村への襲撃
リアルフという新たな家族ができてから、私は一度も実践形式の練習をしていない。またああなったら困るからというのと、リアルフと練習すれば必要なかったからだ。
リアルフだって魔獣。いうことだってきちんと聞くし、狩りでも活躍している。私の相手としてはちょうどよかった。
それに、この練習でさらに仲を深められていた。
今日もいつも通り、村の裏側の開けた場所でリアルフと対戦していた。
相変わらず、魔獣なだけあって私よりも動きがはやくまだ一度も勝ったことがない。とはいえ、日々順調に進歩している……はず。
「リアルフ、もう一回お願いします。」
「ッグルルゥ……!」
もう一度、と頼んでも聞かず、森のほうをじっと睨んで唸っている。威嚇中だ。
なぜ?、と思いその方向を見れば、ガサッと揺れる草木。明らかに不自然な揺れで、何かいるのは明らかだ。そして、リアルフの反応を見るにその何かは敵。
私も剣を握りしめて身体強化をし、警戒態勢に入った。
「っ! リアルフ!」
「ガウ!」
相手が動いた瞬間にこちらも動き、しとめる。
出てきたのは、オーク三体。
オークはそこまで強いわけではないが、村に訪れることはめったにない。大半は、狩りに出た時に危険だと判断されればそこで討伐されるからだ。
私たちが動き出して数秒でついた決着。
余裕ではあった。が、今村の大半が狩りに向かっている最中で、村にいるのは女子供の戦いに向いてない人ばかりだ。そちらの方にきていたらやばいと思い、すぐさま村の正面に向かった。
「グヘヘッ……フヒッ!」
「ゲヘッ、ヒヒヒ……」
案の定、団体となった10匹程度のオークと数匹の魔獣がいた。村の皆はまだ気づいていない様で、彼らは悪だくみをするような顔で気持ち悪く笑っていた。
正直なところこれ以上あんなのを見たくないから、早く相手をするしかないだろうけど……あの数でいけるか心配。私だって実践はさっきのが初めて(リアルフはノーカウント。戦ってないから)だし、これは全部で13匹くらいいる。
……さっきは剣でいったし、魔法の試し打ちでもするかな。一発でいけそうなのは、……
「……ウィンド・ブレード!」
「グヒッ!?」
オークの皮膚がウィンド・ブレードによって削がれ、あたりに血が飛び散る。オークしか狙ってなかったが、そのせいで有り余った威力が近くの木々に向かいちょっとした惨事。
……少し失敗したかもしれない。
ちなみに、オークだけ狙ったのはもちろん剣術の向上のため。魔獣数匹ならちょうどいい相手だ。そして、今ならリアルフもいるし。
そう思って足を前に出し、駆け出す。相手もこちらに気が付いたようで目が合うが、その前に私がその隣にいた一匹を仕留めた。多少の返り血は問題ない。もちろんそのまま次に行こうと思ったが……
「「クゥン……」」
「ガウ!」
「……なんでこうなるんですか」
リアルフと同じように、目が合った瞬間甘えるような姿になる魔獣二匹。不思議でたまらない。私は何か呪われているのか?
「しかたないですね……待っていて下さい。」
だが、このまま放っておくわけにもいかず、とりあえず片づけを始めた。