傭兵国家ノールウェイ国
「傭兵国家といったな」
「はい、そうでございます」
余が改めて問いただせば波打ったくせ毛をこれでもかと螺旋状に回転させていることを誇らしげにしているルーナが得意顔で相槌をうつ。
余らは下劣顔に加えて気色の悪い肉付きの機械人形に改造されたものらを蹴散らした後、勇士らの遺髪を持ってここキタノ都に戻ってきた。帰路の間余はノールウェイ国第一王女ルーナおよび第二王女エミル両名らによる提案とは何ぞやといった説明を理路整然と説明された次第である。一つ、このノールウェイ国はまさに貧国の極みであり、ルーマ帝国らが残飯を漁る如く永遠と搾取され続けているということ。一つ、ここノールウェイ国には残存兵力は王家の守衛を目的とした幾つかの部隊が点在するのみであり、国家兵力と呼べるものは皆無であるということ。一つ、ルーマ帝国は先のグイング王国との大戦からわずか10年で再度大戦を繰り広げようとしており、そのための物資をまさに根こそぎ隣国諸国からむしりとっており、その一国にここノールウェイ国も数えられており、近々大隊が押し寄せるらしいということ。これらの事実を踏まえての対策案として金髪青眼を姉妹の象徴としている王女二人はそろって一案を何とかねじりだしたらしい。
「…傭兵国家か」
「ええ!…衣様」
余が独り言をもらせばエミルが頬を赤らめながら相槌を打つ。こいつはいったい何なのだ。余を見ては陶酔し切った表情でうつろな目をしている。そして、余らが今だ姉妹であることを言っておらなかったことにはたと気づく。
「エミルとやら、余は灯と呼ぶがよい」
「灯様…でございますか」
「左様、説明はやんごとなき事情があるため此度は省かせてもらうが、先のくりくりとした目の大きな様子であれば衣、今の如く凛々しき眼であれば灯様と呼ぶがよい」
「…!。そうでございましたか、通りでお姿だけでなく雰囲気も随分違うわけでございますね」
ほお、余と衣との違いにそれとなく気づいていたとは。只の変顔なだけではなく、一国の王女を名乗るだけあってそれなりの目を持っているようだ。
「やんごとなき事情がおありでありましたのは一目見て私気づいておりました」
さほど驚いた様子もなくルーナは話す。余がその発言の真意を問いただす前にルーナは驚くべきことを話した。
「私には一つ特異な力がございまして…。それは人、いえ、生きていらっしゃれば何物であろうとその魂の在り方が見ることが出来るのでございます。灯様、衣様。お二人の魂が奇妙に絡み合っておりますのが私には見えます。これは私としても初めて眼にするものでございますのでどういった意味なのかは推し量ることはできませぬが…。」
…これはたまげたものだ。魂を見て取る業など初めて見聞きする。万を超える人間を食らった人間とてたいした力を持っていなかったのは元居た世界で重々学んできたが、まさかたかが一人の小娘ごときにここまで余らの事を暴かれるなど想像だにしてはおらなんだ。どうやら衣も随分驚いているようで、ほへーと間の抜けた声を漏らしている。
エミルは眼を見開いた様子でルーナへと声をかけた。
「お二人の魂ですか?」
「ええ…。それもお二方これまで見たことない程に力強く、お綺麗な魂です。まるで宝石のようです。…気味が悪いでしょうか。気分を害したのであれば陳謝致します」
それから面を下げて、ちらちらとこちらを上目遣いでうかがう。が、何のことはない。余らは只純粋に驚いていたのみであったので、
「何、気にするな。余らとしても特に隠し立てしているわけでもない。そのうち気が向けば世間話ついでに話してやろうと思っていた」
「そうでございましたか」
安堵した様子で胸をなでおろすルーナを見て、余は人間として初めて関心に抱いたものの提案、傭兵国家とやらに俄然興味がわいてきた。
「ところで傭兵国家とやらはいったいどういった了見だ」
「はい、ノールウェイ国の現状の問題は先程説明させていただきましたが、問題はやはりノールウェイ国が帝国のみならず隣国からも弱小国として見られていることかと思われます」
「ふむ」
「ですので、傭兵国家として兵を貸し与えているという事と隣国に記憶させることにして、弱小国の印象を払拭させるのです」
「成程」
「加えて傭兵国家として隣国諸国に兵を貸し与えることで隣国と共同戦線を組むことを可能として、さらには貧国解決への資金の供給も行えるものと考えます」
思ったりまともなような気がしないでもない。しかし問題が一つある。
「ところで貸し与える兵力などあるのか」
そう、傭兵として他国に貸し与える程の兵力もなければいても雑兵程度の力しか持ち合わせぬものばかり。役に立っても矢面に立つことぐらいであろう。するとどうだろう、エミルがこちらを見ては得意顔で言い放った。
「あなた様がいらっしゃいます」
…ああ、そんな気はしていた。めんどうなことになりそうだ。




