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025ドラゴンってどうやって倒すの

025ドラゴンってどうやって倒すの


 

 壁が揺れた。

 

 ドラゴンが体当たりしてきたのだ。

 バラバラと細かい礫が煙を上げて落ちていく。

 女騎士に掴まれていなかったら俺も落ちていただろう。

 なお、まだ健在だった『黄金の右』が3機ほど落ちていったのが見えたが、人間は1人も落ちていない。この人らのバランス感覚どうなってんの?

 

 俺は城壁の下を覗き込んだ。

「こわっ!」

 城壁の高さは20m程あるがドラゴンは体高10m程。そこから首を持ち上げれば、結構近くまで顔が来る。

 足元にこんな巨体がいるのが恐怖だった。

 ガシガシと前足で城壁を掻きながら、そのドラゴンはまるで登ってこようとしているみたいだった。いや、本当に登るつもりなのか?


 ビビっている俺をよそに、魔法士達は火魔法を顔面に当てていた。

 呼吸が困難になったドラゴンは暴れ、身をよじって地面を転がる。

 モンスターが巻き込まれ、ブチブチと潰れて死んでいった。

 

 あれだけ火魔法を食らっていたらブレスを吐く暇は無いだろう。魔法士達もそのつもりでやっている。

 

 城壁も壊れていない。頑丈だなこれ。

 こんな巨体の突撃でも壊れないとか。

 俺の『黄金の右!』が無くても別に問題なかったんじゃね?

 いや、でも、ここに残った俺たちの目的はモンスターの数を減らす事だからこれで良いのか。

 別に逃げたってよかった。

 だけどモンスターが散り散りになってしまったら各地で被害が出て手が付けられなくなる。

 その前に叩こうという作戦なんだから、強烈な面攻撃でモンスター群を大量にミンチにした『黄金の右!』は効果あったのか。

 などと、自分の存在意義を少しでも守ろうとポジティブシンキングしている俺の周りでは。

「くそ!」

「まずいな」

「ええい! 『黄金の右!』斉射!」

 などと、ドラゴンが襲ってきた時よりもずっと慌ただしく人々が動いていた。

 

 ドラゴンが突っ込んで来たせいで、モンスターが散り始めたのだ。

 元々それを防ぐためにここに罠を張って待ち構えていたというのに。

 

 王都民は既に避難が完了しているし、この近辺の都市の城壁でもモンスターを防ぐ事はできる。

 だがそれでも城壁外の畑はやられるし、至る所で被害を受けると飢饉が発生しかねない。

 街に直接行かずとも、近隣で繁殖されると厄介だ。人間は城壁の中に篭って生きていけるものではない。

 

 さっさとドラゴンを殺してしまわないと。

 だが、さっきの龍撃隊の攻撃方法を見るに、直ぐに殺せるものではない。

 こうして火魔法で呼吸を奪っているのに、なかななか窒息しない。

 この巨体でそんなに呼吸器が発達しているのか? 爬虫類っぽいのに?

 下手すると体のどっかに別の吸気口があるのかもしれん。

 

「早くドラゴンを殺さないとモンスターが散ってしまいます」

 と見てわかる事を焦って口走ってしまう。

「だが、龍撃隊はおろせん。まだモンスターがいる」

 龍撃隊はドラゴンを殺す技術に長けているが、周りにはまだモンスターの群れがいる。

 後ろを気にしながら戦えるような相手じゃない。

 しかし、モンスターの群が完全に散ってしまってからでは、近隣への被害が出てしまう。

「それじゃあこの作戦は……」

「成功だよ。かなり減らせたしな」

 と女騎士は言うが、顔つきからは悔しさが滲み出ている。

 美女の悔しそうな顔とかなかなかクるものがあるけど、今はそんな事言ってられない。

 まだモンスターは1万近く残っている。

 これが近隣に散らばって、恵み豊かな森や平原で増えていったら一体どうなってしまうのか。

 

『黄金の右!』の球は既に十分な量がある。仕事がこれしか無かったから気合入れて頑張ったら余ってしまい、今度は暇を持て余してビビるだけになってしまった。

 今散り散りにになっていくモンスター群を狙って連続射撃をしているので、直ぐに補充が必要になるだろう。

 だがその前に、

「垂直にどれだけ飛べます?」

 俺の質問に女騎士は、

「ん? なんだ突然」

「教えてください」

「…… 全力でこの城壁の10倍というところか」

 垂直跳び200m?

 ステータス世界こええな。

「あの龍撃隊の方もですか?」

「あいつらはもっと飛ぶ。身体能力は私より上だ。魔法は私の方がずっと使えるがな」

 龍撃隊ってタンク職なんだな。

 

「作戦があります」



 □

 

 

 何のことは無い。

 ただの人間ロケットだ。

 

 龍撃隊の隊員を1人お借りして、俺と女騎士を抱えてジャンプしてもらう。

 そしてさらに女騎士が俺を抱えてジャンプ。

 すると400m以上の上空に到達する。

 そこで女騎士が水魔法で水を作り、それを黄金化してドラゴンに落とす。

 

 それだけの作戦だ。

 

「なるほど」

 俺の作戦を聞いた女騎士は一言そう言って、龍撃隊の所に行った。

 周りの魔法士達とも何やら話をして、王様もそれに混じっている。

 しばらく話をした後、龍撃隊から1名引き抜いてきた。

 そして、

「やるぞ」

 と一言。

 頼りがいのある女だ。

 

 □

 

 かくして、俺をお姫様だっこした女騎士を龍撃隊の1人が肩車するという謎のスタイルが出来上がった。

 周りの人達もチラチラ見てるし、王様なんて笑いそうになってるし。

 

 モンスター群はバラバラになってきている。

 もうドラゴン仕留めただけでどうにかなるとも思えないのだが、やらないよりはマシだ。

 

「やれ!」

 と、女騎士が言うと、突然内臓に圧が掛かった。

 そらそうですよね。

 200m手間から20mの壁にぽんぽん飛んでくるような人の全力ジャンプである。

 俺は歯を食いしばって耐えた。

 こんなに体がキツイ中でも、女騎士は肩車の状態から龍撃隊員の肩の上にすっと立ち上がり、そして体を屈めた。

 龍撃隊員の速度が落ちる前に、女騎士はぐっと踏ん張り、そして飛び上がった。

 どん、と妙な音が鳴った。

 一瞬視界に入った龍撃隊員の鎧が一部砕け散っていた。

 ちょっと! 味方に何やってんですか!

 だがその甲斐あってか、1段目より遥かに早いスピードで上空に上がっていく。

 こわいこわいこわいこわいこわいこわい!

 400mである。いや、もっと飛んでると思う。

 人力で東京タワーより高い場所にいるとかちょっとおかしいと思う。

 スカイツリーぐらいいってるかもしれん。

 

 速度が落ちてきたら瞬間、フワリと体が浮いた。

 暴風が下から吹き上げてきている。風魔法だ。

 女騎士はそうやって滞空時間を稼ぎながら、空中に水を生み出す。

 以前各家に黄金を隠して回った時の比ではない。

 あの時は5t程の水を苦もなく作り出していた。

 

 今空中に浮かんでいるこの水杭は何トンあるのか。

 学校にあった25mプール一杯分ぐらいあるんじゃないのか?

「2度は無い!」

 激しい風の中、女騎士が叫んだ。

 多分ギリギリまで魔力を使ったのだろう。

 この風魔法と、そして着地時に使う分以外全部。

 

 俺は手を伸ばして、水杭を黄金化した。

 一気に縮んだが、しかしそれでも今まで見たことがない巨大な黄金の杭が出来上がった。

 ぎゅるっと周りの空気を巻き込みながら、黄金杭は落ちていく。

 軌道がゆらゆらしているのは城壁の魔法士達が風魔法で調整しているかららしい。

 

 400m以上の距離を加速して落ちた黄金杭は、見事にドラゴンの胴体に刺さった。

 

 ドラゴンの体高は10mある。出来上がった黄金杭よりも高いので、黄金杭は完全にドラゴンの体の中に消えた。

 上空まで響く音からすると、貫通しただけじゃなく地面に埋まったらしい。

 衝撃が内臓をズタズタにしたらしく、ドラゴンはゴバっと派手に血を吐いて、直ぐに動かなくなった。

 目測ではあるが、本当に25mプール分の水だったら300tを超える重量だ。おまけに尖っている。

 ドラゴンの鱗とはいえ紙装甲だっただろう。

 

 

 2体目撃破。

 

 着地して既に壁の上に戻っている龍撃隊員が見えた。鎧の肩周りが激しくぶっ壊れているけど無事そうだ。

 

 女騎士がちゃんと着地してくれるのはわかっていても、俺は悲鳴を上げながら落ちた。

 

 

 ◯


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