不思議な力 後半
目の前の魔獣の危険度はそこまで高くない、保険もある。しっかり深呼吸して目を瞑り、集中することに努めた。
数秒して私は、剣を構えて身体強化をした。準備ができて、目を開けてまっすぐににらむ。
すると、思ってもいなかったことが起こった。
「ッ! クゥン……」
「えっ、わ!?」
「「ユリア!?」」
急に、甘えた声を出してすり寄ってきたのだ。まるで私のペットのように。
これにはお父様とお姉様も驚いて、すぐさま私の方へと近づいてきた。だが、その瞬間魔獣は二人に威嚇し歯をむき出しにする。
何が起こったのかと混乱するも、とりあえず魔獣のほうを向く。
「ガウッガウ!」
「えっと……お、落ち着いてください」
飛びついてくるのを手で制し、通じるかはわからないがお願いしてみる。
すると、どうやら分かってくれたようでバッとおすわりをし、ジーッと私のほうを見つめてきた。どうしようか、と思うも頭がショートしそうな勢いだ。
「す、すごい!!」
「こんな才能が……あったとはな!」
お父様たちはお父様たちで手の付けようがない。目をキラキラさせてこっちを見てる。逆に怖いくらいだ。
……にしても、どうしてだろう。
「とりあえず、お父様お姉様。
いったん家に帰りましょう?」
「えー……」
「まだ見たいんだが……」
どうして渋る。
これの原因が分からない以上どうすることもできないんだけど……まあ、放って帰ればいいだけの話か。
「そうですか。では、私は戻りますのでどうぞ、ごゆっくり。」
「ガウッ!」
身をひるがえして帰ろうとすると、いかにも当然といった様子でついてくる魔獣。私が止まればあっちも止まり、歩けばついてくる。後ろを振り返って確認すれば、「クゥゥン?」と首を傾げ不思議そうにしている。
……意味が分からない。
「お父様! この子飼いません?」
「マリア、俺もちょうど思ったところだ。」
「「交渉成立」」
がっちりと握手し、にんまりと笑みを浮かべてこちらを見る二人。おのずと後ずさりをしてしまう迫力だ。……もしかしなくても、
「よし、ユリア! その子は責任もって飼おうじゃないか!
異議は認めん!」
「お、お父様、お母様が驚かれるのでは?」
「大丈夫だよユリア。この子ウルフみたいで可愛いし!」
そういう問題なのだろうか……?