表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劇的なる抒情詩集 Dramatic Lyrics  作者: ロバート・ブローニング Robert Browning(翻訳:萩原 學)
11/14

瞑想中のヨハネス・アグリコラ Johannes Agricola in Meditation.

ヨハネス・アグリコラは、マルチン・ルターの宗教改革に際し、その側近を務め、また論争相手ともなった神学者。Agricola はラテン語で「農民」を意味するので、ハンス・バウアー(Bauer はドイツ語で「農民」)とも名乗った。

初出ではこの題名でなく Madhouse Cell(癲狂院独房)I.と心無い名が付いていたのは、当時の精神病院を指す。どうやら詩人は宗教者に対し、あまり賛意はなかったようだ。

彼方に天国(ましま)さば、夜また夜ごと

 その豪奢なる屋根拝み渡せり。

太陽も月も無けれど()ほ明く

 我が足(とど)むに足るものなり。 折り紙付きの壮麗さ

風上に認むはひとかえりの星。

THERE’S Heaven above, and night by night,

 I look right through its gorgeous roof

No sun and moons though e’er so bright

 Avail to stop me; splendour-proof

I keep the broods of stars aloof:

我ひたすら神へと到らんと、

 神へと向かわん我一目散に、

神の胸へと、我が魂の住まいへと、

 群れなす栄光の()し方も(まばゆ)く、

遂に我が精神を横たえたり。

For I intend to get to God,

 For ’tis to God I speed so fast,

For in God’s breast, my own abode,

 Those shoals of dazzling glory past,

I lay my spirit down at last.

いつもの場所に横たえ居れば、

  神いつもの通りに微笑まれ。

やがて太陽だの月だのが満ちては欠けて、

 やがて星々は雷纏うか詰め込まれ

天よ、神の私に思わせ給うは御子のこと。

I lie where I have always lain,

 God smiles as he has always smiled;

Ere suns and moons could wax and wane,

 Ere stars were thundergirt, or piled

The Heavens, God thought on me his child;

神は私に命を定め、留め置かれた

  各自の運命を、全ての者に

細部にわたり。ああ神は仰せられた、

 (すべか)らくこの手この頭に置くべき

かくして、形作られたは星や太陽に。

Ordained a life for me, arrayed

 Its circumstances, every one

To the minutest; ay, God said

 This head this hand should rest upon

Thus, ere he fashioned star or sun.

そして私をかく創られまして、

  かく私に根ざし、私に成長仰せ遣はす、

永遠に潔白を、樹木のように

 そは芽吹き花咲き、知識求めるまでもなく

 掟はその繁栄にありませば。

And having thus created me,

 Thus rooted me, he bade me grow,

Guiltless for ever, like a tree

 That buds and blooms, nor seeks to know

 The law by which it prospers so:

しかし必ずや、思いと言葉と行いとの

 すべては神の愛嵩じるに帰す、

我作られしは、その愛の求めならん

 取り返しもつかぬ何かの

その在るべき内容のみ誓約しませり。

But sure that thought and word and deed

 All go to swell his love for me,

Me, made because that love had need

 Of something irrevocably

Pledged solely its content to be.

そうそう、伸びて行くばかりの木、ーー

 ひょうたんが挫折を運命られた試しなし!

我には神のお許しあり、混ぜ合わすことの

 すべての恐ろしい罪を、盛った器を

煮詰められた毒の如くに飲み干せることの。

Yes, yes, a tree which must ascend,—

 No poison-gourd foredoomed to stoop!

I have God’s warrant, could I blend

 All hideous sins, as in a cup,

To drink the mingled venoms up,

安んじ給え、我が本性は入れ換える

 設計図を開花の喜びに素早く、

然るに甘露はひょうたんの傷に変わり、

 膨らみ、膨らまされたら、爆発す、

最初に振られた役目の通り。

Secure my nature will convert

 The draught to blossoming gladness fast,

While sweet dews turn to the gourd’s hurt,

 And bloat, and while they bloat it, blast,

As from the first its lot was cast.

我横たわり、微笑み、満たされしゆえ

 祝福への尽きざる力によって、

地獄の獰猛なる寝台より下を我見守れり、

 そこに炎の波押し寄すを、

恐ろしく悲惨なまでに群がるを。

For as I lie, smiled on, full fed

 By unexhausted power to bless,

I gaze below on Hell’s fierce bed,

 And those its waves of flame oppress,

Swarming in ghastly wretchedness;

大地にある生命目指した

 祭壇の煙、実に純粋な!…勝ち得るには

私に対する神の愛のような愛でなければ、

 少なくとも神の怒りを招くが落ち、

して彼らの努力のすべては罪となる!

Whose life on earth aspired to be

 One altar-smoke, so pure!—to win

If not love like God’s love to me,

 At least to keep his anger in,

And all their striving turned to sin!

司祭、医者、隠者、僧侶は白く成り行く

 伴うは祈祷師や、失恋した修道女に、

殉教者やら、青ざめた侍祭やら、

 行ったり来たりの罪なき子、前はだけて

星や太陽作られし神の御前に!

 Priest, doctor, hermit, monk grown white

With prayer, the broken-hearted nun,

 The martyr, the wan acolyte,

The incense-swinging child,—undone

Before God fashioned star or sun!

我が讃えまつる神よ。我如何にか讃え祀れるや?

  よしや我理解に及ばんが為、

その道をば解きほぐし、また当てにし、

  そして彼の愛のために交渉して立てますや、

とある対価を納めつつ、その右手に示された?

God, whom I praise; how could I praise,

 If such as I might understand,

Make out, and reckon on, his ways,

 And bargain for his love, and, stand,

Paying a price, at his right hand?

poison-gourd:瓢箪は毒を持ち、食中毒を起こすことがある。その毒が少ないものを選別したのが夕顔で、それと区別しての言い方らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ