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第21話 手に職つけた……か?

実は、世界樹(ラセツ曰くエルダートレント)戦辺りで初期の予定から話が変わってるのです。

ザッザッとした音を立てながら下駄で歩き、時折ばさりとボス装備のマントが風に舞う。

歩く姿は、背筋が伸びて実際の身長以上に大きく見えるような錯覚を起こす。


時折、スッと目を動かし辺りを見合わすその姿に、辺りの傭兵は戦慄するか、どのぐらいの力量を持つかを測ろうとしたり、思わず見入ってしまう。

此の場での主役は俺だと言わんばかりの雰囲気は、視線を集めることが当然とばかりに辺りを満たしていた。


が、


渦中の男、ラセツの心中に限ればそのような緊迫とした雰囲気など霧散することは間違い無しである。

今、此の男の考えていることは幾つかあるが、


・旅商人 ジェフに奢って貰う食事について。


・組合にもらった、潜在能力開花盤…傭兵証についての興味。


に占められている。

今のラセツは言うなれば、そう。

新しいおもちゃを買ってもらった子供であった。

頭の中は見た目にそぐわぬ花畑。


バカという訳では無い訳では無いが、浮かれきっていた。


「ここらで、構わないか?」


人通りも糞も少ない場所に留まってラセツはいじり始める。


名前 ラセツ アッキ


種族 人間


年齢 89才


所持金 無一文


職業 無し


取得済みスキル


羅刹流武術 神眼 竜眼 邪眼 吸血 卷属作成



取得可能スキル


破魔矢 伝授 小器用



特殊スキル


巨人殺し


竜殺し


種族スキル


超代謝 飢餓 飽食


一族スキル


*▪️の運 職人の才 放浪 好奇心 生存力 求心力



基礎能力値


魔力 12 魔力耐久 89 防御力 940


攻撃力 720 素早さ 280 技術 1200


ラセツは、まず職業を弄ることにした。

これをタッチすると……


「くそッ! だから俺はタッチパネルは反応しないんだよッ」


ラセツはタッチパネルに弱い。

未だに携帯電話を使い続けているのは、壊れやすい事を嫌ったと言う事と、反応しないと言う事が理由である。


「は、反応した!」


職業の所を乱打した為に、

職業の所にタブが開いたが、そのまま押してしまう。


結果。


「あっ!」


職業

→無職

大工

武術家

エセ侍


と開いたが、


職業 無職


これで良いですか?yes/NO


職業 無職


に決定されました。


「や、やらかした!」


もう一回、選べないのか?


ポチ。


職業 無職が選択されています。


「よし、変更来い!」


職業 無職について説明を出しますか?


yes/NO


「嘘、だろ?」


『決定された様だな、ラセツ』


「なんだよ、プロメテウス」


『もう成ってしまった物は仕方あるまい?』


「ひ、他人事だと思って……」


『得たものを見てどれだけ活かすか、だろう?』


「ちっ」


yes


職業 無職


しがらみも無く。

束縛も無く

上司も無く


愛も無く

逆に考えると自由もない様に感じる

ナイナイ尽くし。

その上に仕事も無い者。


「……」


『……くくっ。』


「おい、今笑ったろ」


『果て? 何のことかな?』


「そうか」


『そうだ。そんな事よりどうするべきか考えるのが建設的ではないか?』


そう言われて、思い出す。


「おいおい、マジかよ」


『……』


「マジかよッ!」


『……』


「ああぁぁああ! もうダメだ」


思わず頭を抱える。


『くくっ』


「今度こそ笑ったろ」


『笑ってはいないと言っているのにしつこいな』


「本当か?」


『本当だ』


「そうか」


『そうだ』


「なら、良い」


チョロすぎだ。


『…くくっ』


「お前…もう良いや。もう良いよ。こっちに比べたらさ。はぁぁああ」


一拍、


「もういい。次いこ、次」


取得済みスキル


羅刹流武術 神眼 竜眼 邪眼 吸血 卷属作成


「分からないのは、吸血だけか?」


ポチ。


吸血


血液から手に入る成分だけで生きられる様になる。

しかし、脂肪などは手に入らない為、特殊なものでないと痩せ細る。


「…ヴァンパイアかよ」


ラセツは血をよく飲んでいるからこう成ったのである。


それで落ち込むのであれば、自業自得であろう。


取得可能スキル


破魔矢 伝授 小器用 必中


これらは全て取得しておく。


伝授と小器用は、教えるのが上手くなる事、小器用はそのまま小器用になる。


破魔矢だが、ぶっ壊れ性能である。


破魔矢


矢と詠唱を引き換えに破魔矢を精製。

破魔矢なので鏃が無い為基本的には当たったら痛いだけである。

しかし、悪霊怨霊人に害なす、亡者や生ける屍等であれば一撃で覆滅する事が可能。



そして、必中。


必中


詠唱しながら弓を弾き、詠唱し終えた後に射れば目で見える所に狙い違わず当たる。

踏み付けられたりして止められようとも、である。

中々使える。しかし、詠唱が長い。


特殊スキル


巨人殺し


竜殺し


巨人殺し


自身より強い敵と相対した場合、自身の運が強化、身体能力が上がる。

反対に、敵の運は下がり、身体能力も自身と相手の差の大きさによって変わるが、下がる。


詠唱が必須


竜殺し


竜と相対した場合に自身の運が強化、身体能力が上がる。

反対に、敵の運は下がり、身体能力も竜としての純度によって変わるが、下がる。


詠唱が必須。


「…もう良いや。ジェフの所に行こうかなぁ」


~✴️


ここはラセツが築いた町と言うか都市と言うか、から比較的足の遅いラセツが三日かければ着く程度である。

まあ、これはあくまでも都市の端っこからテレッシアの辺境までであるからそこまで近いとは言えないのかもしれないが。


因みに、都市のなかで最も近い場所は“巨城、羅刹城”と言う名前の古民家作りの一軒家である。テレッシア王国。


長い歴史、初代王の先見と思想から栄えてきた、誰が見ても…敵国が見て尚強国とされていた。

かつては。


現在に於いては先代王フール デ テレス、まだ現国王が決まっていない為に先代とは言えないかもしれない、が此の時勢に於いては暗愚であった為に、後継者に分け隔てなく同じ教育を受けさせ、全員へ期待と自身の後継者として育って欲しいと言う思いを抱いていた。


恐怖の対象でもある白髪に対しても。


これが、此のような世界ではなく、日本のような国であれば良かっただろう。

しかし、ここは死が何時も隣り合わせであり強い繋がりが無ければ崩れかねない土台しか持っていなかった。


それは、強国であるテレッシアも例外ではなかった。

古くよりその繋がりは、長男か優秀な者を長と決めその者に従属に近いはっきりとした立場を造り出すことによって生まれていた。


しかし、全員に長としての教育を施せば不和の原因となりうる事は火を見るよりも明らかであった。

何よりも、先々代王が国を一纏めにするために有力な貴族衆数家とフールを婚姻させたことが裏目に出たと言うのもある。


何せ、後継者の母親が全員違うと言うのだから。

本来教育は教育に携わり続けたプロが居たのであるが、それらを古いと言って自分の理想の通りに動く教育者を付けたのだ。


それがまた悪かった。

それぞれを長としての教育を施すためには一人一人違う教育者が付くのだが、それはそこから最も優秀な者を正統後継者にすると言う事だと誤解が広まった。


フールは民草の声は聞けても、近くに居るものの声は聞かなかったと言う悪癖も重なり、後継者の母親の実家同士の仲が悪くなりその家の派閥にはいる小物達も気に入られようと必死に動いたのも不味かった。


結果として、主要な者達…貴族やその従者には被害が出ていないものの、その領民が村ごと虐殺されたり、穀倉地帯が燃えることが起き始めた。

治安は悪化したものの、何故かそう言う点には才を見せたフールの手腕によって内乱は起きず民も緩やかに生活が苦しくなるだけであった。


しかし、先日とうとうフールは死んだ。

享年50と言うそこそこの年であった。


これによって、テレッシアは内戦に向けて加速し出した。

後継者を決めるために。


亡き父の思いと思い込んでいる、思いに報いるため…そう。自身の後継者としての格を見せつけるために。父が願っていた後継者に成るために。


ー…ーー…ーーーーーー…ーーーーー


「そうか、奴はおまえから逃れたか…」


「……」


「いや、責めているわけではない。

お前らから逃れられたのであれば誰がやっても同様であっただろう?」


「ハッ」


「で、あれば良い」


問題は、


と呟き


「妨げた者がどう動くか?であろう」


「…」


「そうか、旅人の様子であったか」


少し考え


「その者が共にいる間は手を出さぬが良策か」


と呟いた。


~~✴️


ジェフと合流したラセツは急に


「ふぅむ。成る程ね」


と、呟くと


「如何なさいましたかな?」


ジェフは尋ねる。


「いや、なに。離れた方が安全かと思いきや一緒に居た方が良いと知ったんでね」


「それはどう言うことですかな?」


「なに。エキスパートは雇い主こそを警戒し、雇い主は俺の事を警戒しているものの手は出さないとさ」


「どちらでその情報を?」


「視ているだけさ。この眼でね」


そう言って、碧眼を人差し指でチョイチョイと指差す。


「はあ」


「まあ、良いさ。とりあえずは平穏と言うところだろう。

エキスパートに眼を付けておいて正解だったな」


「?」


「もう眼は良いかね」


そう言って一度目をつぶり、開けると眼は黒い瞳に戻っていた。


「なっ!」


「ああ、こっちが本来の目だから」


「魔眼ですかな?」


「いや、魔眼じゃあない。が、似たようなもんだ」


「ずっと使用していると痛みが来ると聞いたことが合ったのですが違いましたかな?」


「いや、俺も昔はそんなんだったからあってるとも。

鍛えれば案外行けるもんさ」


ラセツはそう言ってジェフの馬車に乗り込むと


「なっ」


寝起きにおもむろに入られた事で声をあげたエレンを一瞥した後に、その横に座り目を閉じる。


……さてどうしたものかね。

流石に白髪少女を見殺しにするのは全国1000万の白髪同好会の面々に面目が立つまい。


出来ることならば、その容姿に自信を持って貰ってその上で目立つ立場に立って貰えば、今は白髪な事に悲観的な隠れ白髪少女であろうとも、笑顔を持ってくれるに違いあるまい。


いや、むしろだ。寧ろ、だぞ?


こいつが、このちんちくりんが王にでもなれば、その意識を変えられるどころか、そんな子供を持った親からしてその国に来るんじゃあないだろうか?


いや、来るに違いない。親であれば子供の幸せを願うものだ。

もしこの論を聞いて反発する親がいればそいつは親じゃないと言うことであるから、反論は受け付けないがな。


母数が膨大になれば、それだけ数は増えるのだ。


フフハハハハ、国を作るのも有りかと思ったが乗っとるのも良いじゃあないか。

此が出来ねば、神への復讐も出来まい?

これは一種の通過点なれば、我はそれを容易く乗り越えて見せようではないか!


そのときの緩んだ顔を見てエレンは、気持ち悪いな、と考えていたが得てして現実とはそう言うものである。

主人公の謎のモテ具合は、発揮しないようである。


ー…ーーーーーー…ーーーーー


馬車に揺られて結構な時が経った。

この馬車は油圧式バンパーはおろか、板バネすらないようだ。


車輪も木のモノであり損傷が激しそうである。

特に街道は整えられているとは言え石畳すら無い。

いや、木の車輪、でこぼこな石畳であるぐらいならば、無い方が良いのだろうか?鉄輪を付ければ安定するか?

いや、重くなるしな。


ならば、車輪に馬とかの革を張り付けるか?ムムム。


ラセツは考える。


遊牧民族と一時は暮らしていたこの男は、裸馬でも乗りこなせるが、快適さは求めていた。


「夢は広がるな」


「何がよ」


「ああ、この馬車の……そう言えば馬は乗れるか?」


「御者ってこと?」


「いや、そうじゃあなくて、直に跨がれるかって事」


「はぁ?何を言っているのよ。直に乗るなんて事有るわけ無いでしょ」


「ん?」


……まさか、まさかだぞ。


「戦争の時に馬は何に使う?」


「そんなの物資の供給とチャリオットに決まっているでしょ」


チャリオットだと?


マジかよ。


チャリオットは馬にリアカーをくっ付けた様な物である。


「アレクサンドロス大王かよ」


ひょっとして、ひょっとすると。当たり前かもしれないが、地球とは違った文明の進化をしているのか?


鉄器が在るのは分かった。しかし、鐙も鞍もないのか。


ふーん。


「上手く行けば案外武力で行けるか?」


チャリオットが消えた理由は、結構色々あるが、戦力としての価値の低下は間違いなく有っただろう。チャリオットの強みは機動力。


しかし、騎馬も圧倒的な機動力を持つ。

それこそ、チャリオットを圧倒的に凌ぐほどに。


人材か。

まあ、間違いなく今回には間に合わないだろうよ。

国落としの方針は、民の信頼と人気。


そして、怒りの矛先を国に回す。

幸い、今の荒れ具合であれば、村を幾つか助けて人気を集めた程度でも変わるな。


劇的に。

何よりも嬉しいことは、王都は案外近いこと。


そして、王都には有力者の過半数以上が次期王に取り入ろうと仕事もせずに集まっている事。

まあ、本人にして見れば今後数十年の栄華に関わっているのだから、真面目な仕事であることは間違いない。


国土の一ヶ所に集結していることが仇になったな。

人質取り放題だぜ?


有力者も今は世代交代中。

馬鹿なもんだぜ。今こそ全力を見せると言う息子は、この機に乗じずに見届けるべしと言う有能な当主を疎ましく思って弑逆。

弑逆しなかったものは有能な次期当主か、当主が病死していたか、当主共々これを機だと思っている者か……


弑逆した奴は阿呆だから足をすくわれない程度に注意しておけば良いか。

計画と平行させて行けるか?


ならば、有能な次期当主とある程度の有力者を手に入れておくか。

目的地のビミ伯爵は、有能らしいが爵位に似合わず腰が低いらしいと聞く。


……美食の領地で有名らしいし。


最後が本命なのではないかとは、誰も言わない。


ラセツ→やってやるぜ!


プロメテウス→知的好奇心が刺激される


フールは生まれてくる時代を間違えてしまっただけのうっかりさんです。

ラセツの様な真正の馬鹿ではないので同情の余地があります。


最大の悲劇は、フールの人を見る目が確かすぎたせいで講師は全員優秀だったこと。

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