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3000飛んで15歳の余の異世界冒険  作者: 野菊竜胆
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異形の者

どうやら話を聞くに、ミナミノ村という場所には第一王女なるルーナ王女らしい人物が住んでいたらしい。家系由来の金髪蒼眼に、薄紅の顔がつやつやと照るようで、ぱっちりした眼がバランスよく配置された愛敬ある顔とのこと。このルーナなるものは現在王不在のこのノールウェイ国をその細肩一身にうけて支えているなかなかの働き者だと誇らしげにエミル第二王女が語る。そして放浪者のように普段私が出歩けるのも彼女のおかげですと付け加える。察するに第一王女なる人物はよっぽどの苦労人らしい。

 強引についてきたエミル第二王女を除けばこちらの手勢は騎馬兵2人を含め10人の武装兵と余らが一人である。常識に考えて一国の援軍がこの程度であってよいのだろうか。ルーナ王女なる人物は温和な性格とは裏腹に軍の統率も中々ものらしいが、まだ持ちこたえているだろうか。だが流石に王不在の一国を担っているだけあって護衛もそれなりのしっかりしたものがついているらしい。所属数わずか一名の「第二王女親衛隊」とは比べるのもおこがましいだろう。なればこの駆け足の進軍をもう少し遅らせてもよいのではないだろうか。悠々と朝方の澄み切った空気を味わいながら歩いているうちに野党らを撃退しているのではないだろうか。ああ、そうあってほしいものだ。周りのものを見ても野党らごときに第一王女親衛隊が負けることなどありえぬらしく、やや気が抜けている様子であった。

 そんなことを考えていた余らがミナミノ村へとたどり着いたとき、目の前の散々たる光景に驚き隠せなかった。話に聞いていた第一王女親衛隊なる者らはわずか4人ばかりが中心に軽装束をまとった金髪の女を守らんとしていた。周囲には何十人もの死骸が討ち捨てられている。生き残った者らも吐く息荒く、それぞれが浅くない傷を負っている。それらを乱雑な円状に囲む10人程の野党らがじりじりと歩みよっている。それにしても以前撃退した際とは随分と様子が違う。というのも、以前は下劣な顔をしていたがそれでもまだ人間という枠組みには収まっていたと保証はできる。しかしながら、さすがに万事仏のような広い心で接する余とてあれ(・・)らを人間と定めては種族という分別を定めた責任者を余は問い詰める必要が出てくる。責任者よ、出てこい!万事説明せよ!見よ、あの異形のものらを。片腕の代わりに身の丈ほどの巨大な鋏が装着された者がいれば、負けじと下半身が機械仕掛けの蜘蛛の足を巧みに動かすものがおり、はたまた頭部から何十本もの金属の触手を乱雑に生やしているものがいる。皆共通して心臓へと向かって桃色肉壁が這っており、びくんびくんと脈を打っている。よくよく見れば余が蹴やった者も交じっており、その穴には元あった身体の代わりに蒼緑に爛々と点滅する何か機会がはめ込まれていた。断じて人間として定めるべきではない。決して否と唱えよう。衣などに至ってはひいと小さい悲鳴をあげた後に余と交代せんとひたすら背中を押してくる。今にも失神しそうな様子はさすがにかわいそうだ。ややあって、交代することとした。

 「へんしーん!」

高々叫ぶなり奴ら未知の生物らに向かって駆ける。地に足をつけてひょいと飛び出せば近くにいた片腕鋏の異形の者のすぐ懐である。

 「狐火」

余らが基本とする呪術の一つ、狐火を唱える。気味が悪いので影も形も残さず焼き付くすつもりで放った小さな蒼い火の粉があたるなり、地と天を穿つ青々とした火柱が立つ。上を向いて雲が丁度円状に刈り取られているのを見て、些か力を込めすぎたと考える。

 「キサマハ!アノ時の小娘!」

一体葬った振り向きざまにもう一体にも狐火を向ける。今度はぽっと全身をつつむほどの青い火玉ができて後には灰も残っていないのを見て得心を得ながら声のほうを見れば、いつぞや腹を蹴り飛ばした下劣顔の男。

 「何だ。折角余が手を下してやったというのに、変な光物をで埋めてしまいおって。似合わんぞ、それ」

不気味に蒼緑に光る機械を指さしながら優しく忠告してやるが、不満げな表情で

 「ダマレ!コロス!ククッ、生きているコトを後悔スルほどメチャクチャにシテヤル!」

理不尽な言いがかりを吐き捨てながらこちらへと猛然ととびかかってくる。遅い。仮にも人間を捨てた身なればもう少しばかり早くてもよいのではないだろうか。1000通りの葬り方を考えたが、とりあえず今後生涯一切も顔を合わしたくないと余の嫌悪感がつのっていたので、存在を永遠に葬りさることにした。

 「喜べ、下劣顔。人間には到底扱えぬ地獄の業火というものを見せてやる。八大大火」

血のように赤い焔玉を八つ浮かべる。色濃くはっきりと浮かべたそれらに熱さは感じぬ。只罪人の存在燃やす火である。

向かってくる下劣顔へとそれを放つ。八つの焔玉は奴を空中で捉えるとそれぞれの円を結ぶように色濃い赤を広がせる。やがて、下劣顔をすっぽりと赤い球体の中へとつつんだ。

 「ナンダ!コレハ!ココカラダせ、小娘!」

 「輪廻すら望めぬと思え、罪人」

手をぎゅっと握りしめると赤い球体は縮こまり後には何も残らなかった。些か過ぎた術ではあったが、まぁ永劫地獄でも顔を合わせることはなくなったと考えれば安いものか。残りの野党らは片手間に片づけた。そうして渦中の中心であった第一王女なる女のほうへと向けるとそこには頬をりんごのように赤らめた女がいた。いかん、既視感がある。衣にとって代わってもらおうかと考えるが、衣は未だ精神に支障をきたしておるので、余が踏ん張る必要がありそうと心得たのであった。


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