第15話:公爵家、激おこ。
第15話になります!
今回も、よろしくお願い致しますm(_ _)m
コツコツと馬車の小窓がノックされ、家令が「カンバネリス公爵家へ到着しました。」と知らせる。
いよいよっすね。
まぁ、私よりも伯爵の方が大変なんだけど、当主って事で頑張れ♪
段々顔色が悪くなってるだけで、胃とか痛んだりしてないのが地味にスゲェと思うわ。
ってか公爵家のタウンハウス、でっか!
広っ!!え、タウンハウスでコレ?カントリーハウスはどんな規模なんだ…。文字通り要塞じゃないだろうな?
離宮とか言われても納得するレベルの豪華さとだだっ広さに度肝抜かれそう。
公爵家の車寄せに到着し、伯爵から順番に降りると、
「ようこそいらっしゃいました、アンブロジア伯爵家の皆様。昼餐の支度が整いますまでサロンにてお待ち下さるよう、旦那様より申し付けられておりますので、ご案内いたします。」
ロマンスグレーなおじさま家令と思わしき人の挨拶に伯爵が「よろしく頼む」と言うとサロンまで案内される。
職業病なのか、ついつい癖でインテリアとか見てしまうんだけどさぁ…マジパネェよ、公爵家。
多分、来客によって調度品は変えてあるんだと思うけどそれ以外のインテリアもヤバい。
この屋敷全部が博物館、美術館レベルといっても過言じゃないわ。金額考えただけで震える。
サロンに到着し、扉を開けてもらい中に入ると公爵家ご家族様とレオーネさん、レオーネさんの侍女らしきお姉さんがソファから立ち上がるのが見えた。
公爵様はにこやかな笑顔を浮かべて立ち上がり、「アンブロジア伯爵、よく来てくれた」と握手を交わす。
伯爵も握手をしながら「お招きにあずかり光栄です、カンバネリス公爵」と略式礼で返礼。私達も其々に礼を。
うち、格下だし礼儀は大事よね。
ガブリエラは嬉しそうに私に寄ってくるとギュッと抱擁し
「アルラ…昨日はありがとう…!私、今でも信じられなくて…っ」
「ガブリエラ様、貴女様がご無事なのが一番なのですよ?でなければ、ここにいらっしゃる皆様がこんなに笑顔ではいられなかったのですから」
私もそっと、ガブリエラの背に腕を回して抱き締め返す。
ウッホ!昨日とは違う、イイ香りー!
やらかい!細っそい!美少女の尊みが過ぎるぅぅぅ!!
そして髪の毛を下ろした姿もファビュラス!
感極まったのか、涙を浮かべるガブリエラの目尻を拭いながら、私は煩悩を無理くり捩じ伏せつつ柔らかく笑いかける。
美少女ふたりの尊みが過ぎて、もはや神々しさしかない!
誰か、誰かカメラをー!!
と、思ったら「はいはい、話が進みませんのでその辺で。」と、ガブリエラはレオーネさんに、私は姐さんによってベリッと引き剥がされた。ちくせう。
「仲が良くて何よりだ。」
クスクスとイケオジ公爵様が笑いつつ、皆に着席を促す。
「さて。本日、皆を昼餐に招いたのは昨日の馬鹿げた騒ぎについてだが…本日、陛下より招集命令が出たのだ。」
やはり、と言うか何と言うか。
そうなるよねー。
品高き馬鹿の製造元だし途中仕込みでいなくなって、出てきたらムチュコたんは垂直落下DDT食らって恥ずかしノックアウトポーズで撃沈してんだもん(笑)
思い出し笑いを堪えてたら、姐さんに横っ腹を肘でどつかれた。アバラ痛ぇ。
「ガブリエラとの騒ぎの内容についての聴取であることは明白なのだが、その…アルラ・エールー嬢についても聞きたいと、そう言っている。」
でしょうねー。
ノーマークのぼっち令嬢があんな事したらそうもなるし、証拠も目撃者も残しまくってきたからなぁ。
まあ、そうは言っても信じられないのはわかる。
伯爵はため息を吐いてから私を見る。それに頷き返すと公爵様を見据えて「発言よろしいでしょうか?」と許可を求めた。
「伯爵、この場は私的なものだ。許可は要らないよ?」
「有り難く。そして、その件について、皆様にお知らせしなければならない事がございます。まずはこちらをお目通しいただきたく。」
そう言って昨日の話し合いについて書かれた報告書を配る。
紅茶をいただきながら、アンブロジア伯爵家以外の面々が読み終わるのを待ちますか。
紅茶、美味しいなぁ。ルピ○アの横浜ブレンドに似た香りと味に懐かしさがこみ上げる。
まだこっち来てから1日も経ってないんだけどね。
昼餐前なのでお茶請けは無いけど、のんびり紅茶を楽しんでいたら
「なっ…!?」
「えぇ?!」
「はぁ?!」
色々な声が聞こえたかと思ったら、何でか皆さんこちらをガン見していらっしゃる。
うん、この反応も慣れたもんよ。
こちとらアルラと一緒に腹括ってんだ。
伯爵は重々しい表情を作りながら口を開く。
「仰りたい事はわかりますが…真実です。でなければ魔力の質の変化も我が天…ゴフッ、失礼、娘アルラの言動や行動の説明もつきません。
そして、こちらの星は異世界の知識を有しておりますので、証明するのは易き事でございます。」
「「「「「……………。」」」」」
その沈黙は何だろうか。
ボソリと「だから男前な行動と言動だったのか…」って呟くの止めて、レオーネさん。私、戸籍も性別も女やし。
んで伯爵よ、アンタ「我が天使」って言いかけたな。
まだショック引き摺ってんのか。
しゃーない。補足すっか。
「カンバネリス公爵家の皆様方、レオーネ様、改めましてご挨拶申し上げます。異世界人の星と申します。
入れ替わりに関しましては、神の見えざる手が働いたとしか言えません。
ただ、私個人の感情から言わせていただきますと、悲劇を避ける為にもあの場を潰し、更なる衝撃を以て上書きする必要がありましたので動いた次第です。」
神の見えざる手というのは本来の使い方とは違うけど、何となくニュアンスで察しておいてね〜。
背筋を伸ばし、しっかりと前を見据えながら、話を続ける。
「にわかには信じられない事とは存じますが…
報告書にも書かれてありますようにこの世界、もしくは国は私のいた世界にある数多くの物語のひとつだと思います。
その物語は“悪役令嬢”が己の婚約者である“王太子または王子”に近付く“聖女”を虐め、追い込むが“聖女”との交流を経て“真実の愛”に目覚めた“王太子・王子”やその側近達によって断罪され、国外追放や死罪になる、というものです。
私がアルラと入れ替わり、意識を覚醒させた時に見たシチュエーションは、まさしくそれを実現していました。
ただし。それは実現していても結果は出せなかった。
何故なら、あの時食ってかかってきた聖女が言っていた通り、物語には出ていないはずのアルラと私がいたからです。」
ここまで言い切った私は周りの反応を見る。
微っっっ妙〜な面してんな、うん。わかるけどね。いきなりこの世界は物語でーす☆なんて言われて「はいそうですか。」とは納得できんわな。
その時、ガブリエラが思い出したように「そういえば…学園で何度かあの男爵令嬢に言われたわ、“悪役令嬢のくせに”って。」と呟いた。
あの性女。んな事をガブリエラに言うたんか。尻にホウキでも挿しておきゃ良かったな。
「悪役令嬢…その言葉はこの世界にありませんよね?」
「えぇ。私も本は読むけれど、一度も見た事は無いわ。貴方はどう?」
ガブリエラに尋ねられた侍女も読書家なのだろう。記憶を辿るように暫し黙考した後で「私も存じません。少なくとも読んだ恋愛小説には無かった言葉です。」と答えた。
「悪役、と言うように物語として考えれば役割を与えられているのです。
あの男爵令嬢が第一王子を始め側近達やまだ出てきていない人物達に愛され、王妃となりハッピーエンドを迎える健気で元気な(笑)キャラクターという役割を与えられたように。
恐らく、学園でもガブリエラ様はやってもいない事をやったと他の生徒に指摘されたり、タイミング良くクソビッチ…ゲフン、男爵令嬢と遭遇してこちらが悪くなるよう仕掛けられたり、避けても強制的に状況が悪くなるような中におられたのではないでしょうか?
私はガブリエラ様に課せられた、その縛りを壊したかったのです。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」と公爵様が手を上げる。
「何故ガブリエラが断罪されなければならないのだ?そもそも王家の影や護衛がいるから、記録は残るはずだろう。」
「そこは品高き馬鹿…ゲフン、第一王子とその側近達、男爵令嬢の浅知恵でしょう。報告も握り潰せば良い、と考えていたと思います。何せ、この国でも有数の権力と身分保持者達が揃っておりますから。
男爵令嬢の願望は『王妃となり、攻略対象の男達に愛され、贅沢三昧して暮らす事』です。
その為にガブリエラ様の断罪と処刑は必要だったのでしょう。ガブリエラ様は人望もあり、美しく賢いですから性女が持ち得ないものが妬ましかったのかと。
見た限り、あの男爵令嬢は頭悪そうですし、第一王子としても陛下が一時退席なさるタイミングでやらかしておりますから、一気に事を運んでめでたし♪で事後報告とすれば良いと思ったのでしょうね。
貴族の恐ろしさやルール、権力の何たるかを知らない、実に愚かな思考です。」
御伽噺を信じる子供のようで可愛らしい脳みそですよね☆と付け加えてにっこり微笑む。
「更に補足するなら、あのクソビッチ…男爵令嬢はガブリエラ様の処刑や悲惨な状況を望んでおりましたから、まぁ…多少手酷く処し…お仕置きさせていただきました。」
そもそもあの馬鹿に王妃なんて超無理ゲーだべ。
あっちとこっちの学力底辺で悪知恵しか働かないって、チンピラにも劣るわ。
「物語の強制力…ハッピーエンドまで話を進める力と言うのは恐ろしいもので、役割を与えられた者はそれを全うするまで終われないのです。」
ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえる。
それでも私は話さなければならない。
「ガブリエラ様が婚約破棄をされた事、また私が派手に潰し回った事で、物語の強制力は無くなったものと私は考えております。
一時的にですが、ガブリエラ様の危機は去った、と。」
「一時的に、とはどういう意味なのだ?」
あ、公爵様、そこ気になりますよね。
「本来ならば私は、あの巫山戯た断罪劇を潰した後アルラと再び入れ替わり、自分の世界へ帰還する筈でした。
しかし、実際には入れ替わりは起きず、未だにアルラの中に留まっている。これがまだ終わっていないと確信している理由です。
あのクソビッ…男爵令嬢はガブリエラ様の悲劇を狙い続ける事を諦めないでしょう。」
途端に公爵家の面々の怒気が強まる。
家族構成を見るに、ガブリエラは末っ子長女なんだろう。そんなガブリエラが可愛い公爵家一家は性女への殺意湧きまくってんだな。
マリラ男爵家、終わったわ。
「王子一人どころか、お気に入り全員と仲良くとは。あの時も聞いていたが正に星殿の言うように性女と呼ばれるに相応しいな。
しかしその為にガブリエラが貶められるのは断じて許し難い。」
「あら、あなた様、お口が悪くてよ?でもそうね…そんな夢物語を現実にしようだなんて随分と聖女様は純粋でいらっしゃるわ。さぞかし聖女様のお花は綺麗なのでしょう。」
あー、副音声で『突き抜けた馬鹿』って聞こえるわぁ。
「うちのガブリエラを処刑?たかが王子や聖女候補の庶子にそんな権利あったか?
星殿の言うように婚約破棄された事は喜ばしい事だけどもね。」
「いいや、あるわけないよ兄さん。王室典範にも処刑の権利は王のみが持つ権利と記されてあるからね。
ましてや聖女候補が言ってのけたとなると、教会の関与も考えられるから…事情聴取は必要でしょ。」
そこにレオーネさんも参入。
「私も何かのお役に立てるかも知れません。
あの時、ガブリエラ様の側にいて間近で聞いておりましたし、他国の人間の発言であれば、国王陛下も無碍には扱いますまい。
幸い、実家は爵位持ちですし、何かあればバックアップ出来るかと。」
エクサルファ国より強い帝国の人間だし、無碍にしちゃったら火種になるもんね。
これは強いカードが来たよ。
逃さなくて良かったわぁ♪
よしよし、と小さく頷いていると、扉がノックされ、側に控えていたロマンスグレーな家令に何かを伝えると、家令は公爵様にそれを伝えた。
公爵様は立ち上がりパンパンと手を叩くと私達に向かい、にこやかに言った。
「昼餐の支度が整ったので、続きは食堂で行うとしようか。」
某フリマサイトでトラブル勃発しました…。
何故こうなったし。
ポイントとブックマーク登録していただき、ありがとうございますー!!
押していただいた皆様とアントンのおかげです(T_T)
そして、よろしければ下にあります☆☆☆☆☆とブックマーク登録、いいね!を押していだけますと大変励みになります♪
よろしくお願い致しますm(_ _)m




