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あなたは、誰?  作者: とらまる
第一章
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転機


「ユリア・フラントス。

貴嬢がアスティア魔法学園へ入学することを推薦する。

再来年が始まる日にまたここへ訪れる。それまでに決めておけ」


 話も終わり、騎士団長様に帰る直前に告げられた言葉。

 おそらく私と一戦交えたのも、私の力を見たのもこのため。私の実力が低く、力もなかったらきっと訪れなかった機会だ。

 置き土産のごとく、置き去りにされたチャンス。こんな絶好の機会を逃すわけにはいかないだろう。再来年が始まる日、それは今から大体一年と半年後。それまでにできることをやろう。


 家に帰り、家族にそれを知らせると一気に村全体へ広がり、お祭り状態だった。村の人々全員が喜び、私もうれしかった。




 そんなお祭りも幕を閉じ、家族にこれからのことをきちんと伝えた。

 せっかくの機会を逃したくない、これから約束の日まで妥協せずに鍛え続ける。決意を話すと、お父様に一つだけ聞かれた。


「ユリアはなぜ強くありたいんだ?」


 それは、よくわからない。

 以前からずっと強くなろうと努力を重ねていたが、前世の記憶を思い出してさらに強く思ったこと。だが、この理由を予想するなら。

 きっと。


「大切な人を、守るためです。」


 前世のような別れを迎えないために。

 きっぱりと言い切れば、家族全員が顔を綻ばせて嬉しそうにしていた。


「それならいい。」

「ありがとう、ユリア。」

「私もユリアみたいになる!姉として抜かされたら嫌だからね!」


「ふふっ。

では、明日に備えて寝ますね。おやすみなさい。」


 明日から、見つかった目標を果たすために鍛えよう。

 この目標は、必ず果たす。

 

 今度こそ――





 


 ――私が決意してから、約1年半。約束の日がやってきた。


「ユリア・フラントス。答えは決まったか。」

「ええ、もちろんです。」


 約束通り訪れた騎士団長様は、私に問いかける。その問いに、この一年半のことを思い浮かべながら答えを返した。


「アスティア魔法学園に入学させてください。」

「そうか。

なら、この村にはなかなか戻ってくることができなくなるが……」

「承知の上です。」


 この村は王都から少し離れていて、往復に10日はかかる。すると、長期休暇があったとしても戻ってこれる機会が少ない。そのことを気にかけてくださるのはうれしいが、私だってもう12歳。そのくらい理解できる。

 堂々と言い切ると、騎士団長様はまた「そうか」と返すと目の前を歩き始めた。村の外に馬車が停めてあるのだろう。


 それについていき、私は故郷から出て初めていく王都へと密かに胸を高鳴らせた。

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