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003冒険者というもの

003冒険者というもの


 流石に1ヶ月で飽きた。

 女にガッツかなくなってしまい、なんだか拍子抜けした。

 童貞、しかも女が欲しいタイプの童貞にとって、女への欲求がなくなってしまうとなんだか心に穴が空いた様な感覚になってしまう。

 

 とりあえず朝立ちを2回抜いてもらってから、俺は街にでた。

 

 □

 

 ふと、冒険者ギルドに顔を出してみた。

 半分酒場みたいな建物で、壁には大きな掲示板。

 張り出されている紙の文字はフィーリングだがなんとなく読めた。

 これが依頼書か。

 

 身分証のつもりで冒険者登録して、冒険者章を持っている。

 なんか、ドッグタグみたいなものだ。

 まるで身分証代わりに運転免許証取るみたいな感覚。

 

 やはり、女ばかりの生活はいけない。

 女ばかりの生活をしていた俺が言うんだから、説得力あるよな。

 と自分を奮い立たせ、依頼を受ける事にした。

 

 まず、街の雑用から。

 なるべく楽そうなのを。

 

 お金持ちのお家の庭の手入れというのがあったので、それを受けた。

 募集人数10人という事で、初心者の俺も安心。

 

 報酬は殆ど無いが、どうせ金はある。

 運動のつもりで受けた。

 

 □

 

 失敗した。

 

 周りが子供ばかりでちょっと恥ずかしかった。


 そうだよね。そんな感じだよね。

 みんなお小遣い稼ぎでやるよね。

 依頼主のおばちゃんが嫌そうな顔で俺に報酬を渡した。

 すみません。子供達への小遣いのつもりでやってたんですね。ホントすみません。

 恥ずかしくて泣きそうだった。

 

 俺は依頼主の目の前で、

「おつかれー! 今日はお兄ちゃんが奢ってやるぞー!」

「「わーい」」

 と媚を売った。

 おばちゃん笑ってくれたからコレでオッケーだろう。

 

 俺は金塊払いで子供達にたらふく奢ってやった。

 

 ついでにお家に持って帰れとお土産まで渡して返した。

 

 ホントごめんなさいね。

 

 □

 

 やはり、大人の男は冒険者である。

 いや、今も冒険者なんだけど。

 モンスター退治…… は無理かなぁ…… 薬草拾いからいこうか。

 

 □

 

 街の外は平地になっている。

 川がいくつか通っていて、その内3本は街を通っていた。

 

 はるか彼方に霞む山々。

 遠くに広がる森。あの森にモンスターがいるらしい。

 

 街の周りの平地は殆ど畑だ。川のおかげで水も豊富だし。

 その畑地帯を抜けて、草原に出た。

 依頼の薬草は森の入り口付近にあるらしい。

 

 □

 

 で、森の入り口に来たのだが。

「どれが薬草なんだ?」

 結構色んな葉っぱがあってわからん。

 

 困っていると、ちょうどそこにガチャガチャと装備を鳴らしながら歩いて来た冒険者達が通り掛かった。

 

「あ、すみませーん」

 お金でウハウハ、女を抱きまくった俺は、いつの間にか人に話し掛けるのにも慣れていた。

「あー? なんだ? ボウズ」

 俺ボウズってほど若くはないんだけども。

 

「えっとですね、薬草をですね。あ、依頼をうけようと、受けまして、薬草をとりに来たんですけど、この辺薬草あるんですよね? どれかわからなくて」


 話し掛けるのが苦手じゃなくなったとはいえ、コミュ力は低い。

 女相手には慣れたけど、コワモテのオッサン相手にはさすがにまだ難しい。

 

「おう」

 とコワモテのオッサンが顎をしゃくると、メンバーの1人がコッチに来た。

 その軽装の青年は、

「薬草って、カマキリ草?」

「あ、はいそうです」

「それなら…… これだ」

 青年が草を1つちぎって渡してくれた。

「そこら辺に生えてるけど、密集はしてないからね。採ってるうちにうっかり森の中に入らない様に気をつけて」

「あ、ありがとうございます」

「頑張ってね。じゃ」

 と青年は輝く笑顔で去っていった。

 

 ホントイケメンだったな……

 

 俺の胸の中にどす黒い感情が蠢いた。

 あいつ、多分お金使わなくてもそこそこいい女とヤレるんだろうなぁ……

 

 ……

 

 

 …………

 

 

 ………………おっと!

 

 ダメだ。

 あの人はあの人、俺は俺だ。

 俺は何も無いけど、金だけはある。

 それで女が相手してくれるんだ。

 それでいい。

 

 俺は薬草拾いに没頭した。

 

 

 ◯

 


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