実技授業
「――さて、今日は森での実技をしたいと思います。」
先生のその言葉に教室内の全員から歓声が上がり、それぞれが近くの人と話し始める。
私は、森での実技という言葉に顔がほころぶ。
「ふふっ、リアルフが喜びますね。」
リアルフは森が出身。私だって、数か月前には森と暮らしていた。懐かしい森の香りを想像しながら胸を躍らせた。
「そうだね!
私すごく楽しみ!」
「ええ、私もです。」
「では、各自準備して外へ出てください。そこから大型転移魔法で移動します。」
先生の言葉を聞いた生徒が一目散に準備をして教室から駆け出して行った。
私は一度寮により、リアルフを連れて外へ出た。リアルフは久しぶりの森ということでしっぽはせわしなく動いていて楽しみがこちらにも伝わってくる。
全員集まったのを確認した先生が大型転移魔法を発動すると、次の瞬間にはあたりが森でおおわれていた。胸いっぱいに懐かしい森の香りが広がり、リアルフは私の周りをくるくると駆けまわっている。
「この森には結界がはってあり、そこから先には進めないようになっています。なので、結界にぶつかった場合は引き返してください。私たち教師はここであなたたちの様子を見ていますが、万が一のことがあった場合はすぐに逃げてくださいね。そして、最低でも三人で行動してください。
――では、安全第一でお願いします。」
先生の長い前置きを置いて行動が許されると、よほど楽しみにしていたのか人の波ができて森の方へと流れていった。
私たちはそれに流されず、自分たちのペースで中へと進んでいった。
進んでいくと、何かしら魔獣に出会うけど……
「ぴーっ、ぴよ!」
「きゅっ、きゅきゅ!」
――これは全く予想してなかった。
私が目を合わせた魔獣たちは全て私の後ろへと続き、今となっては大行列。後ろからは賑やかな鳴き声が絶え間なく届いてくる。
「バウ!」
「あ、また……」
「ユ、ユリアちゃん……その力どうにかできない……?」
「……エミルに同感だ。」
ハドラー様とシュミリア様が少し呆れたような眼で後ろの大行列を眺める。
彼らの言葉がグサグサと突き刺さり、縮こまってしまう。
「どうにかならないのか。」
「……騎士団長様によると、私の瞳が原因らしいんですよ。
なぜか目を合わせた瞬間だけ金になるとか……」
「瞳の色が変わるの?」
「そう、らしいです。」
よくわかっていない私の能力。迷惑をかけているのを感じて思わず目を伏せる。
真っ直ぐこちらを見て悩んでいる様子のシュミリア様の後ろに、また何か動くものが見えてふとそちらを見ると、また魔獣と目が合いこちらに寄ってくる。
目の前のシュミリア様の様子は目に入っていないまま、また呆然と後ろを眺めた。