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災厄を引き寄せる男  作者: 翡翠の花
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2. 突然の訪問者

冒険者組合(ギルド)ジスプロス支部の職員、ルシャは大きくため息をついた。


(まったく、昨日も書類作業で遅くまで残っていたのに今日は早朝の受付担当なんてついてないわね…)


そう思いながら一人も人がいないギルド内を見渡す。先月のニコライ地方の魔物大量発生を受けて、高位冒険者達は稼ぎ時と見てニコライ地方へ行き、低位冒険者達はニコライ地方への物資の搬送を手伝う依頼を受けて出払っている。


その影響で増えた仕事のせいで、連日の残業である。あ~あ、眠いわね。


「すいません」


「っつ!」


誰もいないと思っていた建物内で突然声を掛けられたので、ルシャはとても驚いた。20代半ばとはいえ、これでも5年、ギルド職員として働いてきた身だ。周囲への注意は怠っていないと自負していたのだが…。


ルシャが顔をあげると目の前には小さな男の子が立っていた。


「すいません。考え事をなさっていたみたいなので声をかけずらくて」

「いえ、大丈夫よ。」


突然の訪問にも驚きを最小限に押さえ、彼女は応対する。

と同時に相手の観察も忘れない。


……体に汚れは無し。服は所々汚れているけど破れてるほどじゃないわね。体に薄く筋肉がついているし、腰に刀もさしているから剣士の見習いかしら…。それになんだか顔つきが賢そうね。良いところの子かしら?


「今日はどんな用件かしら?」


「はい。冒険者登録です。」


「わかったわ。ステータスボードは持ってるかしら?」


「いいえ」


へえ、とルシャはわずかに驚いた。

ステータスボードは5歳程度で子供に持たせる家が多い。この子は見た限り10歳前後。かなり遅いような気がした。


「わかったわ。それじゃあステータスボードの取得と、冒険者登録を同時にしてしまいましょう。」


「外に一緒に来た子が待ってます。あと従魔が数匹。その子の登録も一緒にしたいですが構いませんか?」


「そうなの? ええ、問題ないわよ。」


「わかりました。呼んできます。」


そう言って少年は入り口に小走りで向かって行った。


そういえば、まだあの子の名前を聞いてないわ。

ずいぶんハキハキしゃべる子ね。


すぐに少年は戻って来た。後ろには同年齢の少女と数匹の従魔を伴っている。


少女は、少年と同じく黒髪、そして背丈をしている。

その後ろに流線型の生き物が三体。少女の頭の上に小鳥が乗っている。


ルシャは記憶からその魔獣の情報を思い出す。



ーーーーーーーーーーーーーー

スライム:Gランク

多くの地方に生息する魔獣で流線型の体の中に核を持つ。核が傷つけられると消えてしまう。各地で様々な進化形態が見つかっており、進化条件に解明に期待が高まっている。

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ーーーーーーーーーーーーーー

メタルスライム:F+ランク

スライムの上位個体の一種で、金属性の体を持つ。主に鉱山などで発見されている。

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べビースワロー:E-ランク×1

空を高速で飛ぶスワローの下位個体。生後間もなく、まだ弱いが今後の成長次第で強大になりうる。

ーーーーーーーーーーーーーー



「冒険者ギルドへようこそ。」


そう少女に話しかけると、彼女は少しためらいがちに答えた。


「シリカ……です。お願い…します。」


「こちらこそ、私はルシャよ。」


このやり取りを聞いて、少年はしまったと,いう顔をした。


「クロムと言います。名乗るのを忘れていました。」


「いえ、私も忘れてたし。

ところでさっそくだけど部屋に案内するわ。ステータスボードを渡しましょう。」


そういってルシャは受付を出て、歩き始めた。










ルシャと名乗った女性についていくと部屋に案内された。後ろからシリカもついてきている。

初めて冒険者ギルドに来たけど問題無く登録できそうでよかった。


案内された部屋には机と四脚の椅子しかない簡単なものだった。


ルシャさんは「ちょっと待ってて」と言い残して奥の戸に入って消えていく。


すぐに奥の戸から戻ってきた。


彼女の右手には大人の両手に乗るくらいの、厚みが親指くらいの鈍色の板が二枚乗っている。左手には片手で持てるくらいの水晶玉を持っている。


「お待たせ、それじゃあ始めましょうか。これがステータスボードよ」


「これが…」


ルシャさんがステータスボードについて説明してくれる。


ステータスボードは身元を登録した人の体力や魔力、スキルなどを表示してくれるもので登録した本人の魔力のみを識別して動かすことができる。また、表示する情報は任意で選択できるらしく自分の体力だけを選んで表示する……といったことも可能。おまけに一度登録してしまえば、登録者のレベルが上がるたびに自動で更新してくれる。




普通にすごいな……これ…。


「と言ってもそれはまだ誰の分も登録されていないけどね。」


「どうやって登録するんですか?」


「水晶玉に手を当てると水晶がその魔力等を解析してくれるのよ。」


「?」「?」


「あまりわかってなさそうね。でも簡単だから、まずクロム君からやってみようか?」


そういってルシャさんが水晶玉を目の前のステータスボードに置く。

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ダンジョン最弱の魔物は防御スキルで
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