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災厄を引き寄せる男  作者: 翡翠の花
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6. 初めての依頼ー②

荷物を受け取った後、《気功》を使って“オロリンの鍛冶場”まで走る。


わかってたこととはいえ結構かかった。広すぎだろ、ジスプロス!


「すいません!冒険者ギルドから来たものですが!」


「おう!入って来い!」


奥の方から声が聞こえる。


言われた通りに入っていくと20歳くらいの男が待っていた。


弟子かな?


「荷物を届けに来ました。」


「お疲れさん。で、荷物をはどこだ?」


何も持っていない俺をいぶかしげに見る。


「『アイテムホール』に入っています。」


「そうか、じゃあここに置いてくれ。」


そう言って入り口近くのスペースを指す。


「はい。

時空の王の戯れを我が手に『アイテムホール』!」


入れるのより出す方が簡単だ。


『アイテムホール』の高さまで荷物を持ち上げる……という動作がいらないからね。


とはいえ《気功》を使っての作業が続いていることに変わりはないが。


「ふぅ、終わりました。」


無事30箱を取り出してから、そばにずっと立っていた男を振り返る。


「今確認をするからちょっと待ってろ。」


数量確認の間、俺は脇の方で座って待っていた。


とその時、従魔契約を通して、ウノから連絡が入ってきた。


俺はすぐさま『従魔の視界』を使ってウノと視覚を共有する。


鳥特有の、鮮明で色彩豊かな世界の映像が俺の脳内に浮かび上がる。これはウノが見ている世界だ。


この『従魔の視界』は文字通り自分の従魔が見ているものを従魔術師の脳内に浮かび上がらせる魔法だ。達人になると一度に10以上の従魔と視界を共有できるらしい。


ちなみに俺は今、ウノとしか共有できない。スライムたちには目がないからね。



ウノは現在この付近の上空を飛んでいるらしい。そこから、ある1階建ての建物の屋根を見ているようだ。


ウノの目には大きな猫が屋根の上で腹ばいになって寝転んでいる様子が写っていた。


黄色の模様、黒い斑点、大きなしっぽ……。事前に教えてもらっていた。情報と合致する。捜索の依頼が出ていた猫に間違いない。


ここならすぐに行って捕まえられそうだな……


「おい、おいお前、聞いているのか?」


おっと、ウノからの情報に気を取られすぎていたようだ。


「すみません、少しぼーっとしていました。」


「きっちり30箱の受け取りを確認した。こんなに早く届けてもらえると思ってなかったな。これなら報酬も増額させてもらうぞ。」


「ありがとうございます。」


「これをギルドに持って行け。依頼達成を示す書類だ。報酬増額も記してある。」


そういって一枚の紙を渡してくる。


「どうも。

時空の王の戯れを我が手に

『アイテムホール』」


この中なら紛失の心配はない。


その時、鍛冶場の方から声が聞こえてきた。


「オロリンさん!どこですかぁ!!」


「今行く!」


と目の前の男が返事をした。


え?この人がオロリンさん?

すいません普通に弟子の一人だと思ってました……


「もう帰っていいぞ。おつかれさん。」


驚いている俺をよそに、声を掛けてあっという間にオロリンさんは奥に去っていった。


「あぁ、オロリンさん、ちょっと見ていただきたいものが……」


「おう、どれだ?」


「この剣なんですが……」


邪魔にならないうちにとっとと退出しよう。


鍛冶場を出て再びウノと視界を共有する。猫の居場所は変わっていない。相変わらずのんびりと日向ぼっこをしている。居場所はここから近い。


今の俺の魔力は……


ーーーーーーーーーーーーーーー

《クロム・イダルトゥ》

性別 :男

年齢 :9才

種族 :人間

HP :27/27

MP :12/36

ーーーーーーーーーーーーーーー




よし、猫1匹分なら捕まえるための魔力はある。


あの猫は捕まえにくいと言われているが俺には捕獲に適した魔法がある。


ウノから送られてくる情報をもとにある建物のもとに来た。


白い壁で覆われた立派な平屋。上空ではウノがホバリングしている。


「さて、今の猫の様子は……

おっと」


『従魔の視界』を使ってウノと視界を共有すると、まさに猫がこちら側に歩いてこようとするところを捉えた。


「こっちに来るのか。


光の王、かつて他者とのかかわりを憂いその身を隠した。

今その力によって我が身を隠さん、『ミラージュ』」


俺の魔法が効果を発揮したのと、猫が地面に降り立ったのが同時だった。


猫は黄色の体を揺らしながら不機嫌そうに上空を見上げている。その視線の先にはホバリングしているウノ。


頭上を飛び回られたことを不快に思って下りてきたのか。


そうしてウノに一瞥をくれた後、まっすぐ俺の方に向かってきた。否、俺のいる方向に用があるのだろう、何しろ今の俺は見えていない(・・・・・・)のだから。


光魔法『ミラージュ』は周囲の光を屈折させて存在するものを見えなくさせる魔法だ。俺は森でよくこの魔法を使って狩りをしていた。動物にも効くのは実証済みである。


俺は姿を隠したまま音を立てないように似注意して猫に近づくと、小声で詠唱を唱えた。


「雷の王、その力がおよびしとき、汝のの意識を刈り取らん、『スタンガン』」


「ふにゃぁ!」


「おっと」


相手を気絶させる雷魔法『スタンガン』を猫の首元に打ち込むと猫がその場に崩れ落ちた。抱え上げると、その体は意外と軽かった。


すぐに疲労が襲ってきた。《気功》を連続使用しすぎたし、魔力も結構使ってほとんど残っていない。


まあ、達成感からか気分は良かった。


「依頼達成。早く帰らないとな」






成功報酬70ヴィシーとなっていた荷物輸送は早期依頼達成ということで増額され、計110ヴィシーの報酬になった。


猫も一匹捕獲したことで30ヴィシー。


計140ヴィシーが今日の収入だ。一日働いて2人分の生活費。結構上々な成果な気がする。


シリカは少し魔法の訓練をした後、書庫を見つけて入り込んでいたらしい。本は希少だしね。声を掛けるとすごく機嫌がよかった。

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お読みいただき有難うございます!
ダンジョン最弱の魔物は防御スキルで
最強を目指す

を連載中しています!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 建国から200年!暦はそれとは別!これらの数字には意味があるんでしょうか?過去に何があったのか明らかになる展開とかあったら熱い!これから楽しみにしてます。
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