表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

壁を這うもの

作者: 藤木 大成

ある夏のことです。A小学校の5年生は臨海学校で伊豆の海に来ていました。

 その日は天気も良くてゆうじくんたちは、昼間は海で泳いだり、砂浜で遊んだり楽しく過ごしました。

 夕方になりホテルに帰ってからも、ご飯をおなかいっぱい食べて、温泉に入ったり、初めてのクラスでの旅行を楽しんでいました。

 9時になり消灯の時間になりました。ゆうじくんたちの部屋は6人部屋でした。

みんな楽しくて消灯時間の9時をが過ぎているのにわいわい騒いでいると、

「こらっ いつまで騒いでいるんだ 早く寝なさい」

 と担任の黒木先生が入ってきました。

 とたんにみんな静かになってふとんに入りました。

 ふとんに入ってからもゆうくんは興奮して、なかなか眠れませんでした。

 それでも1日めいっぱい遊んでつかれていたせいでしょうか、いつの間にかうとうとして寝てしまいました。

それからどれくらいたったでしょうか、ひそひそと誰かの話す声で目を覚ましました。それは先に寝ていたはずのまさおくんとかずきくんの話し声でした。

 「どうしたの」

 ゆうじ君がたずねるとかずきくんが

 「さっきから何かへんな音がするんだ」とおびえた様子で答えました。

 耳をすますとたしかに ペタ、ペタとか ピチャ、ピチャという音が聞こえました。

 よく聞くとその音は、海に面した窓の方から聞こえてきます。3人は怖くなって寝ている3人を起こしました。

 最後に起きたたけしくんが、

「なんだよ うるさいなあ、まさお、おまえ窓を見て来いよ」

 と、怒ったように言いました。

 まさおくんは恐る恐る窓に近づき、ブルーのカーテンを開けました。

「わああ」

 まさおくんは叫び声をあげてしりもちをついてしましました。

みんなびっくりして窓をよく見てみると 窓にはいくつもの手のあとがついていました。みんなが怖がっているのにたけしくんは 窓のに近づくと

「なんだこんなの、誰かがつけたんだろ」

 と言うと、いきなり窓を開けて顔を出しました。

「ほら 誰もいないじゃないか」と大きな声を上げました。

 そのとき、たけしくんの頭の上から、ぽたりと何かが落ちてきました。

 びっくりして上を見ると、ホテルのかべに何かがいました。

 それは水着を着た少年でした。

 まるで今海から上がってきたばかりのようで、体から水がポタポタ落ちてきているのでした。

 恐ろしさのあまりたけしくんの体はかたくなって動けなくなってしまいました。

すると  上を向いていたその少年は振り返り恐ろしい顔でたけしくんのことをにらみつけると、まるでクモのように壁を這いものすごい速さでたけしくんに向かってきました。

「うわあー」と言う声とともにたけしくんは2かいのそのへやから落ちていきました。

騒ぎに気付いた先生達が部屋に来た時には、みんなの悲鳴や泣き声で大騒ぎでした。

 結局、たけしくんは救急車で病院にはこばれ、臨海学校はあと二日を残して中止になりました。

 9月になって2学期が始まってもてもたけしくんは学校に来ませんでした。ゆうじくんが黒木先生に聞いてみると、たけしくんは、お父さんの都合で夏休みのうちに遠い所に引っ越したということでした。

でもそれは本当かどうかわかりません。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本当にあった恐い話風ですね。でも創作ですよね? 雰囲気はいいと思います。淡々とした語り口が、怖さを増幅させています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ