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56 皆エロいので

 地下四階もつつがなく見せ終わり、さらに地下五階へ。


「ふん、ここまで来たらもう驚き慣れたわ! どうせまた人間どもを集めての学校ごっこでしょう!?」


 と己を鼓舞しながらルーデナさん、肩を怒らせ進んでいく。

 そして目にしたものに……。


「はにゃあああああああッッ!?」


 と腰を抜かした。

 彼女の目の前にステージが広がっていた。


 ピンク色に輝く魅惑のステージだ。


 そのステージの上で、一人の美女が蠱惑的に腰をくねらせていた。

 この階の番人である再生英雄アンドゥナちゃんだ。


「今日もアンドゥナちゃんはノリノリだなあ。あんなに腰を振って……」

「品性の欠ける動作です。このフロアだけは、ダンジョン全体の気品を落とすものとして受け入れかねます」


 ナカさんは、相変わらずこの施設が嫌いらしい。

 ここは性差によって受け取り方が分かれるな。


「何よ! 何なのよここ!?」


 それは、この小さなレディも同じようで……。

 新しいフロアに来るたび同じ叫びから始めてません?


「ダンジョンの中で舞台なんて……、どういう発想が出たらこうなるの!? ダンジョンは遊び場じゃないのよ!? 侵入者とダンジョンマスターの命を懸けた陥れ合いの場なのよ!!」


 はい。

 ホント誰がダンジョンにステージ付けようなんて言い出したんですかね?


「しかも、ステージ上で行われているのがあんな破廉恥な……!? ホント男ってダメね!! 男って!!」


 何故か男が攻撃される流れになった。


 しかしそれも仕方がないかもしれない。

 このフロアまで降りてきてステージへ食い入るように見入っているのはほとんど男性冒険者なのだから。


「まあ、仕方ないというかね……!?」


 多少は女性冒険者もいるよ?

 でも八割以上の割合でいるのは男性冒険者?


 ステージ上でアンドゥナちゃんが尻を振り、おっぱいを揺らすたびにやんやの喝采が飛ぶ。


「はああああ……!」

「本当に……!?」


 ナカさんやクヴァンさんまで蔑むような視線を投げかけるのであった。

 やめてほしい。


「しかし、このステージもけっこうな効果を発揮してくれているんだよ? かなり膨大な心象エネルギーを吸い取りまくっている」

「うそぉ!?」


 言うであろう。

 エロは偉大、と?


 このステージに注目する冒険者たちのスケベ心は激しいリビドーとなって心揺らし、膨大な心象エネルギーを発生させているのだ。


「そんな心象エネルギーいらない!? 汚い! 臭そう!!」

「まあまあ」


 何せステージに上っているのは史上最高クラスの踊り子『グレイテスト・ショーガール』のアンドゥナちゃんだから。


 それはもう観客どもを手玉に取って最大限の心象エネルギーを搾りとってくれるものよ。


「ところでマスター、気になっているのですが」

「はい?」

「あのステージの周りを歩き回っているサキュバスは何なのでしょう?」


 サキュバス。

 モンスターの一種だね。


 イドショップで生成コードが一七,二〇〇イドで売ってたからポチった。


「私の知らない間に? しかもあんなに数多く生成して?」

「アンドゥナちゃんのリクエストでね?」


 迫ってくるナカさんが怖い。


「ステージで踊りを見せるだけじゃ、どうしてもうら寂しくなるってことでね。ウェイトレスを置くことにしたの。サキュバスがもっとも場に馴染むと思って……?」


 俺一人の発案じゃないよ?

 アンドゥナちゃんと話し合った結果だよ。


「それでサキュバスたちは冒険者たちにお酒を配っているのですか?」

「お酒は地上から仕入れてきてます」

「代金は?」

「無料」

「マスターッッ!?」


 待って。

 怒らないで最後まで聞いて。


「俺たちにとってお金なんて特に意味ないじゃない。いくらでもエキドナ炉から生み出せるんだし」

「たしかに」

「そうね……」


 余所様であるルーデナさんまで頷く。


「それならタダ酒の感動を心象エネルギーとして放出した方が、このダンジョンにとって有益じゃないか。酔った勢いでアンドゥナちゃんのダンスにもより興奮してくれるし」


 無論、タダ酒かっ食らう冒険者たちにも何のリスクもないわけではない。


「酔い潰れるとリタイア扱いされて、装備剥され叩き出されるからね。普通に店で飲むより数十倍の出費になるよ?」

「鬼のような利用システムですね」


 だってダンジョンだからね。

 少しは罠らしいところも示しておかなきゃ。


 今この時も、アンドゥナちゃんのダンスで心蕩けている冒険者にサキュバスが忍び寄る。


「お客さーん♡♡ お酒のお代わりいかがですー♡♡」

「いや、俺はもうこれ以上飲んだら潰れちゃうから……!?」

「もう一杯頼んでくれたらー♡♡ おさわりぐらい許しちゃうけどなー♡♡」

「水割りください!!」


 注文を受けたサキュバスは、水一:酒五、程度の割合で水割りを作る。


「濃いッ!?」


 怖いなサキュバス!?

 さすがサキュバス!?


 こうしてオケラどころか素っ裸にされてお帰りになる冒険者のなんと多いことか!?


「効率的に心象エネルギーを集めつつ、冒険者を排除する仕組み。悔しいですが完璧に近いですね」

「ぐにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ……!?」


 なんか不機嫌に震えるルーデナさん。


「こッ、こんな破廉恥な場所もう見たくないわ!! 次よ! 次に案内なさい!!」

「あ……ッ?」


 勢いのままにズンズン進んでいルーデナさん。

 しかし番人のいるフロアはここまでで、ここから先は完全に侵入者排除のための防衛エリアだ。


「もうここから先は何もありませんよ? 一旦『聖域』に戻りましょう!?」

「そんなこと言って、このダンジョンの重大な秘密がこの先にあるから隠そうとしてるんじゃないの!? 騙されないわ! 必ず暴いてやるんだから!!」


 何の話!?

 俺が止めるのもルーデナさんは取り合わず、地下五階の奥にある『STAFF ONLY ~関係者以外の立ち入りをお断りします~』という張り紙が張ってあるドアをガシーンと蹴り破る。


 そして進んでいく。


「あっちに下り階段があるってなんでわかるんだ!?」


 あれもダンジョンマスターの能力?

 ルーデナさんはカツカツ階段を駆け下りて……。


「ふんッ! また代わり映えのない素面内装じゃない! やっぱり素人はダメね!」


 そんな声がしてすぐに……。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッ!?!?!?!?」


 と叫び声が響き渡った。


「これはマズい!?」


 と思った俺、全力疾走で地下六階へ降り、ナカさんやクヴァンさんもそれに続く。

 階下で目にしたのは、泡を吹いて失神するルーデルさんと、それを取り囲む異形のバケモノ。


 サソリと蜘蛛、それから単眼を【合成】させたモンスター、名状しがたい獣が彼女のことを取り囲んでいた。


「やっぱりこうなったか……!?」


 地下六階より下には、本気で冒険者を追い返すために見た目も恐ろしい連中を多数配置している。


 だから出会い頭にルーデナさんをビビらせ失神にまで追い込んだのは、狙いどおりの効果で彼らに非はない。


 ちなみに名状しがたい獣たちは、こんななりだが案外人懐っこく、撫でてやるとゴロゴロ喉を鳴らすのだった。


「喉ってどこ?」


 とりあえず主だったところの視察は終わったので、失神したままのルーデナさんを抱えて『聖域』に戻ることにしよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぼったくりなんてレベルじゃないYOH!(爆笑) [気になる点] 身ぐるみ剥がされて地上へつまみ出され…冒険者廃業も覚悟しなきゃならないタダ酒!?
[一言] ルーデナさん、SANチェック失敗! ダンジョンがこうも愉快になっていると、バギンザが早々に退場してしまった事がちょっぴりもったいなくなってきますね。 レオスダイト道場でシバかれるバギンザ。…
[一言] ギャップの差が激しい!? そして『名状しがたい獣』は犬か猫属性だった? つーことは怖がられると傷ついちゃう?^^;
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