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第18話 名乗りをあげよ、たからかに

エキスパート。

その道の経験を多くしたものや、特化した専門的なもの。


水中でのアッガイ。

「成る程。どうやら、私の目は節穴だったようですな?」


旅商人、ジェフ・セイルは悔しげに呟いた。


「ふむむむ、商人としてそこそこ頑張りましたが、まだ目利きが甘かったようですな」


ジェフは己の自信を裏付ける目利きが甘いと、自分でわかる状況にいることを悔しく思った。

難癖程度であれば、容易く切り伏せることは可能であったが、こうまで明らかであれば、何も言えない。


実際にはベラベラ話しているが。


「…」


元護衛は何も言わない。


「私を狙う理由は、何でしょうか

流石に私の店でも私の命のご注文は承っていないのですがな?」


分かっているのに敢えて尋ねる。

こういうちょっとした軽口等で相手の感情を動かすのも商売人としての醍醐味である。


少なくとも、ジェフはそう考えていたが、

しかし、どうやら呑気に話をしていられる状況でもないようだ。


恐らく、仲間であろう先程感じた気配が一つ二ついや、三つであろうか?

感じる。


「私を殺すにしては念の入った事ですな?」


自分に何か御大層な理由がありましたかな

そう考えながらも、


「ふむ、どうしましょうかな」


今、生き延びることは出来そうにも、無い。

心残りは、三つ。


一つ目は、未熟な自分を鍛え直せないこと。


二つ目は、馬車の少女…彼女はこの世界の禁忌の色である白。

白色(奪われた色)を持つ少女がどうなってしまうか?


三つ目は、自分が狙われた理由が知りたいと言う好奇心。


さて、困りましたなぁ


「お前自身は…あくまでも、おまけだ。

お前の連れ出した娘にこそ、理由がある」


やっと口を開いた元護衛の理由を聞いて、不思議に思う。

何故、わざわざ、国外で?と。

そして、気づく。


昔、得意先で聞いた気がしますな。

確か、それはテレッシア王国の後継者の一人のことだ。


曰く、その後継者は、後継者であって後継者にあらず。


曰く、今は亡き前王(まだ今の王は決まっていない。)によって追放された、と。


曰く、それは前王の情けでありそれによって政争で殺されないのだと。


曰く、追放することに、殺さないことに反対したものはいない。


曰く、その代わりに誰にも冷遇されているのだ、と。


曰く、白色だから、だと。


「ああ、そういうことですかな。はっはっは。白は殺された場所をなくしてしまう、でしたかな?」


どうやらジェフは自分にとって、少女にとっても最悪なことを、行ったようだ。テレッシア王国に限らないが、多くの国は白を恐れている。


何故ならば、かつて南の地、それは最果ての南の意味をつけて、エンザスと呼ばれる国があった。


しかし今、そこは人はいない。

かつての活気溢れる国は、邪族の国となった。


一人の白い髪の毛の女性を殺したからだと言う。殺した女性は甦り、世界の一面を白く染め上げたのだ、と。

だから、白を殺すときは、自分の関わりの無いところで行うのである。


つまり連れ出したからこそ、この状況になったのだろう、と。

危ない物を家におけぬと捨てたはいいが、慈悲深き物を自称するものがそれを落としましたよ?と家にもって帰ってくる。


家にいれる前に壊せば、帰ってくるまい?と。


「理解したか?ならば、苦しまずに……」


元護衛は剣を振りかぶった。


…ーーーーーーーー…ーーーーーーーー


ラセツは、そんな場面を見ながらも静かに矢をつがえ、


ひょうっ


と、射る。これでもう4射目である。


狙うは、元護衛の剣。……を持つ手である。


狙った通りに吸い込まれるようにして入った矢を見て、


ヒュウ!


と口笛を吹く。


この男の特技の一つで、ギリシャのとある場所の口笛で会話のできる人達に教えてもらった口笛の吹き方である。


他にも、手袋の上からもフィンガースナップ(指パッチン)出来るなどと言う地味にすごい技が多々ある。


驚く元護衛の三人と、旅商人、そして馬車の中の、夢にまで見た白髪娘を見ながら、ラセツはいそいそと法螺貝の支度をする。



…ーーーーーーーー…ーーーーーーーー


「んなっ!」


ジェフが思わず声をあげると、元護衛たちは瞬時に跳びずさり、矢の飛んできた方を目を細めてみる。


逆光なのだ。


しかしそれでも、誰かがいることは分かる。

見た限りでは、頭のおかしいほどに長い弓、長い髪の毛が分かる。


元護衛の面々は警戒しつつ、作戦を妨げられる訳にはいかない、


と瞬時に動こうとする。

しかし、その刹那。


ブオおおおッンォォォンンンォォ


と言う高低入り交じった爆音が響く。


その後に訪れる静寂。


それによく響く声が、幕を下ろす。


「やぁやぁ!我こそは!無防備でか弱きものを守らんとする旅のものッ!遠くば音に聞け!寄らばその目をかっぽじって見るが良い。」


目はかっぽじれるものではない。


「ワレこそはッ!ラセツ!ラセツ・アツキなりッ!その名を恐れよ!我こそを恐れよ!」


逆光で顔は見えないが、小高い丘にて名乗りをあげるその男(目立ちたがり)に怯んだのはジェフを含めその場の全員であった。



~✴️


決まった。

ラセツはそう思った。

いや、確信していた、とすら言えるだろう。


小高い丘に登ることによって、注目、そして見上げさせることによって一定以上の畏怖すら集めただろう。

古来より、ヒーローは高い崖なりビルなりに登場してから飛び降りる。

そう相場は決まっているし、ある程度遅くなくてはいけないのだ。


本来なら人死にの一人や二人が出てからの方が劇的で、一人二人を殺せる相手を倒した、と相対的に評価が上がるものであるがあの男(自称・旅商人)はどうやら、()()()のようだ。


その為に、傷一つ付けさせないようにわざわざ伏兵を先に排除し(殺してはいない)、それでも劇的な感じを演出しようとしたら、いきなり切りつけようとするするのだ。

極めて理知的な平和主義者である俺からしたら、ふう。


「貴様、どこの手の者だ?」


元護衛は、低い声を出す。

ラセツは、今どの様な答えを出すかで多くが決まるだろう、と考えた。


(まず、大嘘をつく。

「俺は天から遣わされた正義の使者さ!太陽の使者じゃないさ!」

滑るな。


本当のことを言う。

「俺は異世界から来た、女神ディネアに攫われた男だ。」

おや?

嘘くさいなぁ。


「ふはははは!我こそは全てを滅ぼす。ディザ・スター!」

名前がイカす。

いや、ここはいっそ


フォロボスだ!

の方が、ひと昔感が出ていていいかもしれない。)


この間、およそ三秒。


「…」


「何も語らないか?」


元護衛は、あの無駄にハデな登場を己の身分をさらさないための布石だと考えた。

あそこまで白昼堂々と名乗りを上げ、姿を晒したのだ。

これは裏の者では無いに違いないと、余程疑り深いが頭の足りないもの以外の普通の者では考えたに違いない。


しかし元護衛は、エキスパートであった。

文中で一切名前が出ないほどに個人情報を漏らさず、姿形すら表されず、性別すらぼかし、そして

六人組で襲ったと言うのに、数行読み飛ばせば、あたかも伏兵の三人と自分しかいないように錯覚させることすら可能な優れた者であった。


だからこそ、元護衛は、


いや、敬意を表してエキスパート(元護衛)と言うべきエキスパートは、エキスパートであったが故に、邪魔立てをしたこの男(ラセツ)の大胆不敵な、敢えて表に出ることによって裏社会の者である事を隠す、と言う策を実行しているのだと

思った。


これは、全くの勘違いなのであるが。


しかし、


( ) 未知の敵との遭遇。

( )

( ) 剣を持っていた手の負傷を気にせず指示を出す

( )

( ) 少ない会話とも言えない会話

( )

( ) そこから素性を推理

( )

( ) 交渉の手口を探る


この様なことが可能だったのは、


このエキスパートが紛れもないエキスパートであり、そんなエキスパートがエキスパート特有の経験則から来る勘と言うエキスパートである強みを最大限に使用して、この道のエキスパートであるエキスパートがこのような状況で、謎の男(ラセツ)を相手取るのがとてつもなく不利だと言うことをしっかりと理解していた。


これが素人であれば、目的(白の確保)を達して後はどうとでもなれば良い。

目的を達成できないのが最悪だと考えただろう。


しかしエキスパートは、エキスパートであった。

エキスパート足る者、美学、そして後の事を考えねばならない。


そうエキスパートは考えていた。


エキスパートはその為に、エキスパートと呼ばれるにふさわしい数多の経験を漁り、

この場合は帰還するしかない。


そして、この事ととてつもなく怪しい男(ラセツ)の事を伝えねば。

何より自分達の素性を知られぬようにせねばならないと、エキスパートは考えた


だからこそ、エキスパートは裏の者であると確信しても下手に追求して、


「知られたのならば」


等と言われる訳にはいかない為に、分かっていないような振りをしたのだ。


「…分かった。今は引こう。だから、部下を返して貰おう。」


下手にへりくだれば、攻められる。

そういう人の性質をエキスパートなエキスパートは知っていた。


人など獣に近いのだ。

背を向けて逃げれば追いたくなる熊のような生物こそが人なのだろう。

エキスパートは考えた。


だからこそ、エキスパートは敢えて対等なように振る舞う。

エキスパートにとって長い、長すぎる時間がたった。


「良かろう。ここで一旦、手打ちにしよう。

此方もそちらも誰も殺していないのだから。」


一種の傲慢さすら漂わせる男の発する言葉に込められた力に内心驚きつつ(裏世界の人間の実行班はかなりの者でないとこういう空気を出せない。)も、


「こちらには被害があるようだが、致し方あるまい。」


そういい放つ。

エキスパートにとってエキスパートらしくない捨て台詞を吐くことなど意図せねば吐けない。

意図すれば吐けるからこそエキスパートはエキスパートであるのだが。

最後までエキスパートな空気を出さねばならないのだ。


同じエキスパート同士であれば、お互いに敬意をもって戦うからこそ、こういう言葉が重みを持つのだ。

もしこれが、エキスパートを越えた気になっている二流であれば。


最後に勝ってこそ。


だとか、


騙されるのが悪いとか言いながら襲ってくるだろう。


もしくは、戦いに美学やマナー、敬意等要らないとかいう、狂人や殺人鬼であれば、そんなことすら言わず当然のように襲ってくる。

しかし、真なる狂人。

生き死にすら、己の人生とするもの。


平和を望みつつ、平和に生きられぬものであればこそ、通じるものもあるのだ。


「ふむ。先に仕掛けたのはそちらのようだからな。まあ、駄賃だ」


成る程、駄賃か。

まさしく。

こういう会話を楽しめるのも、久しぶりだと思いつつ、


「撤退」


エキスパートはエキスパートに相応しい引き際で退却した。

ジェフ→な、なんだ


襲撃者達ーーーー→再びあいまみえようぞ


ラセツ→決まった


龍生→読む分にはともかく、書いているとエキスパートの意味が分からなくなります。エキスパートを彼とか彼女とか書いちゃうし。

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