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第14話『異世界ショッピング』

その後、飯屋をすぐ後にした俺はビアンカの案内で服屋へと訪れていた。ちなみにこの服屋は雑貨用品も売っているので、この店で目当てのものが全て見つかれば俺の異世界ショッピングはすぐ終了することになる。

すぐに終わってしまうのは少し味気ない気もするが、レベル上げの時間を考えればすぐに終わるに越したことはない。

服屋兼雑貨屋のこの店はメンズ向けなのか、女性客が少なく、俺としては入りやすい店だった。ただ雑貨用品を見に訪れる女性客がそこそこ居る。

まあ、とりあえず衣類を見て回るか。服は下着も合わせて最低でも3セットは欲しいところ。お洒落には大して興味が無いので動きやすい服を所望する。

シックな感じで整えられた店内をキョロキョロと見回しながら、俺は服を探し始めた。

店に置かれている服は全体的に地味で、黒や濃厚色が多い。根暗陰キャの俺にはお似合いの服だが、派手好きな奴には合わない店だろう。デザインも同じようなものばかりだし、この世界はファッションもあまり進化していないのだろうか?それとも、この店だけか?


『音羽が元いた世界ほどではありませんが、この世界のファッションもある程度進んでいますよ。ただお洒落を楽しめるのが王族や貴族などの金持ちに限定されているだけです。変に目立つ服を着ると、性格が腐った王族や貴族に目を付けられるので、みんな自然と地味な装いしかしなくなったんですよ』


あー····なるほどな。

そういえば、何かの小説で『お洒落は貴族の嗜み』とか何とか書いてあったな。あと『自らを着飾るのは貴族の使命』とかもあったような···?

王族と貴族が権力を牛耳っている世界って、意外と面倒だな。必要以上に関わり合いたくない人種である。さっさとレベル上げして、王家の庇護下から抜け出そう····。

密かに脱ニートを決意する俺は適当に服や下着を手に取った。だって、どれも大してデザイン変わらないし····。動きやすさや着心地もどれも大して変わらなさそうだからな。

だから、服のサイズだけ注意して適当に服を選んだ。

黒や茶色を中心に服や下着を選んだ俺はそれらを腕に引っ掛け、雑貨コーナーへと足を向けた。

商品を入れるカゴがないのは不便だな。


『この世界に買い物用のカゴを設けるという考えはありませんからね。そのカゴを作るだけでもかなり費用がかかりますし』


費用か····個人経営の店がほとんどだろうし、支出はなるべく抑えたいもんな。

それに買い物用のカゴを設けたところで、そのシステムがこの世界の住人に馴染むとは思えない。そもそも、俺みたいに一気買いする客自体少なそうだし。そう考えると、買い物用のカゴを設ける必要性はあまり無いように思える。買い物カゴが流行り出すのはもっと先のことだろうな。

少なくとも、俺が生きている間に流行ることはないだろう。

『無いものを求めても意味は無い』と結論づけ、俺は雑貨コーナーへと足を踏み入れた。

メンズ向けの店だからかシンプルなデザインの商品が多いが、女性客もそこそこ居る。シンプルなデザインは万人受けしやすいからな。嫌いな者はそうそう居ないだろう。

さて····リュックを探すか。

定住場所が決まるまでは宿屋を渡り歩くか、野宿するしかないため、荷物を持ち歩くためのリュックが必然的に必要になる。衣類はもちろん、出来れば鎧もリュックに入れて持ち運びたいので大きめのものが好ましい。

こういう時、アイテムボックスがあればなぁ···。まあ、エンジェルナビとアイテムボックスどっちを取る?と聞かれればエンジェルナビと即答するが····。正直ビアンカが居なかったら、色んな場面で躓いてたしな。


『お褒め頂き、ありがとうございます。褒めて頂いたお礼に良いことを教えてあげますよ。その棚の右端にはマジックバッグがあります。お値段は普通のリュックと違って、かなり高額ですが』


マジックバッグ····?マジックバッグって、アイテムボックスと同じようなやつだよな?

ビアンカに言われた通り、棚の右端へ移動すれば確かにそれらしき物が····。見た目はただの紺色のリュックサックだが、他のリュックとは違う何かを感じた。


『マジックバッグは確かにアイテムボックスと非常に似ていますが、そこまで性能は良くありません。マジックバッグによる収納には必ず限界量が付きまといます。おまけに料理や食材などを保存するための冷凍機能や保温機能などもないので、食料保存に向いていませんし····。ただ限界量を超えなければ、どんなに物を入れてもリュックサックの重さは変わらないので、なよなよの音羽には打って付けの商品だと思いますよ』


最後の一言は余計だが、まあ確かに俺には打って付けの商品だ。どんなに物を入れてもリュックサックの重さが変わらないのは有り難い。正直、万年帰宅部の俺が鎧やら何やらが入ったリュックサックを持ち歩けるか不安だったんだよな。

で、問題は····その限界量とやらが具体的にどのくらいなのかである。


『そうですねぇ····その大きさのマジックバッグだと、ゾウのメス一頭····つまり、一トンくらいの量なら入ると思いますよ』


一トン!?そんなの買うしかないだろ!むしろ買わなきゃ勿体ない!金は王家が出してくれるんだし、買わなきゃ損だ!

俺は紺色のリュックサックを引っ掴むと、直ぐ様レジへと駆け込んだ。紺色のリュックサックと服や下着をレジカウンターに並べ、俺は再び鎧の中から例のブローチを取り出す。


「請求は王家に頼む」


「か、畏まりました····!」


全身黒ずくめの怪しい客である俺が王族関係者だと知り、店員はもちろん周りの客にも動揺が走る。店の主人と思しき人物は震える手で領収書作成に当たっていた。

まあ、突然現れた不審者が王族関係者だと知れば動揺するよな。俺だって、こんな不審者のこと王族関係者だとは思わないし。


『ついでに冴えない顔立ちをしてらっしゃいますもんね』


冴えない顔立ちは余計だ。否定はしないが···。

俺の顔立ちは特別不細工って訳では無いが、格好良い訳でもない。要するに普通なのだ。

まあ、顔の半分はこの長い前髪のせいで隠れて見えないがな。俺が美形に生まれたならば前髪が長くても『ミステリアス』と評価されていたかもしれないが、普通顔の奴が前髪を伸ばしたって気持ち悪いだけだ。『陰気臭い』と罵られ、汚物を見るような目で見られるのがオチである。俺はその道を何度も通ってきた。

まあ、そういう経験を何度もしてきた分、精神面は強くなったがな。不本意ながら打たれ強くはなった。


「こ、こちらにサインをお願いします····!」


「ああ」


手が震えていたせいか、店の主人は何度も何度も領収書を書き直していたが、なんとか書き上げることが出来たらしい。

値段は····って、まあ良いか。どうせ払うの王家だしな。いちいち確認したところで意味が無い。だって、仮に値上げされてても交渉する気ないし。そんな暇があるなら、レベル上げがしたい。

俺は店の主人からお洒落な羽根ペンを受け取ると、何の躊躇いもなく書類の署名欄へサインした。

これで良し、っと····。


────────さて、お次はドゥンケルの森で楽しい楽しいレベル上げのお時間だ!

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