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39/63

38 試みが上手くいったので

『西淵』ヴィルハクシャ

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【ダンジョンランク】:E→C

【階層数】:8

【規模】54

【建造実績】:10

【清潔】:66→63

【設置可能宝箱数】:8

【罠数】:0

【配置可能モンスター数】:50

【総合武力】:187→12,391

【保有罠】:なし

【保有モンスター】:スライム×14 ゴブリン×13 スラブリン×1 剣聖ゴブリン×1

【保有イド】:16,438

-----------------------------------


「総合武力めっちゃ上がっとる……!?」


 これもレオスダイトさんを加入させた成果なのか?


 保有モンスターのリスト内にある『剣聖ゴブリン』というのがどうやらレオスダイトさんのことのようだ。

 やっぱあれでもゴブリン扱いらしい。


 ダンジョンの総合武力は保有するモンスターと罠、その量と質で増減するということをナカさんから聞いたので……。

 ガーディアンの戦力は別機構ということで含まれないらしい。


 つまりタフーの存在を除いて、レオスダイトさん一人の加入で百倍近く上がった、彼の能力の高さを示す一端となろう。


「まあ、出撃前に心象エネルギーたっぷり注ぎ込んでレベルも上げたからなあ」


 ついでにスラブリンも。


 レオスダイトさんも生前はハイレベルの冒険者だったが、改めてモンスターとしてレベル1からやり直し、さらなる強さポテンシャルを得たようだ。


 無造作に心象エネルギーを注ぎ込んだことでレオスダイトさんの転生してからのレベルは57。

 あとスラブリンはレベル89になっている。


「あとダンジョンランクもEからCになりましたね。おめでとうございます!」


 ナカさんもパラメータ画面に注目している。


「さすがに総合武力が万単位行けば他は何もいじっていなくてもCランクにいきますか……。とにかく見事です!」

「ランクか……、何か意味あるのかな?」


 ダンジョンランクはそれこそ究極のダンジョン総合評価で規模、建造実績、総合武力などすべてを加味した評価の結果決まるそうな。


 俺のダンジョンの場合、現状レオスダイトさんの一強のみで評価がうなぎ上りの現状だけれども。


「もちろんランクが上がることによってできることが色々増えますよ? これからご説明いたしましょうか?」

「それよりも今はもっとレオスダイトさんのことを分析したいなー?」


 説明癖でウズウズしているナカさんを華麗にスルー。


「そ、そうですか……!?」


 残念そうなナカさん。

 気を取り直して……。


「それではレオスダイトこと剣聖ゴブリンについての働きですが、実力相応の活躍を見せていますね。まさに嵐のごとしです」


 モニタが映り変わり、ダンジョン内の様子を見せてくれる。


 レオスダイトさんがダンジョン守護の任務をこなしている。


『どうした! その程度の動きでダンジョン制覇が叶うと思っているのか!? 考える前に動け! 死んでも動き続けろ!!』


 などと喚き散らしながら冒険者たちを蹴散らしている。


 ……前々から思っていたが。


「なんでレオスダイトさんは迎撃が指導者形式なの?」

「生前の影響を排しきれていないのでしょう。再生英雄はこの辺りに問題点がありますね。これからの課題となりそうです」


 俺は別にこのままでもいいと思うけど?

 個性として許せる範囲内じゃないか。


 レオスダイトさんの仕事風景はこれまでも見守ってきたが、ああいう指導型迎撃は意外に評判がよく、それ目当てにダンジョンに入る冒険者もいるようだ。


「……っていうか、今レオスダイトさんと戦ってるのケルディオじゃないか? あんなに生き生きとして……!?」


 まだ本隊に帰ってなかったんかーい、と思ったが『哭鉄兵団』幹部の彼にとって、同クランでの伝説となっている人との手合わせなんて胸躍ることだろうなあ。


 そして、その隣では何故かスラブリンが飛び跳ねている。

『ピピピッ!』と鳴きながら、『もっとピッチ上げろー』とか『気合いだ気合―ッ!』とでも言ってる感じなのだろうか。

 コーチ気取り?


 ともかくスラブリンまであの状況に加わって和気あいあい感が増していた。


「おかげで収集される心象エネルギーの量も上がってるみたいじゃないか」


 レオスダイトさんのように強い敵と出会った驚き、危機感。

 そして戦闘がてら指導を受けられる感動。

 それによって強くなれた手応えと充足感。


 それら心の動きすべてがより大きな心象エネルギーを発し。我がダンジョンの収入となっているようだな。

 いいよ、いいよ。


「レオスダイトさんのおかげでダンジョンの防衛力が上がっただけでなく、収入まで増えたんだからいいことづくめじゃないか。【合成】による過去の英雄再生の試みは大成功というべきだな!」

「だからこそ、得た心象エネルギーを元手にさらなるダンジョン改造へ着手すべきでしょう。剣聖ゴブリンやスラブリンのレベルアップに相当量の心象エネルギーをつぎ込みましたが、それでも差し引きプラスになるほど収入は上がっています」


 そうだなー。

 とはいえ階層を増やしたりするにはまだまだ絶対量が足りないし……。


 どういった改造をしていくべきかな。


「お困りなのマスター?」


 そこへ現れたタフー。


 レオスダイトさんという強力な戦力が新造されたことでガーディアンとしてのコイツの役割はますます不急のものとなり、自堕落に拍車がかかっている。


 ここに来るにも歩かず、寝ころんだまま、芋虫のように床を這って近寄ってくるから益々自堕落ぶりが印象付けられる。


「…………」

「ぐぇッ!?」


 ムカついたのか、ナカさんによって尻を蹴り上げられるタフー。

 寝転がってたものだから、床をゴロゴロ転がって壁まで行き着く。


「何の用ですかタフー? わたくしもマスターも、アナタと違って大変に多忙なのです。退屈凌ぎがしたければテルスさんにでも遊んでもらいなさい」


 いや、彼女も【合成】で生み出した新魔法の研究で忙しいことと思うけど?


「酷いなー? アタシはまたしてもマスターにいいものを持ってきてあげたんだけどなー?」


 ん?


「あの新型ゴブリン、凄いお役に立ってるんでしょー? 大活躍なんでしょー? アタシの目論見がすべて当たったって感じだよねー?」

「いい気になるんじゃありませんよ」


 ナカさんの罵倒が抜き身だった。


「上手くいったら、その手段は常套として定着していくんだよー? そして王道となっていくんだよー? ワンパターンをバカにするなんて勝ったことがないヤツの戯言なんだよ。真の強者は究極の唯一無二で永遠に勝ち続けていくんだよ」

「何が言いたい?」


 そんな議論が荒れそうな主張をぶち込んで。


「実はこれ……、もっとあるんだけど……!」


 そう言ってタフーが俺に差し出してきたのは……。


 人間の遺骨、しかも明らかに複数人分のものだった!



 かくして新たに生成された再生英雄。


 タフーが提供してくれた素材を基に、三人追加することができました。


「っていうかまだ持ってたのかよ!?」

「最高ランクのコレクションはこれで全部だよー。役立ててねー」


 オアンネス槽でコードを読み取り、【合成】でゴブリンと掛け合わせ、生まれ変わった英雄三人。


 それぞれ外見はまったく異なるので見分けつけるのに助かる。


 一人は、おじいちゃんと言っていいほどの老齢だった。

 白く豊かな髭を蓄えて、いかにもな威厳が漂っている。


 二人目は女性。

 パっと見まだ二十歳にもなっていない乙女な印象だが、そのわりに表情から漂う色香は、熟女の濃厚さすら感じる。


 そして三人目は少年。

 細くて小さく……、そして何を考えているかわからない表情だった。

 瞳の中が空っぽのように見えるんですけど?


「我ら、マスターの御慈悲によりこの世界に舞い戻ることができました。そのご恩に報いるため、全力にて使命を全うしたく存じます」


 三人を代表して老爺の再生英雄が言う。

 彼は名乗った。


「私の名はフューリーム」


 さらに女性の再生英雄も名乗る。


「アンドゥナと申しますわ」


 そして三人目の少年も。


「…………トムッキー」


 この三人、いずれもレオスダイトさんに匹敵する実力の持ち主だというのか?

 実際戦って倒したタフーが言うなら間違いないと思うが……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今度は知らない方々。 これって先代ダンジョンマスター時代の犠牲者なんでしょうかね
[一言] なぜか、頭にうかんだのは ボヤッキー ドロンジョ ゴーリキー
[良い点] 岡沢六十四先生の文体はとても枯れていて洗練されている。楽しく読ましてもらっている [一言] 続きが早く読みたい
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