入学 後半
ふたりから離れた後、席について始まるのを待った。
始まると、少しざわついていた場内は静まり返って学園長の言葉や生徒会会長の言葉などいろいろあった。
自分の挨拶の番が来て、少し緊張しつつ舞台へ上がる。
この台本はあまり見ておらず間違えないか心配だが……大丈夫だろう。
きちんと礼をして、話はじめると意外にすらすら読めて安心する。この調子で最後まで……と思ったが、途中で台本は空白になっていた。そこには、”思っていることを言ってくださいね!”と書いてあるが……ちらりと担任の方を見るとぐっとうなづかれた。
仕方ないかと思い、少し考えた後台本を見ずに話をつづけた。できるだけ不自然じゃないようにはしたが……間違えていたかもしれない。
「――外部生代表 ユリア・フラントス。」
言い終わり、一礼して戻ろうとすると一人。立ち上がった。
「貴様!庶民の分際で……!」
それは、銀髪に紫の目の、私でも知っているくらい有名な王家の方だった。とてつもなく失礼なことを言われたが、さすがに礼儀正しさを失ってはいけない。下手すると処刑だ。
「私は騎士団長様に誘われてきたのです。
何か言いたいことがあるのなら、騎士団長様にお願いします。」
言いたいことをできるだけオブラートに包んで伝える。
そのまま席に戻るも、何も言われることはなかったのでいいだろう。
そのまま入学式は無事に終わり、全員教室へと向かった。
私はSクラスで、地位の高い生徒と同じということに早速不安しかない。ハドラー様方の時であれだ。同じ教室となると苛めのターゲットになりそうだ。できるだけ目立たないところの席をとろう。
結局選んだのは窓側の後ろらへんの席。後ろには二席ほどあり、一番後ろではない。
その席に着いて、静かに時間が過ぎるのを待っていると声がかけられた。
「ユリアちゃん!」
「え? ハドラー様……と、シュミリア様?
どうされたんですか?」
「っえ?
な、なんでそんなに平然としてるの?」
ふたりは私の近くに立っていて、表情はいつもと違って少し苦しそうだった。なんでそんな顔をしているのかわからず、少し首をかしげながらきけば逆に聞き返される。むしろ私の方がなんでそんなに驚いたような顔をしているのか聞きたい。
「? なんで……と言われても、私は普通ですよ?」
「……入学式の前のアレは?」
「あんなのその場しのぎですよ。
あ、お気になさいましたか……?」
「っ、気にしてないよ! まったく!」
「気にしてただろ。」
ハドラー様はあの時の私のその場しのぎの言葉を気にしていたらしく、それで苦しそうな顔をしていたらしい。なのに、なんともないように返事をしたから驚いた、と……
このやりとりをみて頬を緩めているシュミリア様を見て、少し心が温かくなった。