ユリアの力 後半
森に入ると、まっすぐ進みながら魔獣をさがす。
全部の魔獣に効くのかも分からないが、大丈夫だろうか……まあ、効かなかったらあきらめてもらおう。
「……いたぞ。」
「はい。」
視界に入ったのは、手のひらより少し大きめな鳥の魔獣。いつも目を合わせたらああなったので、じっと見つめてみた。すると、騎士団長様が少し息をのみ、鳥の魔獣は私の頭の上に羽ばたいてきた。
「どうでしたか?」
「……蒼色、だよな」
「え?」
私の瞳を見て、ポツリとつぶやく騎士団長様。
蒼……私の瞳のこと?でも、なんで……
「いや……見間違いかもしれん。忘れてくれ。
にしても、本当に手懐けるんだな」
「なぜかはわからないんですけどね。」
話をそらされ、追及はできなかった。なんだかもやもやしつつ、言われたことに苦笑する。
これの原因さえわかればいいように使うんだけど……ね。
とりあえず目的は達成したので村のほうへと引き返した。
村へ戻り、騎士団長様が確認したいことがあるらしく自宅へ向かう。広いわけでもない普通の木でできた家。今はきっと全員いる。
「お母様。騎士団長様が来られてますよ。」
「え!?」
「騎士団長様か!?」
「ユリア!おかえりー!」
「……随分とにぎやかだな。」
お母様だけに言ったつもりなのに、全員が返事をして一気に玄関へと集まってきた。お父様なんか、着た瞬間頭を下げて挨拶してる。その様子を見て、顔を綻ばせる騎士団長様。
「ところで、騎士団長様。確認したいこととは……」
「ああ、そうだ。
ユリア・フラントスのことを教えてもらいたい。」
私のこと?……なんでそんなこと。
私が唖然とする中、家族はさっと奥へと導く。切り替えの早さが異常だった……。戸惑いながらも、リビングへと進められた騎士団長様は椅子に座る。その瞬間、家族が順番に話し始めた。
「ユリアはおとなしくて、しっかりとしたいい子ですよ」
「魔法も剣術も優秀で父親として鼻が高いです!」
「ユリアはとってもかわいくて、私の自慢の妹です!」
「ちょ、は……恥ずかしい……」
目の前でいいところを話され、恥ずかしさが襲ってくる。しかも、その言葉が本心からだってわかるから尚更。顔に熱が集まり、それを見た家族はそろって一言。
「「「いくらでも話せます!」」」
「……少し落ち着け。
私が聞きたいのは、ユリア・フラントスに何かおかしなことはなかったのか、ということだ。」
家族がぴたりと言い切ると、少しあきれた様子で騎士団長様は止めた。
ありがたい。あのまま暴走してたら私恥ずかしくて死ぬ。けど、本当に聞きたかったことを聞いて疑問が生まれた。
そんなことを聞いて、何か特になることでもあるのか……
「……ユリアは、10歳の時半年ほど眠り続けてました。理由も全くわかりませんが……」
「それ以来、急に大人っぽくなったんだったよな。子供らしさが消えて、大人みたいに。」
「あ! そういえば時々、ユリアの瞳が金色になることがありました!」
「それは本当か?」
私抜きで進められる会話。
そして、お姉様が言ったことに騎士団長様が聞き返した。私自身も、え、と思う。私の瞳は蒼。瞳の色が変わるなんてあるのか。
「本当です。私たち全員見たことがあります。」
「一瞬で、瞬きしたら元の蒼にもどってました!」
きっぱりと言い切る二人にお父様も深く頷いてそれが事実だと知らしめられる。
なら、今まで時々驚いたような顔をしていたのは……私の瞳が一時的に金になっていたから、かな。そして、それを聞いた騎士団長様が一度瞑目してから口を開いた。
「……ユリア・フラントス。貴嬢の力の原因が分かった。」
「え……?」
「金の瞳だ。
魔獣を見た時、貴嬢の瞳は金になっていた。
なぜ金の瞳で魔獣が懐くかまではわからんが……」
金の瞳……家族が言っていたように、半年寝込んだ後からだとすれば……前世の記憶が関係ある?でも、断片的に思い出しただけだから全くわからない。せめて、もう少し詳しく思い出していれば……今との共通点とか見つかって、多少分かったかもしれないのに……
「……そうですか。」