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劇的なる抒情詩集 Dramatic Lyrics  作者: ロバート・ブローニング Robert Browning(翻訳:萩原 學)
9/14

トリポリの女神に向かうリュデル Rudel to the Lady of Tripoli

第2次十字軍に参加した吟遊詩人ジョフレ・リュデルは、歌曲少々と信じ難い伝承を遺すのみで、その生涯は不明。遥か彼方からトリポリ伯夫人オディエルナを恋の女神としたが、途上で病に倒れ、トリポリに着いた時には余命幾許もなく、駆けつけた恋人の腕の中に息を引き取ったという。

I.

我ぞ知れるかの御山、優雅な太陽照らし出す

まず、その訪れを。最後にも。そして離れる

この世界。お返ししようも無駄な努力

日中の栄光、太陽がじっと見守れるは

変わることなく大きく穏やかな雪の面から。

さて御山の下に、花一輪

これまでずっと変化知り得ず、

その進路にあって。失われた努力の中、

自分の人生生きんがために、1つまた1つと別れ居り、

一輪の花、その真の恩寵の全てを以て、

その恩寵なかりせば、馬鹿げた偽の太陽の、

円盤状の顔の周りに光線状に小花が付いた。

畏れ多くも人々呼べるは、様々の名をもて彼の御山

その大なるや、彼等が地に突き抜け居れば

勝利の盾の如くに穏やかなる雪の面が

聳え立つや、なお古くからの名と新しい名が張り合う程に、

各々が相応しき褒め歌物語持つ。

人呼んでその花、向日葵と、格好つけて。

I KNOW a Mount, the gracious Sun perceives

First, when he visits, last, too, when he leaves

The world; and, vainly favoured, it repays

The day-long glory of his steadfast gaze

By no change of its large calm front of snow.

And underneath the Mount, a Flower I know,

He cannot have perceived, that changes ever

At his approach; and, in the lost endeavour

To live his life, has parted, one by one,

With all a flower’s true graces, for the grace

Of being but a foolish mimic sun,

With ray-like florets round a disk-like face.

Men nobly call by many a name the Mount

As over many a land of theirs its large

Calm front of snow like a triumphal targe

Is reared, and still with old names, fresh names vie,

Each to its proper praise and own account:

Men call the Flower, the Sunflower, sportively.

II.

ああ、東の天使、1つ1つが黄金に見えて

水面という水面を渡ってこの夕暮れの隅まで

—遥かなる悲しき水面という水面、我が天使、この隅まで!

Oh, Angel of the East, one, one gold look

Across the waters to this twilight nook,

—The far sad waters, Angel, to this nook!

III.

親愛なる巡礼者よ、そなたまさしく東に向かうや?

いざ!声掛け行かん、そなた進むをなす限り、

されば我こそフランスのリュデル、我が紋所に選べしは

向日葵、犠牲のように広がるは

我がネ申の前。見よ!これら未熟にして

急かさる指先、傷つけざること能わざりき

編まれたる絵を。そは女性の技なれば

されど我が手拱かすもの何もなく、はや病。

とはいえ、ものは仕上がった。さあ、人は伝えよ

我が歌える歌を、されば蜂共は浴す

我が花の胸に、雛壇に上がる如くに

しかし、かの花これらに頓着せず、

太陽にのみ向かうものなれば、人は称えるなど

無駄なこと、このリュデルが望むは此処になく

東へ、そのまた東へ!いざ、かくして巡礼者よ、親愛なる!

Dear Pilgrim, are thou for the East indeed?

Go! Saying ever as thou dost proceed,

That I, French Rudel, choose for my device

A sunflower outspread like a sacrifice

Before its idol. See! These inexpert

And hurried fingers could not fail to hurt

The woven picture: ’tis a woman’s skill

Indeed; but nothing baffled me, so ill

Or well, the work is finished. Say, men feed

On songs I sing, and therefore bask the bees

On my flower’s breast as on a platform broad:

But, as the flower’s concern is not for these

But solely for the sun, so men applaud

In vain this Rudel, he not looking here

But to the East—that East! Go, say this, Pilgrim dear!

挿絵(By みてみん)

向日葵はトロバドゥール文学及びエリザベス時代の紋章学に一般的であるが、ジョフレ・リュデルがこれを取り上げた作品はない。また、詩人はWilliam Blake "Sunflower"を読んでいた可能性がある(Woolford & Karlin)。

つまりリュデルが向日葵を紋所として自ら刺繍したという話は、おそらくブローニングの創作。次いでにブレイクの詩も訳しておいた。

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