参上
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「余も混ぜよ」
余はそう言いやって、何やらお縄になっているものら数人、それを囲む不恰好な者らを改めてちらりと見てやった。小高い木に上っているため自然見下ろす形となっている。不恰好な者にはそれなりに心得がつく。集団の名は「盗賊」であったかと思う。元いた世界においても、人の隙をついては何もかも拐い(さら)、善心を実母の子宮へと置き忘れ、顔面下劣とすることを集団の決まりとしているような人間の種族である。不恰好な者らは顔面に下劣をこれでもかと張り付けているので間違いなく盗賊であろう。
記憶を掘り返していると、両者の決着はきまって、何やら既に一段落しており、出遅れた感が否めない。が、出てしまったものはやむ無し。下劣を塗りたくり、獣の如く顔面そこここが毛で覆われている者らへと再度、声をかける。
「何を呆けておる。余が相手になってやるといっておる」
しんと静まり返っていたため随分声も通るらしいと感じられた。せめて名乗りぐらいさせてやろうとの気遣いから返事を待ってみたもののまるで石像に成ったごとく。面倒な、いっそ尻尾で一纏めにしてしまおうかと考え巡らせているとようやっと、喋りだした。
「急に現れて、なんだこの小娘?見慣れぬ格好だな。まぁいい、小綺麗なようだからそれなりの値がつくだろう」
そう言うや、何人かが武器を構え一斉に翔びかかってくる。顔面下劣の癖にそれなりに統率は取れてるらしい。一人の剣を防ごうと次には二の剣がすぐさま降りかかってくるのがみてとれる。
余は一先ず、一の剣を人差し指一つで止めてやった。余の白子の腹のように白く、小枝の如く細い指先一つで止まるものだから、そこここに覗かせる顔面獣にも少しばかり驚きがみてとれる。二の剣は、一の剣があまりにもあっさりと受け止められたためか、随分のんびりしたものであったので首を傾げるだけで、ひょいと空を切っていった。そうして隙だらけの腹をぼてっとこちらに向けているものだから、其奴らについと、蹴りを一つ二つと返してやった。すると、ずぼりと腹を抜けてしまった。血肉が木々にも飛び散り、血生臭さが辺りへ蔓延してゆく。
いや、脆いの。




