド)と琥珀糖…かな。
使用人って肉体労働だから、糖分は必要だろうし、見た目にも楽しければテンションもブチ上がるよね。
洗い物や汚れも少ないし、目の前で作れるし、ちゃちゃっと魔法込みで作れるからコレで行こう、うん。
厨房の使用許可が降り、地下にある厨房までシエナに案内されながら到着。
どエライ勢いで挨拶と心配された。
うん、すまん。令嬢が厨房に入る事態が異常だもんな。追加で厨房用に一品作るから許してほしい。
必要な機材と食材を料理長に伝え、用意してもらう。
晩餐の準備もあるから、手伝いは要らないと固辞し、渋々諦めてもらった。
シエナから侍女用のエプロンを借りて着用し、手を洗い、作業に取り掛かる。
…何でグラニュー糖や片栗粉があんだよ。
ゼラチンはあると思ってたけど、何かマジでしっちゃかめっちゃか具合に脱力するわ〜。
まずはマシュマロを作る所から行きますか!
湯を沸かし、弱火にしてゼラチンと砂糖を溶かし混ぜる。
シエナにマシュマロを固める為の焼型に片栗粉を入れて窪みを作ってもらう。こればっかりは数が多いんで頑張ってほしい。
ゼラチンと砂糖が完全に溶けきったら火を止めて、今度はメレンゲ作り。
大きいボウルにメレンゲを投入し、風魔法を使いながら泡立てる。途中、砂糖を投入し、滑らかに、泡が細かくなるよう更に泡立てたら適度に冷めたゼラチンと砂糖が溶けたお湯を2回に分けて混ぜ、バニラエッセンスも加えて軽く混ぜる。
片栗粉を入れた型に艶々のマシュマロ生地を注ぎ、暫く放置。
固まったら、片栗粉を満遍なくまぶし、はたき落としたら完成!
生マシュマロだとボリューム出ないから、今回はベーシックなマシュマロにしてみたけど良かったかも知れん。
次に琥珀糖ね。
寒天は無いかと料理長に聞いたら、出てきたのは謎物体だった…。
試しにお湯で溶かし、固めて食べてみたらしっかりした食感と口の中でホロホロと崩れる舌触りがまんま寒天だったので、それを粉々に粉砕し、使う事に。
…独自進化しててマジ良かった…っ!
まずは色々な食紅と型に張り付き防止のクッキングシートをセットしたものを用意。それからお湯に粉砕した謎物体を投入し、完全に溶かしたら弱火にし砂糖と香料の酒を投入して固まらないよう、焦げ付かないようにくるくる混ぜる。
手応えが少し出てきたら固まり具合をチェック。
木べらから少しトロリと垂れる感じになったら火を止め、型に流し込み、気泡が出ていたらプチプチと串で潰し、食紅をちょんちょんと配置したらまたもや串でマーブル模様になるように静〜かに混ぜる。
この色の配色でセンスが出るよ!食紅は入れすぎると透明感が出ないから注意。
水魔法と風魔法で即席の氷魔法を作り、型を冷やし固める。
固まったら風魔法を使い、1日経った状態まで乾燥させる。
個人的には、作って1日〜2日目の琥珀糖のほうが好きなんよね。あの「シャリッ」とした歯ごたえが丁度良い塩梅だと思う。
パントリーからパクって…ゲフン、分けてもらったクッキーとビスケットの中間みたいなブツに、琥珀糖で余った食紅を使ったアイシングをつくり、クッキーもどきの上に気まぐれに絵を描いていく。アイシングの乾燥を待ちつつ、怪訝そうな顔をしたシエナや料理長達の口に、琥珀糖の切れ端を
放り込んでいく。
私もついでにひとつパクっと♪
シャリ感が堪んねぇな、オイ!んで、ほんのり鼻から抜けてくラム酒っぽい香りも良いね。
「アルラ様…これ、食べられるのですね…甘くて、シャリシャリの歯応えと宝石の様な見た目。新しいお菓子ですよ!」
シエナと料理長達が琥珀糖を見て騒ぎ出す。
琥珀糖は見たこと無かったか。
それは僥倖。私の証明のひとつになるだろうな。
皆に配る前より先に、伯爵達に配らないと姐さんにまた説教食らってしまうので、それを確保。
晩餐終わりのティータイムに披露するとしますか。
家族用に確保したら、琥珀糖をクッキングシートで一握り分ずつ包装し、配りやすく準備。
マシュマロは長い串にブスブス刺して、焼きやすいよう、外しやすいようにしておく。
これでいいか。
エプロンを外し、手を洗ってから厨房の皆に礼を言い、配膳係達と共に食堂に向かう。
ノックをし、シエナに扉を開けてもらってから遅れてきた詫びを。
「遅れまして申し訳ございません。」
「丁度良かったのではないか?と、言うより…何故配膳係と一緒なのだ??」
「この後の説明会に必要な菓子を作っておりましたので…厨房の隅をお借りさせていただきました。」
「「「「…菓子?」」」」
ぬ〜、そうなるか。
令嬢は厨房には入らないし、ましてや料理や菓子なんて作らないだろう。
「説明は食べながら致しますので、先ずは食事を楽しみませんか?」
促すと、美味しそうな香りを漂わせる晩餐に手を付け始める。
公爵家のご飯も美味しかったけど、今日の伯爵家の晩ご飯もうまうまです♪
小カブのサラダも美味しいし、くったりするまで焼いたトマトが付け合せに付いたフィレのグリルも満足。
バランス良い食事は身体を作るぅ〜。
何か言いたそうな家族を尻目に、温かいうちに温かいご飯を食べる!が信条の私はモリモリと堪能してました。
御馳走様でした!
食べ終わり、食器が下げられると食後の紅茶が淹れられる。
タイミングを見計らい、シエナに預かってもらっていた菓子を渡してもらい、皆に配る。
先ずは火魔法でマシュマロを炙り、焦げ目がついたらアイシングでデコったクッキーもどきの間に挟む、を家族分と家令、シエナの分まで作り、琥珀糖を包んだものと一緒に手渡した。
見たことが無かったのだろう。
皆が一様に「?」みたいな顔になる。
とりあえず、ベイクドマロウは熱たてが一番美味いので、それを食してもらう。
サクッ。
「「「「「「!!」」」」」」
手で食べるのはお行儀が悪いかも知れんけど、これはそーゆう菓子で、キャンパー御用達でもあるので、醍醐味として受け入れてほしい。
クッキーもどきのサクサクな食感に、炙ったマシュマロの甘さと香ばしさ、もっちり食感と今まで無かった菓子に、価値観をぶん殴られている家族達と家令にシエナ。
更に琥珀糖でド肝を抜かれると良い!
「次の菓子は、私の国でお持たせや贈答にも使われる伝統ある菓子です。」
一斉に包み紙が開けられると、そこには
色とりどりの、宝石にも似た見た目も美しい菓子とは思えぬモノが。
暫し凝視したまま、誰も口を開かない。が、ジェシーがぽつりと
「美しい…菓子ですね…星。これも星が作ったのですか?」
疑問だったのだろう、そう言う。
そこにシエナが「全てアルラ様の手作りにございます。間近で見ておりましたが、手際良く作っておられました。」と証言してくれた。
ナイス、シエナ!
っつか、食えや。
ひとつ摘んでジェシーの口に放りこみ、そのまま口を手で抑える。
…何だろう、デジャヴ。
モゴモゴ言いながら抵抗するも、シャクシャク音がして、ゴックンと飲み込んだのがわかった。
「!これは…初めて食べる味ですね!シャリシャリした食感も楽しいですし、うっすら果実の味がして、鼻から抜ける香りも良いです。
目でも楽しめるなんて、素敵な菓子です、星!」
目をキラキラさせ、見た目と食感、香りを楽しみながらモグモグ食べるジェシー。
そうであろう、そうであろう。
更に言うなら腹持ちも良いのだよ?寒天ならな。
腕組みしながらうんうん頷いていると、ジェシーと味見したシエナ以外の面々も食べ始めた。
「見た目の美しさは本物の宝石に匹敵しながらもそれを味わう事も出来るとは…貴婦人どころか、こぞって買い求める姿が目に浮かぶな、これは…」
「父上、それ以外にも、この菓子は茶を選びませんよ。茶の味を邪魔しない菓子は求める人も多いですよ。それに指が汚れないのも良いですし、男でも好む味ですね」
「このような菓子が存在するなんて…宝石みたいに綺麗で精霊や妖精が喜びそうね。…あら、精霊ちゃん、欲しいの?おひとつどうそ。」
ふわっと現れた羽を生やした丸い光が、姐さんから琥珀糖を受け取るとシャリシャリ食べ始めた。
食うねや…。
「この菓子で、私が異世界人だって皆さんに解ってもらえるか作ってみましたが、大丈夫なようですね。」
と言うと、またもや微妙そうな顔をされた。解せぬ。
「それだけの為に作ったのか?この素晴らしい菓子を。」
「それもありますが、日頃の感謝も込めて、ですかね?菓子は疲労回復にも役立ちますので。今回の菓子は材料費も高くないですから、福利厚生の一環としても良いかな~と。」
「…よぉく、わかった。」
だからため息吐いてコメカミを抑えんなってば伯爵。
ハ ゲ ち ゃ う ぞ?
家令を見てみな?めっちゃ楽しみながら堪能してんぞ?
あれくらいでいーんだって。
なにはともあれ、これで準備は整った。
さぁ、説明会が始まるぞ。
原因がわからないですが、何故か今回だけ難産でした…(;´Д`)
心がささくれ立っていると乱れるのは、共通事項なんだなぁと再認識。
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