万に等しいお節介。
「ぶーーーん」 「ぶーーーん」
「ぶーーーん。 ぶーーーーーん」
⊂( ・ω・)⊃ブーン
「やかましいッ!!」
正直、五月蝿かった。
嬉しい行為が仇をなすとは、これ如何に……
「え? なんで??」「どうして?」
「どうしてどうして、こんなに~」
「それ以上言うんじゃあねぇ!!」
著作権に響き兼ねない。
とにもかくにも、室内は混沌の渦と化していたのだ。
「……いや、なんで??」
頭を抱えた患者は余命幾ばくもない。
安らかに眠り、素っ裸の天使の赤ん坊が迎えに来ていたらどれほど嬉しかったことだろうか。
個人部屋を与えられたことに正直戸惑いを隠せなかった。
いや、むしろ感謝すべきだったのだろう。
「……もう……良いかな?」「……良いよね?」
「ぶーーーん、ぶーーーん♪」
「ぶーーーん、ぶーーーん、ぶーーーん♪」
⊂( ・ω・)⊃ブーン
「だからうるせぇっつってんだろーが!!」
ドンドンドン!!
隣室から苦情が来た。
これ以上は怒鳴り声を発っせられない。 迷惑はかけられない。
「……ったく、どうしろってんだよ……」
快復を望む友人知人から差し届けられた鶴の折り紙。
ゆうにその数は万を越え、大小様々な鶴の折り紙がところ畝ましと羽ばたいていたのであった。
ぶーーーん、ぶーーーん。
ぶーーーん、ぶーーーん。
パタパタパタパタ、パタパタ。
わっさわっさ、かつんかつん。
ひとまず、窓枠に挟まった折り鶴を助けるべく手にする。
くちばしがひん曲がっていたので整えてみて。
「ほら、これで良いだろ?」
甲斐甲斐しく自分の掌をつつくくちばしの感触ときたら、こそばしくて仕方がなかった。
なので、むりやり解き放とうとする。
「きゅ~ん、きゅ~ん」
犬か、おまいは。
そんな憐れみの視線を向けられても怯まないぞ。
だいたい、たかが折り紙じゃあないか。
なんなら、窓を開けて自由に大空を駆け巡らせてやろうか。
辺り構わず突き刺さってくる折り鶴をはね除けて、ガラガラと窓を開けた。
「ほら、どこまでも翔んでいけ!」
翌日。
夥しいまでのニュースが話題となる。
「これはいったい……誰の仕業なのでしょうか!?」
イイネ♪ どころの騒ぎではない。
ありとあらゆる病院が折り鶴まみれになっていたのだ。
「ふ~ん……」
気付けば、病は完治していた。
自分のせいでは、ない。
そう、信じたい。