入学 前半
リアルフを使い魔にしてからは、前と同じように模擬対戦をし、それが終われば学園内を散歩して一緒に遊ぶ。ハドラー様方に会うこともなく、一日一日と過ぎていった。
――そして、今日はついに入学式。
入学式では、生徒会挨拶や学園長挨拶……さらには、外部生代表挨拶というのもあるらしい。これを言われたのがつい昨日。わざわざ担任の方が台本を届けに来た。しかも、謝罪付きで。どうやら、こんなにギリギリだったのは忘れていたかららしい。
入学式を行うホールにどんどん人が集まっていく中、なぜか私の周りにはだれもいなかった。その理由は勿論、この見た目と外部生……庶民だからということだろう。中にはひそひそと陰口をたたくものまでいる。
まあ、そんなことを気にするくらいならここには来ない。要は、気にしなければよいのだ。
「あ! ユリアちゃんだ!」
後ろから聞こえてきた明るい声に反応して後ろを振り向いた。そこにいたのはハドラー様とシュミリア様で、なぜ話しかけてきたのかと疑問に思うがとりあえずその声に答えた。
「お久しぶりですハドラー様、シュミリア様。」
「久しぶり!」
「ああ。」
彼女らは堂々と私の隣に並び、少しだけ周りがざわついた。
……もしかして、この二人って私が思っているよりも立場が上な人?
「ところでさ、ユリアちゃんって挨拶するの?」
「ええ、まあ……自信はありませんが。」
「そっか! じゃあ、私楽しみにしてるね!」
「……そんなに期待するものじゃありませんよ。」
苦笑しながら話していると、目の前に誰か出てきてとっさに止まる。同じように隣の二人も止まり、前を向くと立っていたのは三人の少女。
「ちょっと! 庶民がシュミリア様方にくっつかないで頂戴!」
「そうよ! 庶民風情が話しかけられる方じゃないの!」
「立場をわきまえなさいよ!」
三人がテンポよく順番に喋り、やはりそうかと納得する。この二人はだいぶん身分の高い方だったようだ。気にする必要はないのかもしれないが、無視するわけにもいかない。
「すみません。ハドラー様方が身分の高い方だと知りませんでした。
次回から気を付けますね。」
仕方なく口を開き、悲しそうにしつつ愛想よくする。下手に刺激しても面倒くさいだけだ。ここは適当にあしらうのが正しい。
「ふんっそうすることね!」
捨て台詞を吐いて周りの人ごみに紛れていった三人。あきらめが良くて意外だ。
まあ、こういった以上仕方ないので二人に一礼してからホールへと向かった。
「――あ! ちょっと……」
後ろで少し悲しそうな声が聞こえたが、気づかないふりをして進んだ。