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劇的なる抒情詩集 Dramatic Lyrics  作者: ロバート・ブローニング Robert Browning(翻訳:萩原 學)
4/14

フランス軍野営地の出来事 Incident of the French Camp

「ラティスボン」とはレーゲンスブルクのフランス名。ナポレオンはレーゲンスブルクの戦いで、腹心にして親友のランヌを失い、以後は勝つことができなかった。

I.

ご承知の通り、我がフランス軍強襲せるはラティスボン。

1マイル程離れた、

小さな丘で、ナポレオンが

我等の昼間襲撃を見守った。

もの好きにも首を剥き出して、

足を広げ、腕は後ろ手に組み、

傾いた眉は釣り合わせるかのよう

その思いの重苦しさと。


You know, we French stormed Ratisbon:

A mile or so away,

On a little mound, Napoleon

Stood on our storming-day;

With neck out-thrust, you fancy how,

Legs wide, arms locked behind,

As if to balance the prone brow

Oppressive with its mind.


II.

彼が思い(ふけ)ることおそらくは「我が謀は

「飛び出したものの、地に墜ちるかも

「我が指揮官ランヌも一度は

「あそこの壁にたじろぐか」

そこにもくもくと沸く硝煙を抜け

騎手の一人が揺れに揺れつつ

全力疾走。手綱も引かず

丘に到着するまでは。


Just as perhaps he mused “My plans

“That soar, to earth may fall,

“Let once my army-leader Lannes

“Waver at yonder wall,” —

Out ’twixt the battery-smokes there flew

A rider, bound on bound

Full-galloping; nor bridle drew

Until he reached the mound.


III.

確かにその時、喜色満面かしこに躍動、

そして馬上に立ち上がると

馬の(たてがみ)をさながら、まだ少年で。

誰も思いもつかなかったことには

(彼の唇はぎゅっと引き締められ、

血も通わないようであったが)

二度もその胸見直せば

撃たれて二つに裂けていた。


Then off there flung in smiling joy,

And held himself erect

By just his horse’s mane, a boy:

You hardly could suspect —

(So tight he kept his lips compressed,

Scarce any blood came through)

You looked twice ere you saw his breast

Was all but shot in two.


IV.

「よろしいか」と彼は叫んだ、「皇帝陛下、神の恩寵ありまして

我等はラティスボンを()としましたぞ!

元帥は広場に居ります故、

陛下はそちらに御成り遊ばせ。

大陸軍旗の鷲が翼はためかすを目にされんことを。

かしこに私が、心からの願いをかけて

鷲を止まらせた故に!」上官の目は(またた)いた、彼の(はかりごと)

炎のように再び舞い上がったので。

挿絵(By みてみん)

“Well,” cried he, “Emperor, by God’s grace

“We’ve got you Ratisbon!

“The Marshal’s in the market-place,

“And you’ll be there anon

“To see your flag-bird flap his vans

“Where I, to heart’s desire,

“Perched him!” The chief’s eye flashed; his plans

Soared up again like fire.


V.

上官の目は瞬いた、しかし今は

眼差しを和らげた、目を(つむ)るは

さながら母なる鷲の(まぶた)

傷ついた子鷲の息を窺う時のよう。

「おまえは負傷して!」「いえ、」兵士の誇りにかけて

素早く訂正を入れ、彼は言った。

「戦死ですよ、陛下!」かくて彼の上官の傍らで

微笑みを浮かべつつ、少年は逝った。


The chief’s eye flashed; but presently

Softened itself, as sheathes

A film the mother-eagle’s eye

When her bruised eaglet breathes;

“You’re wounded!” “Nay,” the soldier’s pride

Touched to the quick, he said:

“I’m killed, Sire!” And his chief beside

Smiling the boy fell dead.


By Robert Browning 1845

バラッドとして書かれているようだが、これも史実かどうか判らない。

flag-bird とあるのはおそらく、大陸軍 La Grande Armée の軍旗を飾る鷲のこと。挿絵はWikipediaから。

1842年当初は"Camp and Cloister"と題した2篇のうち"Camp (French)"であった。

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