ユリアとクレイとリアルフ
入学式から翌日。
朝早くに準備し、リアルフといつもの練習をしてから部屋から出ようとドアに手をかける。
すると、リアルフが縋り付いてくる。
「クゥン……」
……ちょっと、その目をやめてほしい。うるうると庇護欲を誘うその瞳をみてうっと言葉に詰まってしまう。人間でいうならまさに泣く直前だ。
「うぅ……リアルフ、どうしたんです?」
『さみしいの!
昨日だって昼には帰ってきたけど……』
だからいかないで、とさらに縋られる。
……そういわれても、学園に連れて行けばどうなるかわからない。学園長からの許可はとってるけど、クラスメイトの反応が不安。
「リアルフ……学園に連れていくと周りの人が怖がりますよ。」
『いいじゃん、そんなの!
番犬になるよ!』
番犬なら心強いけど、番犬なんていらないと思う。うーん、と唸っていると上目遣いでダメ押しとばかりに聞かれる。
『どうしても……ダメなの?』
「っわかりました!
いいですよ、ついてきても!」
これは負けた。無理だ、その目に耐えられない……
『やった!ありがとう!』
「ただし、邪魔はしちゃだめですよ。」
はあ……初日からこんな感じでいいのかな……?
自分の教室に着くと、席の方へ着いた。今来ているのは私だけで、ただ静かだった。
それからしばらくして、シュミリア様が登校してきた。どうやら、ハドラー様とは別々に登校するらしい。……ハドラー様、朝弱いのかな……?
「おはようございます。」
「ああ。
……で、そこの獣はなんだ?」
隣の席に座ると少し驚いたようにリアルフを見る。
それが普通だよね。だって、学園に獣とか連れてくるとは思ってるわけがない。
「この子はリアルフです。
私の使い魔なので、安全だと思いますよ。」
「そうなのか。
にしても、おとなしいな。」
さらっとリアルフの頭を撫でれば、目を細めてすり寄ってくる。体は大きいのに子犬のようでほっこりする。
シュミリア様の言葉に少し苦笑が漏れる。朝はあのあざとさでごますってきたんだけどねぇ。
「……なあ、触ってもいいのか?」
『いいよ、もちろん!』
「ええ、どうぞ。」
嬉しそうにしっぽを振りながらシュミリア様に寄っていくリアルフ。シュミリア様のこと、気に入ったのかな? お姉さま方にもなかなか懐かなかったのに。
「ふっ……随分人懐こいな」
「家族にはなかなか懐かなかったんですが……シュミリア様は特別、でしょうかね?」
「そうなのか?」
スリスリと手に寄っていくリアルフを見て二人して頬が緩む。なんだか、すごく懐かしい感じがする。まるでシュミリア様と初めて会った時の様な既視感。それが何かは相変わらずわからないが、とても自然であまり気にならなかった。