ボランティアの皆様
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私は震えていた。ノールウェイ国第二騎士団副団長である私、ガーデン・リゼットは恐怖から手足が動かず、目だけがきょろきょろさまよっていた。周囲はすっかり野党に囲まれている。
そもそもとして、ノールウェイ国は近隣諸国に比べ矮小な国、というのも近年興されたばかりの新興国である。国建の背景には、大国であるグイング王国とルーマ帝国による大規模な戦争の結果、ルーマ帝国が勝利を収め、そうしてグイング王国が領土分割と相成った折に、ルーマ帝国がその他諸々の領土のついでに解放された新興国がノールウェイ国。謂わば、ルーマ帝国からしてみれば食っても旨味がないので捨て置いた結果成ったのが、この国。でこぴんでいっぱつだ。第二王女のエミル様が少し散策をというので、花屋の娘であった私はついてきていた。エミル様はとても優しく綺麗であったので、精一杯お守りしようと庶民ながら心に決めていた。
が、こうしてエミル様に危険が及んでいながら、私は声ひとつ出せずにいた。それは周りの数人の騎士たちも一緒みたいだ。いや、騎士といってもみんなボランティアだ。今日まで真剣なんてもったことすらない。服装だってみんなてんでばらばら。早朝の農業の途中に抜け出してきたので、土まみれの人だっている。ちなみに私はじゃんけんで副団長となった。
「へっ、親分。こいつら噂通り大したこと無さそうですぜ」
肩に斧をひょいとのせながらぼさぼさ頭の男が言う。周囲の顔もつまらなそうだ。
「まったくだぜ。ちと稼ごうと思っても遠路はるばるこんな辺鄙なところに来たってのに。ちっ、まともな護衛すらいねえのか。」
ほんっとうにつまらなそうな顔をしてぼやくのは道ど真ん中で仁王立ちの無精髭の男だ。
その視線の先は隣村のノブさんのクワだ。クワはちょっとお姫様の騎士には合わないと私も小言を言ってみたりしたがノブさんは頑固だった。加えてノブさんは団長さんだ。ノブさんはじゃんけんが強かった。
「言わせておけば、偉そうに!なめんじゃねえぞてめえらぁ!こちとら団長様だ、なぁユーミア副団長よぅ!」
ノブさんは立ち直りが早かった。さすがに普段天災から農作を守っているだけある。すっかりいつも通りだ。けど今はわたしを放っておいてください。お願いですから。
「あ?お前が団長で、そこの芋娘が副団長だ?ぷはは」
ほら、すっかり笑い草となってしまった。それからひとしきり笑って満足したのか、野党らはゆっくり近づいてきた。私たち騎士団でやる気満々なのはノブさんだけだ。いよいよとなったとき、エミル様が両手を広げ野党らの前へと進み出た。
「やめてください。この方々には手を出さないでください」
震えながらも精一杯私たちを守ってくださるエミル様をみて、自然と手足震えが収まっていった。それは周りの騎士団の皆さんも同じだったようでノブさんがかっこよく「姫様はそこでみててくだせえ」と宣言する声にはすっかり同意の声をあげる。そうして私たちはエミル様を守らんと勇んで野党らへと立ち向かった。
そうして、一網打尽となった。
目の前では分け前の内訳が繰り広げられている。すっかり皆意気消沈とし、文字通り縄で縛り上げられた私たち。「さあ立て」とムチうたれ、涙も出そうになったその時。愛らしくも威厳ある声がそれを止めた。
「余も混ぜよ」




