第12話 ダンジョンは続く
設定詰め込み過ぎた感
「ふっふーふー、ゲフッ、かふっ、ヒューヒュー。」
勝ち残ったのは、この男であった。
辛勝と言うのも烏滸がましい程の、激戦。
大樹は、ゆっくりと動いて火を起こし、突き刺さっているツノを引っこ抜くと同時に《治癒》を掛けながら燃えた木を突っ込む。
そして、気絶した。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜**〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
「ぐ、うううう。生き、残った…か。」
大樹はボソリと呟きながら、傷口を見る。
そこはもう、塞がってはいたが跡がしっかりと残っていた。
「やはり、あのクラスになると俺の肉体に傷跡を残すのか。」
大樹はぽりぽりと傷跡を掻きながら竜や金猪を思い浮かべた。
それ以外で負った傷は全て傷跡すら残さず治っている点から考えれば、そう言う結末になる。
何より、共通点で金猪、灼竜、エルダートレント(正式名:世界樹)、怪異なる牛。全てで、戦闘後に体に激痛が走った。
その結果、毎回体が変わっている気もしなくも無い。
灼竜では、体温が低くなると体が動かないが、熱や火に対して強くなった。
金猪では、燃費が悪くなる代わりに食い溜めができる様になった。
髪の毛とかが切れにくくなったり、異常に伸びるのが速くて一定まで伸びると伸びなくなるのもあそこらへんでだ。
元々は短い方だったが、今では腰まである。
妙にツヤツヤしていて不潔感を醸し出さないだけ良しとするべきか否か。
エルダートレントでは……何か変わっただろうか?
傷の治りの速度ははどのくらい寝てたか分からないだけに不明だし、嗚呼、体臭が臭わないのはあの時からか?汗も中々出なくなったし。
……汗が出なくなった。これって恒温動物としてどこかおかしく無いだろうか。いや、冷えると動けないのもどうかと思うが。
まあ、見た目は変わって……変わってるよな、髪伸びたし。
に、人間の範疇だし、おk?
流石に人間やめてまでディネアに一矢報いようとは思ってない。
本末転倒だから。
「まあ、いっか。為せば成る、なる様になれだ。無二の友である巧も結果は後からやってくるって言ってたし。あれはきっと、突っ走ればいい結果がくるってことを言いたかったんだろうよ」
そんな訳はない。
ちなみに、無二の親友が巧であれば坂崎のことは無双の友である。
まあ、どちらも二つと無いと言いたいが為に小学生の頃に言い出した事である。
「デカイから大味そうだけど食べてみるか」
〜*〜*〜*〜*結果〜*〜*〜*〜*〜*
「筋張ってて硬い。フォークで筋をぶすぶす刺してからやったのは美味いな。肉自体には旨みがある。筋は硬い。うん、筋は硬いな。煮込みたい」
どんだけ筋が硬いことに拘るかは知らないが、やはり仕込みの時にフォークは使えるな。と、しみじみと思った大樹であったが、
「荷物壊れてないよな……?」
食後は荷物を割と真剣に確認をする。
一つ一つしっかりと点検していかないと死にかねない事があるのだ。
『安全十第一』を掲げる男である。
特に弓は怖い。
元々の作りからして短縮作業の突貫工事。
主婦の愛する時短で作り出されたものなれば、しっかりと点検せざるを得ない。
嘘だ。
主婦の時短が無駄を省く事であれば、これはただの手抜きである。
安全第一を掲げると言っておきながら時間重視な事に矛盾及び舌先3寸じみたものを感じるがこの男、及び白鷺の一族はドジ踏んだとしても、大概の事は『喉元過ぎれば熱さを忘れる』といった様な性質である。
よく言えば、へこたれない。側から見れば学習しない、懲りないと言ったところだ。
それでいて、案外小さい事に気を囚われ続けて後悔し続けると言うのだから始末に負えない。
「これで…取り敢えずは、良いか?」
大樹は呟いて、下の階層へと続く階段を下りる。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
第二十三階層から第三十一階層は羊だった。
羊は突進が痛い上に、生命力が凄い。(大樹の痛いは軽自動車に挽かれている様なもの)
刀で斬っても、再生して向かってくる。
お陰で、槍で刺す事しか出来ず刺してすぐ抜くとか、薙払って足を折る、薙払いを飛び越える奴に直ぐにもう一度薙払い。
突きは一秒間に三回以上とかいうかなりの無理難題をこなしている内に剣豪に憧れていたはずの大樹はいつの間にか槍の方が圧倒的に上手くなっていた。
それに比例して、江戸時代中期に女性主流となっていた長刀も上手くなっていた。
まあ、長刀は薙刀とも書くし薙払いは刀身がでかく重い長刀のほうが強いのだが・・・・
そして何より重要な肉は、とてつもなく美味い。
生前の生命力をお前にやろう。と言わんばかりの疲れも吹き飛ぶ味に
ジンギスカン。ひゃほう!
という感じだ。
第三十二階層の羊のボスは苦労が分かるように言おうか…。
大樹は三十一階層にいるときに、次の階段の前で、
「よっし。次は三十二階層。今までの傾向からして羊のボスだな」
降りてみれば……
“キュエエエエエエエエエエエ”
「っ!羊の声じゃねぇ!でかいっ!怖っ!」
恐ろしくでかい羊がいた。
大樹を確認すると、突進してきた。
槍を構え脳天めがけて六連発。
会心の一撃だったが、
「げべらっ!がふっ」
突っ込んでくる羊。
「がふっ!くそ。骨は……折れてない。槍も持っている。次は、斬り落とすか……」
そして、再び突っ込んでくるボスに一撃。
頭を落とした。
「や、やったか?」
すると、その言葉が引き金になったかの様に羊の胴体の方の断面が盛り上がり頭が生えた。
一緒に軽く薙払った足も治っていた。
頭は行き過ぎにしろ足は大樹もそんな感じだというのに・・・
「き、きもっ!再生するって頭おかしいだろっ!」
再生した。
そんなことを続けた大樹は
速くっ!そして早くっ!
そんなことを考えていたのを辞め、その思考すらも槍にっ!
大樹は気づかないが、また灼竜じみた目になっていた。
ただ、金色の、瞳孔に碧が混ざっていたが・・・・
その時、大樹は空気をも焦がす神速の槍を放っていた。
そのまま、羊の脳天に吸い込まれる様に入り、じゅうっという音と共に貫き
そして、大樹は勝利をした。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
羊をもしゃもしゃ食べながらのそのそと階段を探す大樹。
普段は疲れを知らない男であるが今日の大樹は疲れ果てて羊を食べる時ももしゃもしゃとしか動かない。
それでも一回寝れば復活するあたり流石である。
下へ進むと、山羊がいた。
ツノの間でバリバリと音を立てて電気の球体を生み出すのだ。
成る程、古来山羊が断崖を縦横無尽に駆け回る姿から雷を連想されたと言う。
浮気性でとても崇められる様な性格していないだろ?とか、そりゃそんなにだらしなくてばらまいてりゃぁ『父』なんて言われるよ、とか考えさせられるかの高名な大神ゼウスの化身の中にも重要な神格として山羊は名を連ねている。
さて、それの対策として大樹は、角が無ければ稲妻が撃てないと高をくくり、竜の骨を矢として電気の球が出来ない内に角の根本にひょうっと射るのだ。
すると、電気が出来なくなるのだ。
しかし、少しでもずれると敵意丸だしで稲妻を撃ち込んでくる。
また、電気の球が出来ている時に射抜くと、電磁波のようなものを発して非常に不快な思いをする。
また肉はまさしく電気の流れる様に美味い肉だった。
特に、蜜に漬けてから焼くとえも言われない味である。
そんなこんなで、四十二階層。
そこには
`ア”ァ”ア”ア”アアアアアアアア”
と言う叫び声。
正体を見た大樹は・・・・
「バ、バルバロッサ」
と、呟く。
相手は二足歩行する山羊だった。
大樹が山羊面の悪魔の名を呟くのも無理は無かった。
その山羊面の悪魔は強かった。
大樹が近寄る事も出来ず、矢を射る事すら叶わなかった。
進退極まった大樹は、刀を放り、駆ける。
すると、稲妻が刀から逸れる前にバルバロッサの首に刃は吸い込まれ倒すことが出来た。
しかし、残った一筋の稲妻が迫って来た時。
大樹に寄生している何かが食らいつき、稲妻を消し去った。
「・・・・・はああああっ!?」
初めて大樹がソレ認識した時だった。
その後大樹は体を調べた。
敵を倒した事すら忘れて調べた……のだが何もおかしな所は無かったため、不思議に思ったが怖くなって辞めた。
気になる山羊の味は、大味になっていていまいちだった。
しかし、血液は非常に美味かった。
第四十三階層から第五十一階層はゾンビーの巣窟だった。
後に大樹の記す事になる日記、`ちきゅー”には
「俺の名付けた`近所の石と秘密の洞穴”と言うダンジョン(嘘)のゾンビ層は恐ろしい。
悪臭漂う場所があれば、悪霊の巣窟、スケルトンと呼ばれる骸骨の魔物もいる。
ゾンビ達には定番の火を使っても、燃える肉も油も無く、斬っても戻り、再び顎をカタカタ鳴らして迫ってくるのだ。それを倒すために石突きで砕いたりする。
俺はあの日に『突けば槍 薙げば薙刀 持たば太刀』と言う理由を知った。棒っきれって思ったけど便利だな。しかし、悪霊には、何も効かない。逃げる他ない。
しかし、あの時の俺はゾンビ層の半分に差し迫った時に気づいた。
俺は食いだめが出来るため、悪臭漂うこの層で食べようとしなかった。が、切れかかった時に食べる物無しと・・
結局、その辺りの草や木の皮にて飢えを凌ぎ、飢えることの辛さを知った。
それは、二度と忘れないし、忘れられない教訓となった。」
と、書かれている。
そんなこんなで大樹は六十二階層に降りていった。
六十二階層……
「ほう。ここまで穴に落ちた訳でもなく自力でここまで来る者は初めて だ……」
大樹が入ると、そんな声がこだました。
大樹→ゾンビ……お前ら人間じゃねぇ
牛→死んだあとも突き刺されるなんて
ゾンビ→あぁぁあぁ
バルバロッサ→僕の角は百万ボルトだーぃ。
???→ここに人が来るのはひさし……次回に続く?




