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34 魔法書を混ぜたので

 そんな感じで魔導士テルスが仲間に加わった。

 俺がダンジョンマスターになる以前、冒険者パーティを組んでいた時点からの仲間だったので、それほど慣れない感じはない。


「冒険者の仕事はいいの?」

「いいに決まってるじゃない! そもそも私は、珍しい魔法書をゲットするために冒険者になったのよ!」


 それもそうか。

 ここなら指定の心象エネルギーさえ支払えば確実に欲しいものが手に入るんだからな。


 ただ真っ当に進めるならばテルスの希望を叶えるのは何年もあとのことになりそう。

 それだと折角お手伝いをしてくれるテルスに申し訳ないともって、今の時点でも俺にできる報い方はないものか模索してみる。


「まずはイドショップから、初歩魔法の書でも買い込んでみるか」


 正確には魔法書の生成コードを。

 コードを買ってエキドナ炉に記憶させればあとはいくらでも実体化させられるというスンポーだ。


 一番初歩の魔法書は、一コード=百イドと驚くほどに安いので気軽に買う。

 十コードほどセットで買う。


「魔法書はダンジョンでしか手に入らない……、それで初歩魔法は低コスト……。なるほど冒険者を呼び込むための景品としては優秀だな」


 さて。

 コードを取得して終わりじゃない。

 これから俺ならではの工夫をしていこう。


「この魔法書と……、この魔法書を……、【合成】!」


 そう【合成】だ。

 クラス合成師であった俺がダンジョンマスターとなったことにより、追加された独自機能。

 本来エキドナ炉には、この機能はないらしい。


 それを最大限利用して、魔法書と魔法書を【合成】させてみよう。


「よし、できた」


 エキドナ炉の内部で実体化された魔法書を取り出す。


「これが魔法書か……」


 書物とは言うが紙を何枚も束ねた本状ではなく、一枚の長い紙をクルクル丸めた巻物状であった。


「この形自体は見慣れている……!?」


 俺が冒険者時代、よく宝箱の中から出てきたものだ。

 当時の俺はギルドに持って行ってお金に変えてもらうものとしか認識していなかったが。


 ……冒険者として長生きしていくコツは、ダンジョン探索以外の余計なことを考えないことなんだ。


「じゃあ早速、テルスこれ使ってみる?」

「えッ? 何々新しい魔法!?」


 うん新しい魔法。


 既存の魔法二つを【合成】させたものだから今までにないものであるのは間違いない。

 間違いないと思う。

 いや、偶然既存の魔法と同じ効果になっちゃってたらどうしよう?


「わーい、じゃあ早速契約しよう!」


 テルス、迷うことなく巻物を広げると、書面と向かい合ってにゃむにゃむ呪文を唱える。

 すると驚くべき変化が起こった。

 魔法書が淡い光に包まれたと思ったら、次に炎を発し、燃え盛った末灰も残さず消え去ってしまった!


「なんだあれ!?」

「魔法修得の儀式です。魔法書が燃え尽きたということは無事修得完了したということですね」


 え!? そうなの!?

 魔法書って、魔法覚えたら消えちゃうシステムなの!?


「魔法書は、知識の記憶媒体というよりは儀式道具ですからね。機能を果たせば消滅します」


 魔法書は消耗品だった……!?


 なるほどだから初歩の魔法書でも同じものが何回も取り引きされるのか。


「それでテルスさん、新しく修得した魔法はどうですか?」

「待って、今使ってみる」


 サポーターとしての契約を結んだテルスに対して、ナカさんの態度も砕けた感じになってきた。


 それはさておき、テルスも集中した表情になり……。


「<ホーリーファイヤ>!」


 魔法杖から解き放たれる白い炎。


「治癒魔法と火炎魔法を【合成】したものですね。どちらも元が初歩魔法なだけに威力も低いですが」

「でも聖なる治癒魔法の属性が炎に加わって『聖炎』になっているわ! どっちもアンデッドに有効な属性だから、そういうのにより効果を発揮するかも!」


 この聖火複合属性の魔法なら、初歩レベルでも中級のどちらか一方属性の魔法よりアンデッドに大ダメージを与えられそうだとか。

 消費魔法力は初歩レベルのままなので断然コスパがいい。


 いい仕上がりになったようだ。


「じゃあこっちも試してみてよ」


 次の巻物は水魔法と回復魔法を【合成】してみたよ。

 水の力で汚れを洗い落とす効能が毒や麻痺を無効化し、傷を治しながら身体の異常も回復させる一挙両得の魔法になった。


「私は魔導士だから使いづらいけど、本職のヒーラーなら大喜びじゃない? これも消費魔法力据え置きでしょ? それで体力回復も異常治療も一挙にできるなんて忙しい戦闘時にピッタリじゃない!」


 高評価をいただいた。


 じゃあ次の魔法だ! 火炎魔法と水魔法を併せてみたぞ!

 それで出来上がった魔法は火+水で水蒸気をもうもうと発する魔法になった。


 だからなんだ? という印象になった。


「……水蒸気が、視界を遮って目くらましになりそうだけど……?」

「敵から逃げたい時に便利かな? あとは……敵の火炎攻撃を弱体化する?」

「こっちの火炎魔法も封じちゃいそうだから問題ね……! どっちにしろ使いどころが難しそう……!?」


 すべてが大成功とはいかず、微妙な出来もちらほらあったがそれでも成果は大と言えよう。


【合成】のおかげで今までにない新魔法がいくつも発明されたのだから。


「これは素晴らしいですよマスター! 【合成】で作り出されたものは何であろうとオリジナル! つまりこのダンジョンでしか手に入らないものです!」


 それを目当てにウチのダンジョンへ冒険者が殺到してくるってこともあり得るわけか。

 ここ以外では手に入らないんだからな。


 そしてダンジョンに多くの人が入るようになれば獲れる心象エネルギーも増大しウハウハ!


「まことマスターの【合成】は最高です! マスターのお力があればこれからのダンジョン経営は明るいでしょう! ……しかし、それでも注意点はあります」


 その注意点を軽んじていると、足元を掬われ一挙に崩壊しかねない。

 というと……?


「魅力のある景品を豊富に用意すれば、なるほどそれに釣られて侵入者は増えていくでしょう? しかし侵入者の増加は自然、マスターに危険が及ぶ可能性に繋がります」

「……」


 たしかに……。


「今回のことでもおわかりと存じますが、現在このダンジョンは守りが非常に手薄です。ここ最深部まで障害なく、ほぼ一直線で辿りつけてしまいます」


 その通り過ぎて反論の余地もない。


 実際ケルディオたちが探索に入った時も間一髪でタフーが入らなければどうなっていたことか。


 冒険者が最深部へとたどり着き、俺が倒されてしまったらダンジョンマスターの資格を失ってしまうのだ!


「侵入者が増えるのは心象エネルギーを集めるために必須ながら、危険も同時に増えることもどうか勘案ください。防衛体制をしっかりせぬまま徒に客を増やすのは自殺行為と言えます」


 ナカさんの言う通り。

 侵入者を呼び込むことと、侵入者を防ぐことは矛盾しているように見えながら、実はどちらも欠けてはいけない両輪だ。


 有象無象の新人冒険者ならスラブリンでも全然対応できるが、ケルディオのような一流冒険者が来てしまったらどうしようもないことは証明されてしまった。


 ガーディアンであるタフーがいれば安全なのはそうだが、いつまでも彼女一人に負担を強いておくわけにもいかない。


「ダンジョン強化は必要か……!?」


 何度もぶち当たっている話題ではあるがな。


 単純なダンジョン強化は強いモンスターを配置することだけど、モンスターをエキドナ炉で生成するためには基となる生成コードをイドショップで購入しないといけない。

 強いモンスターほど値が張る。


 他は単純にダンジョンを広くして迷わせるという手段もあるが。


 フロアを一つ増やすだけでもめっちゃかかるんだよなあ……。


「い、いざとなったら私が戦うわ!」


 テルスが健気に言うが、その前にダンジョンそのものの改良だな。

 じっくり考えてみよう。

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― 新着の感想 ―
結局ご都合主義的に殺人は気が付かれないんだね 不殺ダンジョンらしいけど あらが多すぎない?
[良い点] 魔法研究所もなく合成魔法とな。 枯れたどころかどんどん新発見が湧き上がるとんでもないスポットだ
[一言] ダンジョンが雑魚なのに、宝箱からやたら強い武器や魔法が出てきたら、強い冒険者に根こそぎ持って行かれるだけだよね。
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